茨城県が、外国人の不法就労を防止するための独自条例を制定する方針を明らかにしました。2月24日からパブリックコメントが始まり、県民の意見を広く募ることになります。

出入国在留管理庁によれば、2024年の茨城県内の不法就労者数は3,452人で、3年連続の全国最多です。そのうち75%が農業分野に集中しています。人手不足が深刻化する本県にとって、外国人材は不可欠な存在です。しかしその一方で、適正な雇用の確保という課題が現実の問題として浮き彫りになっています。
条例案では、県、事業者、県民の責務を明確にし、不法就労が判明した場合には警察などへ通報する仕組みを整えます。罰則は設けず、連携と啓発を軸に「全県を挙げて取り組む」姿勢を示しました。毎年11月を「不法就労防止推進月間」とし、広報活動を強化します。
この動きは、排除のためのものではありません。むしろ、真面目に働く外国人材が正当に評価されるための環境整備です。ルールが曖昧な社会では、誠実な人ほど不利益を被ります。だからこそ、秩序ある枠組みを整えることが必要です。
現在、茨城県内の在留外国人は10万2,549人と過去最多を更新し、10年前の約2倍になりました。つくば市、常総市、土浦市などで増加が顕著です。農業、製造業、建設業、介護など、地域産業を支える現場で多くの外国人が働いています。彼らは単なる労働力ではなく、生活者であり、地域社会をともに支える隣人です。

2025年9月の代表質問で茨城県議会公明党の八島功男議員は、外国人を単なる労働力としてではなく、同じ血の通った人間として認識すべきだと述べました。そして、“ゼノフォビア”が排外主義へと転化する危険性に言及しました。この視点は重要です。不安や戸惑いが生まれること自体は自然な感情ですが、それが差別や分断に向かってはなりません。
大井川和彦知事も答弁で、人口減少社会を乗り越えるためには多様な人材が活躍し、イノベーションを生み出す環境が不可欠だと語りました。母語による相談体制の充実、遠隔医療通訳サービス、日本語指導モデル校の設置、外国人版いばらき幸福度指標の策定など、先進的な施策が進められています。
今年度は産業戦略部内に「外国人適正雇用推進室」を新設し、巡回キャンペーンを実施しています。さらに、外国人材を積極的に受け入れる優良企業の認定制度も創設しました。適正な雇用環境を整えることは、違法行為を抑止するだけでなく、県内産業の持続可能性を高めることにもつながります。
教育面でも、外国人児童生徒が多い8市町の約50校に日本語支援員を配置します。言葉は信頼の基盤です。やさしい日本語を地域全体で学び、対話の機会を増やしていくことが、孤立を防ぎます。
一方で、SNSでは誤情報や過度に煽る言説も広がりがちです。人口減少が進む現実を直視すれば、多様な人材の力は不可欠です。不法就労という違法行為には毅然と対応しつつ、排外的な思想には与しない。そのバランスが問われています。
秩序と包摂。この両輪をどう回していくかが、いまの茨城の課題です。
世界から選ばれる県になるためには、安心して働き、暮らせる環境づくりが欠かせません。外国人版幸福度指標も、数字を示すだけでなく、実際の生活実感に寄り添う政策へと活かしていく必要があります。
今回のパブリックコメントは、その方向性を県民全体で考える貴重な機会です。排斥ではなく共生を。無秩序ではなく公正を。
多様な個性が混ざり合い、誰もが「ここに居場所がある」と感じられる茨城へ。不法就労の課題に正面から向き合いながら、同時に多様性を力に変えていく。その挑戦を、地域全体で進めていきたいと思います。
