税制見直し高齢者の負担ずしり 相談殺到、窓口混乱
神戸新聞(2006/06/25)
高齢者優遇税制の見直しを受け、年金受給者らを中心に、市町・県民税をはじめ同税や所得をもとに算定される国民健康保険(国保)料、介護保険料が大幅アップとなった。今月に入って届き始めた市町からの納付通知書を見て、初めて増税の「痛み」を実感した人は多く、問い合わせや苦情、相談が自治体の窓口に殺到している。各市町は対応に追われるとともに、未納や滞納の増加を懸念している。
2006年度から適用された税制改正は、これまで非課税だった年間所得125万円以下の人も課税対象に。ほかに公的年金控除の縮小、老年者控除の廃止など、65歳以上の年金生活者の課税が強化された。二年間の経過措置はあるが、前年と年収が同じでも、控除が減った分、所得増とみなされ、国保料や介護保険料がアップする。
国保料を所得でなく市・県民税をもとに算定している神戸市は、他市町以上に影響が大きかった。市独自の軽減措置を適用しても国保料、介護保険料とも2倍近くはね上がるケースがあり、1万8000件を超える苦情や相談が寄せられている。
同じような状況は日本全国の市町村窓口で発生しています。日立市でも6月8日、市・県民税の納税通知書を市内世帯に郵送したところ、週明けの12日には一日300件もの問い合わせや苦情の電話が入ったといいます。
こうした混乱の要因は、18年度から適用された税制改革が、65歳以上の高齢者に大きな影響を与えたことが上げられます。市・県民税に関する税制改正の主もなポイントは以下の4点です。
市・県民税の所得割額の定率源減税(15%、限度額4万円)が2分の1に縮減(7.5%、限度額2万円)
②公的年金等控除の65歳以上の上乗せ措置の廃止
公的年金等控除の65歳以上の方への上乗せ措置が廃止
③65歳以上の非課税措置の廃止
前年の合計所得が125万円以下の方に対する市・県民税の費買い税措置が廃止(18年度は本来の税額の3分の1、19年度は3分の2、20年度から全額)
④老年者控除の廃止
65歳以上で前年の合計所得が1000万円以下の方に対する老年者控除(48万円)が廃止
こうした税制改正は65歳以上の年金受給者、特に厚生年金受給者を直撃した感があります。扶養親族がない場合、年金収入が260万円の方は、市・県民税非課税から一挙に4万4900円に跳ね上がることになりました。
来年度の税制改革では、所得税から市・県民税への税源移譲が行われます。所得税が減税され市・県民税が増税されるため、個人レベルでの税額は同じですが、納付通知書を見ての混乱は今年以上になることが懸念されています。