
1999年9月30日に発生した日本の原子力史上最悪の事故・JCO臨界事故から丸二年を迎えるのを前に、茨城県主催では10年ぶりとなる原子力防災訓練が2001年9月29日、東海村やひたちなか市などで行われ、住民645人を含む約3300人が参加しました。 今回の原子力防災訓練は、以下の3点を目的に行われました。 (1)原子力災害時に応急対策を迅速かつ確実に行うことができるようにするため、防災業務関係者等の対応能力を向上させるとともに、防災関係機関間の相互協力体制の強化を図る。 また、訓練の重点項目としては、 (1) 県・市町村等の初動対応 訓練は、午前8時30分、東海村の核燃料サイクル開発機構(核燃機構)東海再処理施設で臨界事故が発生し、放射性物質が屋外に放出したとの想定でスタートされました。 8時40分には、県の原子力安全対策課にファクシミリと電話で、事故の第1報が核燃機構から寄せられ、県は直ちに、橋本知事を本部長とする原子力災害対策本部を県庁内に設置。8時55分頃より、知事は村上達也村長や経済産業省とテレビ会議を行い、住民避難などの初動対応を決めました。 10時からは、県庁福利厚生棟に設けられた暫定オフサイトセンターで、国や県、市町村の担当者による合同対策協議会が開かれました。 一方、東海村では、午前9時過ぎ、「無用の外出は控えて」との防災無線が日本語と英語で村内全域に響き渡たり、住民への広報活動が始められました。 村立照沼小学校では、校内放送が流れると、144人の児童が帽子にマスク、ジャージーの上下に着替え、避難を開始しました。これは、出来るだけ放射性物質に肌を露出させなおとの考え方によるものです。児童は、自衛隊のバスなどに分乗し、約4.5キロ離れた村総合体育館に向かいました。 一般住民は、自衛隊の輸送用トラックで、村総合体育館の避難所に避難。午前十時前から住民が次々到着しました。緊張した面持ちで放射性物質による汚染の有無を調べる検査を受けていました。 この他、災害弱者といわれるお年寄りや病気療養中の方も訓練に参加しました。また、ヘリコプターによる重症患者の搬送訓練も実施されました。 住民広報の訓練では、ヘリコプターを使った空中からの拡声器による広報や、JCO事故を契機に整備された防災無線の戸別受信機を活用した情報伝達訓練が、日立市や常陸太田市で行われました。 また、県が新たに整備したインターネット放送局(インターネットのストリーミング技術を利用したオンデマンドで番組を提供するシステム)では、知事の記者会見や対策会議の模様がリアルタイムで中継され、一定の成果を得ました。 |
![]() 県庁6階の防災センターに設置された災害対策本部。 テレビ会議システムを活用し国、県、東海村の責任者が情報と意見を交換します。
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![]() ひたちなか市西十三奉行地内に建設中のオフサイトセンター
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防災訓練を視察しての感想
井手よしひろ県議は、8時30分の訓練開始から第1回の合同対策会議までは、県庁舎(含む暫定オフサイトセンター)で、その後東海村総合体育館で訓練の状況を視察しました。また、終了後、県と国が建設を進めているオフサイトセンターの建設状況を視察しました。 JCO事故を教訓として、10年ぶりに行われた原子力防災訓練でしたが、住民の皆さんや学校関係者の方々の真剣の姿が非常に印象的でした。 今回一般住民の避難体制は、一度近所の避難所(コンクリート構造で放射性物質の影響を遮断できる建物)に集まり待機する。状況を見極めて、自衛隊の車両等で東海村総合体育館に避難するという二段階で行われました。しかし、参加した住民のからは「訓練だからこのような体制で避難したけれど、実際は一刻も早く現状から離れたいという一心から車で避難すると思います。その時に、避難が集中してパニックに陥るような気がします」。「ヘリコプターでの住民広報はほとんど聞き取れませんでした。自衛隊の車に乗っているときも、避難所でも、今、どこでどうゆうことが起きているのか全く情報を知る術がありませんでした。住民へどのように情報を伝えるか、この体制も検討してほしい」といった声が聞かれました。 また、訓練に当たった県の体制も、事前の準備が徹底され、本当の事故の祭は果たしてこれだけ円滑に対応が進むのだろうかと、疑問を感じるところがありました。 たとえば、訓練が始まる8時30分には、原子力災害対策室にはほとんどの担当職員が防災服を着て待機していました。実際には、この要員は他の職務をしているはずであり、県庁舎の様々な部署で執務中です。こうした要員をいかにして迅速に招集して対策室を立ち上げるかに、本来は大きな課題があるはずです。次回は、こうした訓練が必要になると思います。 また、些細なことですが、文書の印刷、配布などの体制も事前に、マニュアルを定める必要を感じました。 第1回の合同対策会議の会場の脇では、数人の職員が役員に配る資料のホッチキス止めやページの確認に汗を流していました。訓練では、指呼に関する資料は事前に印刷され、製本され、関係者の配布されています。それでも、多くの資料に整理番号などが振られておらず、対策会議でも委員がどの資料を見て良いのかとまどっている姿が散見されました。こうした目立たない危機管理の体制を、事前にしっかりと準備する必要があると実感しました。 いずれにせよ、今回の訓練の成果を活かすために、毎年この原子力防災訓練を定例化し、JCO事故を風化させない努力を積み重ねなくてはなりません。 |
参考:SPEEDIネットシステムについて
参考:オフサイトセンターについて
参考:茨城県インターネット放送局:リンク切れ
このページは、茨城県議会井手よしひろの公式ホームページのアーカイブ(記録保管庫)の一部です。すでに最終更新から10年以上経過しており、現在の社会状況などと内容が一致しない場合があるかもしれません。その点をご了解下さい。 |