説明責任求める世論に背を向け「秘書の独断」と責任逃れ
民主党の鳩山由紀夫代表の悪質な政治資金の偽装献金問題が広がりをみせています。
6月30日、鳩山代表は自身の資金管理団体「友愛政経懇話会」(友政懇)の収支報告書に、平成16年~19年の4年間で、少なくとも延べ193人、総額2177万円に上る大規模な虚偽記載をしていたことを認めました。
その上で、鳩山氏側は収支報告書を修正。総務省で公表している平成16年~18年で、献金者氏名88人中、実に約8割に及ぶ70人を虚偽記載として削除しました。残ったのは鳩山氏本人と親族、秘書とその家族など、わずか18人でした。
虚偽記載は政治資金規正法違反であり、故意でなくても重大な過失があれば「5年以下の禁固または100万円以下の罰金」に問われる犯罪行為です。鳩山氏が長期間にわたり、献金偽装を放置してきた責任は極めて重いといえます。
発端は、朝日新聞6月16日付の報道でした。同紙は「すでに亡くなった人が個人献金者として記載されている」と報じ、これに対し「死亡後の献金なんて不愉快」と記載された遺族は不快感を露わにしています。
亡くなった人の名前を悪用した前代未聞の「故人献金」疑惑は、朝日新聞26日付で「存命中の人も献金を否定」と拡大していきました。
民主党は総選挙への悪影響を考慮し、姑息にも7月1日に決まっていた党首討論開催も断りました。そこには、5月27日の党首討論で「存分にやろうじゃありませんか」と大口をたたいた鳩山氏の余裕は、全くありませんでした。
「報道のご指摘は基本的に事実でございました。またほかにも、事実ではない記載が見つかった」。朝日新聞の報道から2週間もたった6月30日、やっと鳩山氏は釈明会見を開き、偽装献金を認め陳謝しました。しかし、約50分間、弁護士を同席させて経緯を語りましたが、すべて経理担当の公設秘書が独断で行ったもので、自身は「全くノータッチ」と関与を全面否定しました。
では、なぜ、これほどまでに大がかりな虚偽記載に発展したのか。この肝心の点について鳩山氏は、秘書が“個人献金を集める仕事を怠っていたのを隠すため、架空の献金をでっち上げた”としか語っていません。
しかし、この説明は合理的ではありません。「友政懇」の個人献金は10年間に総額5億9000万円に上っています。政界でも突出しています。意図的に個人献金を仕立て上げなければならない理由が全く見あたらないのです。マスコミ各紙も一斉にこの点を疑問視し、「調査も説明も不十分」「なお納得できない点は少なくない」などとそろって批判しています。
それでも民主党は、「鳩山代表の説明を了としたい」(岡田克也幹事長)と、この釈明会見で説明責任は果たされたとして疑惑の幕引きに躍起となっています。
しかし、国民は納得していません。7月4日付の読売新聞世論調査によれば、鳩山氏が説明責任を果たしていないと思う人は80%に達しています。
さらに、またしても秘書への責任押し付け。政治家が不祥事を起こすたびに繰り返されてきたこの構図を、国民は鳩山氏からも見せつけられたのです。
平成15年以前の報告書にも偽装献金はないのか、偽装献金の原資に使われた鳩山氏の個人資金には、出所を明かせない裏献金は入っていなかったのか――など、新たな疑惑が次々に浮上してきています。
友愛政経懇話会の政治資金報告書がいかに杜撰のものか、明らかにするために、官報に掲載された内容を整理して掲載いたしました。6月30日付で修正された分もそのまま掲載してあります。資料を入手でき次第、修正の内容も明らかにしたいと思います。(虚偽掲載された方のプライバシーや名誉の問題もあるかと思いますので、お名前はマスキングしました)