つくば市の五十嵐立青市長が導入した行政運営を市民が評価して、退職金額を算出する新制度の結果、2期目の評点は100点満点で62点と評価され、退職金額が1278万円と決まりました。11月12日の記者会見で五十嵐市長は「市民が政治家を評価する機会を選挙以外でも作ることができ、新しいチャレンジとして目指していたことはできた」と述べました。
投票にはマイナンバーカードを持っている必要があり、専用のアプリをダウンロードしなくてはならないなど評価制度への敷居は高く、参加者は1048人と少数にとどまりました。
つくば市では市民に行政運営を評価してもらったり、政策決定の参考にしたりするため、個別の政策ごとでも今回のような手法で市民の意思を確認していくことにしています。
今回の五十嵐市長の取り組みは、つくば市らしい先進的な挑戦だと評価します。
こうした挑戦は、つくば市でしか出来ないし、五十嵐市長だからこそ出来たと思います。
しかし、現時点で市民誰もがこの評価システムに参加できる仕組みになっていなかったことは、その投票率からみても明らかです。つくば市の有権者総数は、10月19日現在で、19万9711人で、単純に投票率は0.52%にすぎません。これでは市民の意見を反映できているかは疑問です。
低い投票率の要因は、① ネット投票の仕組みが難しく誰もが参加できるシステムではなかったこと。② 評価システムの提案・準備・告知の時間は短期間であり市民に周知できなかったこと。③ そもそも直前に行われた市長選で五十嵐市長は再選され、退職金を巡る評価への市民の関心が薄かったこと。などが上げられるのではないでしょうか。
こうした仕組みが本当に市民にとって必要なのか、冷静が議論を期待します。
記者会見での五十嵐市長の発言のポイントは以下の通りです。
つくば市のネット投票の結果は、投票総数1048票、評価の平均点は62.7点 、退職金金額は満額(2039万4000円)の62.7%で、1278万7038円となった。
今回のネット投票の目的は、① 市民が選挙以外で政治家の実績を評価する機会の提供、② 投票が必ず結果に反映される仕組みの構築、③ アプリ「つくスマ」のダウンロード数を増やし、市政情報へのアクセスを促進、④ ネット投票の課題を整理し、将来的な公職選挙への活用に向けた検討材料とする。
結果として、投票率は「つくスマ」利用者の約4.5%で、エストニアの電子投票導入時(1.9%)を上まわった。過去の模擬投票(10.75%)には及ばないが、景品やハガキ案内がない中で一定の成果があった。一方で、マイナンバーカード所有者(約13万人)を母数にすると投票率は0.8%であった。
市民の投票点数が退職金に直接反映される仕組みを導入できた。1票の価値は約2万円で、投票者数が増えればその価値は低下するが、今回の仕組みが市民に一票の重要性を認識させる機会となった。
また、つくスマのダウンロード促進につながった。ダウンロード数は644件増加した(2万2530件→2万3174件)。
ネット投票の課題は、① マイナンバーカードの電子証明書パスワード問題:パスワード忘れが多く、再設定が窓口対応のみ。 ② アプリ導入のハードル:新規ダウンロードが必要な点で手間を感じる市民も多い。③ 実績評価の負担:提供された情報が多く、評価が難しいとの声。④ セキュリティ不安:システムへの信頼性が問われる。
今回のネット投票は市民参加の新しい可能性を示す一方、多くの課題が浮き彫りになった。今回の取り組みを土台に、つくば市の行政の透明性や市民参加をさらに向上させる施策を検討することが求められる。
参考:つくば市の公式発表