政治への信頼が根本から問われる中で、またしても耳を疑うようなニュースが飛び込んできました。文春デジタルが報じた高市首相を巡る「政治資金の付け替え」疑惑は、単なる事務的なミスという言い訳では到底済まされない、極めて根深い問題を孕んでいます。私たちが日々納めている税金が、政治家とその支持者の個人的な便宜のために歪められているのではないかという強い憤りを感じざるを得ません。
今回明らかになったのは、高市氏の事務所が作成していた「裏帳簿」の存在です。そこには、政党支部である「自由民主党奈良県第2選挙区支部」が販売した政治資金パーティー券の収入が、あろうことか高市氏個人の資金管理団体である「新時代政策研究会」への「寄附」として書き換えられていた実態が記されていました。帳簿に記された「新時代振込」や「寄附金控除」といった生々しい但し書きは、意図的に名目を変更し、資金の流れを操作していたことを雄弁に物語っています。
この操作の目的は、一言で言えば「不当な節税」に他なりません。本来、政治資金パーティー券の購入は、パーティーに参加する権利を得るための対価であり、寄附とは性質が異なるため、所得税の控除対象にはなりません。しかし、これを「寄附」へと名目をすり替えることで、購入者は多額の税優遇を享受できるようになります。
寄附金控除を受けると、所得税と翌年の住民税を合わせ、寄附額の4割近くという極めて大きな額の税金を少なくすることが可能です。例えば、1000万円の課税所得がある人が100万円の寄附を行い、この控除を適用すれば、40万円近い税金の還付を受けたり節税したりすることができます。
本来は受けられないはずのこの巨額の還付を、書類の改ざんという脱法行為によって手にしていたのであれば、それは国民の血税を特定の政治家を支援する見返りとして還元しているに等しい行為です。
さらに深刻なのは、これが一度や二度の手違いではないという点です。文春の取材によれば、こうした付け替えは2011年に3件、2012年には13件、そして2019年にも5件確認されています。これほど長期間にわたり、かつ頻繁に行われていた事実は、事務所全体でこれが「常態化」していたことを示唆しています。実際に取材に応じた支援者の中には、パーティー券購入を認めつつも、寄附金控除を受けることが「会計士にも確認済みで問題ない」とまで言い切る人物もいました。この特権意識と感覚の麻痺こそが、今の政治が抱える闇そのものです。
憲法学者や法律の専門家も指摘するように、パーティーを開催した支部側の収支報告書に記載しないことは「不記載」にあたり、実態はパーティー券収入なのに「個人献金」と偽って記載することは「虚偽記載」に該当します。いずれも政治資金規正法に真っ向から抵触する重大な違反行為です。特に高市氏の地元である奈良2区内の支持者が多く関与している点は、選挙区内での利益誘導という側面も見え隠れし、事態はいっそう深刻と言えるでしょう。
一国の首相という重責を担う人物が、自身の政治資金を巡ってこのような不透明な操作を行っていたとするならば、その道義的・法的責任は極めて重いと言わざるを得ません。「知らなかった」で済まされる問題ではなく、自身の事務所でどのような「錬金術」が行われていたのか、高市首相には国民が納得できるまで誠実な説明を行う義務があります。私たちは、この問題を決してうやむやにすることなく、厳しく注視し続けていく必要があります。
