11月23日、茨城県東海村のNPO「真砂山FUNクラブ」が主催する〈第2回 東海村ティラノサウスレース〉が賑やかに開催されました。会場となった阿漕ヶ浦公園には、日本ティラノサウルス協議連盟公認レースを楽しもうと、全国から100匹を超える“恐竜たち”が大集合!
レースは、幼獣・成獣メス・成獣オスの3部門で開催され、どのレースも本気そのもの。
特に成獣オスの部では、現役の大学陸上部100m選手がティラノスーツで圧巻の走りを見せ、見事優勝しました。
会場は終始、笑い声と「ガォー!」という雄叫びが響き渡り、大人も子どもも夢中になれる一日でした。楽しい雰囲気をぜひ動画でご覧ください。
ティラノサウルスレースの起源は、アメリカ・ワシントン州の競馬場「エメラルドダウンズ」。2019年、この競馬場のスタッフが「面白い余興をやろう」と恐竜の着ぐるみを着てコースを走ったところ、その動画がSNSで爆発的に拡散されました。ゲートから一斉に飛び出す約30体のティラノサウルスたちは、まるで映画のワンシーンが現実になったかのようで、 YouTube の再生回数は2000万回を超えるほどの人気に。やがて全米各地へと広がり、チャリティーイベントや地域のお祭りでも恒例となっていきました。
ただこの競馬場のイベントは、現在のティラノサウルスレースのレギュレーションからは、少し逸脱しているようです。日本競技連盟の規定によれば、「ティラノサウルスから腕や足出し行為はNG」と言うことです。
この“楽しさの波”は日本にも届きます。コロナ禍でイベントが減り、地域や学校に活気を取り戻したいと願う中、「日本でもやってみよう」といち早く名乗りを上げたのが鳥取県大山町でした。新聞データベースに残る記録によれば、日本で初めて本格的に開催されたのは2022年4月16日、大山町倉谷「ティラノサウルスレース大山」です。
会場となったのは、大山のふもと、標高約300メートルにある芝畑のグランピング施設「トマシバ」。1日1組限定の特別な空間が、この日は100体のティラノサウルスで埋め尽くされ、異世界のような光景が広がりました。参加募集は開始からわずか10日で定員に達し、地域の期待の大きさと、全国からの注目が集まっていたことがうかがえます。
この大会が大きな話題になった背景には、主催者の仕掛けがありました。「面白いことをやろう」「みんなを元気にしたい」という思いから、大山町や米子市、鳥取砂丘などに“ティラノサウルスの着ぐるみ姿で出没する”という大胆なPRが始まります。商店街を歩くティラノ、カフェに現れるティラノ、砂丘をのしのし歩くティラノ…。その姿がSNSに投稿されると瞬く間に拡散し、「これは何のイベントだ?」と話題が全国へ広がっていきました。
当日のコースは芝生の約100メートル。柔らかい地面と着ぐるみ特有の視界の狭さが相まって、まっすぐ走ること自体が一つのチャレンジで、参加者も観客も笑いが絶えませんでした。転びそうになりながら必死に走るティラノサウルスたち、親子で手を取り合いながら走る小さなティラノ、そしてハイスピードで駆け抜ける本気の大人ティラノ…。どのレースもドラマがあり、ゴールするたびに大きな拍手が起こりました。
レースの様子はドローンで空撮され、YouTubeでも配信されました。大山の雄大な景色と芝生、そしてオレンジ色のティラノサウルスたちが重なる映像は、ただ面白いだけでなく、どこか牧歌的で温かい雰囲気を感じさせるものでした。
この日本初開催が成功したことで、ティラノサウルスレースは北海道、関東、中部、九州などへ広がり、いまでは地域イベントの “新しい名物” として定着しつつあります。参加者の年齢や体力に関係なく楽しめること、SNSとの相性が抜群なこと、そして「みんなで笑顔を共有できる」というシンプルな魅力が、全国の人々を引きつけているのでしょう。
ティラノサウルスレースの発祥がアメリカ、そして日本での原点が大山町であることを振り返ると、「楽しさは創り出すことができる」というメッセージが伝わってきます。誰かの遊び心と地域の協力が重なると、こんなに温かく、豊かな文化になる。ティラノサウルスレースは、その象徴のようにも感じられます。
これからも全国のどこかで、新しいティラノたちが芝の上を駆け抜けていくことでしょう。笑顔をつくる文化として、ますます広がっていく予感がします。
