12月5日、自民党と日本維新の会が、衆議院議員の定数を削減する法案を国会に提出しました。その中身を知れば知るほど、そして彼らの進め方を見れば見るほど、これは単なる制度の変更ではなく、私たちの民主主義そのものを揺るがす暴挙であると感じざるを得ません。

提出された法案の中身は、あまりにも乱暴な結論ありきの内容です。彼らは現行の定数465議席から1割削減を目標に掲げ、最低でも45議席を減らすとしています。これだけなら議論の余地があるかもしれませんが、最大の問題はそこに仕掛けられた自動削減装置とも言える条項です。与野党で議論はするものの、もし1年以内に合意できなければ、問答無用で小選挙区25、比例代表20の計45議席を自動的に削減するというのです。選挙制度というのは民主主義の土俵そのものであり、本来であれば党派を超えて丁寧に合意形成を図るべき聖域です。それを、あらかじめ期限を切って、合意できなければ強制執行するというやり方は、議論を装った脅しに他なりません。このような乱暴な手法がまかり通れば、国会の権威は地に落ちてしまうでしょう。
そもそも、なぜ今、これほど急いで定数削減なのでしょうか。維新はこれを身を切る改革と呼んでいますが、多くの国民が今、政治に求めているのは本当にそこなのでしょうか。私は違うと思います。国民が怒り、求めているのは、連日報道される政治とカネの問題への決着です。企業・団体献金の禁止や、不透明な資金の流れを断ち切ることこそが、真の意味での身を切る改革のはずです。それにもかかわらず、自民党や維新が定数削減を声高に叫ぶのは、政治資金問題という本丸から国民の目をそらすための論点のすり替えではないかと疑わざるを得ません。そんなことより定数削減だと言わんばかりの態度は、自らの襟を正すことから逃げているようにしか見えません。
「独裁への道」が開かれる? 定数削減法案に隠された恐ろしい罠
そして私が何より危惧しているのは、この定数削減が将来の日本にもたらす恐ろしい副作用についてです。今、国会を取り巻く環境は激変しています。存立危機事態の解釈や非核三原則の見直し、そして憲法改正といった、国のあり方を根底から変えかねない重大なテーマが次々と議論のテーブルに乗っています。こうした重要な局面において、国民の代表である国会議員の数を減らすことは何を意味するでしょうか。それは、国民の多様な声を国政に届けるパイプを細らせ、政府の暴走を監視し、ブレーキをかける力を弱めることに直結します。
多様な民意を切り捨て、異論を排除し、数を持った与党だけで物事を決めやすくする。それは、かつて私たちが歴史の教訓として学んだ、独裁的な国家運営へとつながる危険な道です。人口減少社会だから議員も減らすというのは一見もっともらしく聞こえますが、行政のチェック機能や立法機能を維持するためには、安易な削減は慎まなければなりません。この法案は単なる議席減の話ではなく、私たちの自由と民主主義を守れるかどうかの瀬戸際の問題なのだと、強く警鐘を鳴らしたいと思います。
