国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」が、今注目されています。貧困の解消をはじめとする17の分野169項目におよぶSDGsの目標は、これまでの開発途上国の発展目標にとどまるものではありません。地球環境に保全、温暖化防止対策、格差のない社会、女性の活躍促進など先進国も課題を共有する内容となっています。更に、その主体は国家や政府にとどまらず企業や地方自治体も重要なステークホルダーとなっています。
SDGsは開発途上国のみに対する支援の目標ではなく、先進国を含む全ての国のそれぞれのレベルにおける貧困や不平等・不健康等の撲滅や改善を図るものです。
いわばすべての国民の Q O L (生活の質)を向上させる目標と言えます。地方自治法には自治体の基本的役割として、「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」とされており、国連が掲げるSDGsの目標達成に向けて、自治体は、政府と連携して、住民のQOL向上を図る取組を進めていかねばなりません。
S D G S の17の目標の中には、目標11として「住み続けられるまちづくりを」という目標が掲げられています。まさにこの目標11は、自治体行政への大きな期待の表れれと理解すべきです。一方、自治体が影響を与えることができる目標は目標11に限ったことめではありません。他の16のゴールの達成にも自治体の果たすべき役割は大きなものがあります。
SDGsは民衆のアジェンダ
SDGsは「民衆のアジェンダ」と呼ばれています。以前のミレニアム開発目標と比べて、SDGsは多くの違いがあります。特筆すべきは、その策定にあたり、多くの女性や若者をはじめ様々な人たちの対話をもとに議論が進められたことです。
国連では、重点的に取り組んでほしい課題を投票するアンケート調査を行い、700万人以上が参加しました。
30歳未満の若者が参加者の7割以上を占める中、教育、保健、雇用などが調査で上位となり、SDGsに実際盛り込まれました。
こうした経緯を考えると「持続可能な開発のための2030アジェンダ」には、「すでに総百万もの人々が、このアジェンダに関わり、自分のものにしようとしている。これは民衆の民衆による民衆のためのアジェング」であり、その一点がアジェングを成功に導くと、我々は信じる」と謳われています。
SDGsのネクサスアプローチ
また、SDGsには、もう一つの特徴ががあります。
貧困や飢餓といったテーマごとの前進を図ったミレニアム開発目標とは異なり、全ての課題は相互に深く関連し包括的に解決を進める必要があるとの認識に立って、新たなアプローチが志向されていることです。
つまり、個々の課題解結を連動させる形で、他の目標の達成も進めていくという「好循環」を生み出すことを目指しています。
例えば、安全な水の確保ができれば(SDGsの目標6)、病気や感染症に苦しむ人が無くなり(目標3)、毎日毎晩のように水汲みをしてきた女性や子どもたちの負担が軽減され、女性が就業する機会が増え(目標5)、所得が増える(目標1)、また子供たちは学校に通るようになる(目標4)といったプラスの連鎖が始まります。
これは「ネクサスアプローチ」と呼ばれています。
SDGsは、先にも述べましたが、17分野にわたる169の項目があります。多岐に及ぶ課題の関連性を見いだしながら、同時進行的に解決を図っていくアプローチといえます。
こうした民衆のアジェンダとしてSDGs、ネクサスアプーリーで解決をめざすSDGs、という2つの特徴をみても、地方自治体におはSDGsの取組みがいかに重要
かが理解できます。民衆=住民に一番近い公的組織は地方自治体です。市町村や都道府県がSDGsの視点で、地方の課題を再度検証することが必要です。