2月7日・8日の両日、日立市千石町の多賀市民会館で、ひたち市民劇「石のこえ みらいのまち」が上演されました。会場には多くの市民の皆さまが集い、開演前から、期待と温かな空気に包まれた特別な時間が流れていました。
作品の主人公は、中学1年生の佳純。
日立に引っ越してきたばかりの彼女が、このまちの魅力を発表することになり、母・智絵とともに、郷土歴史家・田谷に導かれながら、日立の歴史と出会っていく物語です。
物語は、古代カンブリア紀の生命の誕生から始まり、大甕の地主神カガセオ、水木の里人、水戸黄門・徳川光圀公、日立鉱山の創始者・久原房之助、日立製作所の小平浪平、そして日立風流物を再興した根本甲子男さん、よかっぺまつり初代実行委員長・森秀男さん、日本を代表する作曲家・吉田正さんと、日立にゆかりのある人々の物語へとつながっていきます。
5億3000万年という壮大な時間の流れの中で育まれた、日立の記憶と誇りが、丁寧に舞台上で描き出されていました。

この舞台を支えたのは、市民による劇団「ひたち市民シアター」の皆さんです。
7歳から80歳までの幅広い世代の市民が参加し、合唱団や演奏者、バレエ団も加わって、キャストとスタッフ総勢150名が7カ月にわたり稽古と準備を重ねてきました。
年齢も立場も異なる人たちが、「日立を愛する」という思いでつながり、一つの舞台をつくり上げていく姿は、まさに市民文化の結晶であり、このまちの底力そのものだと感じました。
主人公・佳純を演じた白田唯凪さんの、まっすぐで透明感あふれる演技も、大変印象的でした。
「見に来てくれた人に損をさせない舞台にしたい」という言葉どおり、その真摯な姿勢が、観客の心に深く届いていました。
また、映画『ある町の高い煙突』で主演を務め、日立市のふるさと大使でもある井手麻渡さんも特別出演。舞台全体の完成度を高めていました。
脚本・演出を担当された豊田郁央さんのもと、「演劇の面白さ」と「地域の物語」が見事に融合した舞台が完成していたことに、深い感銘を受けました。
神話の時代から現代、そして未来へ。
御岩神社の信仰、日立鉱山から始まった工業都市としての歩み、「桜のまち」としての風景、そして吉田正さんの音楽。
それらが一体となって、「このまちに生きることの誇り」と「未来への希望」を、力強く私たちに語りかけてくれました。
上演時間は3時間を超える大作でしたが、不思議と長さを感じることはなく、最初から最後まで少しも飽きることなく、心から堪能させていただきました。
それだけ、物語の力と、出演者の皆さんの熱意が、観る人の心をつかんで離さなかったのだと思います。
私自身も、主宰する一般社団法人地方創生戦略研究所として、日立の海岸を撮影したドローン映像を提供し、オープニングに使用していただきました。
大海原と空が広がる映像とともに幕が開いた瞬間、この物語に関われたことへの喜びと誇りを、改めて感じました。
そして、印象的だったのは、ラストシーンです。
派手なカーテンコールはありませんでしたが、最後は舞台と会場が一体となり、吉田正さんの「いつでも夢を」を合唱して締めくくられました。
出演者と観客が心を一つにし、静かに、そして温かく響き合ったあの時間は、まさにこの作品の象徴だったように思います。
鳴りやまない拍手と、会場に広がった感動の余韻。
それは、出演者、スタッフ、そして支えてきたすべての市民の皆さんの努力が実を結んだ証でした。
「石のこえ みらいのまち」は、単なる演劇公演ではなく、日立の過去・現在・未来をつなぐ、大切な文化の財産です。
この舞台は、これから先も、多くの人の心に残り、語り継がれていくことでしょう。
この素晴らしい舞台をつくり上げてくださったすべての皆さまに、心から敬意と感謝を申し上げます。
これからも、文化と歴史を大切にしながら、誇れる日立の未来を、皆さんとともに築いていきたい――。そんな思いを新たにした、かけがえのない二日間でした。
