
終戦から80年を迎えた本年、各政党が「戦争を繰り返さない決意」を新たにする声明を発表しました。その中で、参政党は次のように述べています。
「この節目の年、参議院議員選挙が行われ、長らく戦後日本の政治を牽引してきた自民党が、結党以来初めて衆参両院で過半数を割りました。」
一見もっともらしく聞こえるこの一文ですが、歴史を知る者からすれば驚きを禁じ得ません。なぜなら、これは明らかに事実誤認だからです。しかも、党の公式声明という重みのある文書に誤った記述が盛り込まれているのです。

戦後日本政治の大きな地殻変動、細川連立政権の樹立/自民党は衆参で過半数を失っていた
自民党が「衆参両院で過半数を持たなかった」事例は、過去にも存在します。
1989年の参議院選挙では、リクルート事件や消費税導入への反発を受けて自民党が大敗。参議院での過半数を失いました。1992年の参院選でも過半数を獲得するには至りませんでした。
さらに1993年の衆議院総選挙では、細川護熙連立政権が誕生し、自民党は結党以来初めて与党の座を失いました。この時点で衆議院でも過半数を割り、参議院でも多数を持たない状態に陥っていたのです。すなわち、今回が「初めて」ではないのです。


政党が発表する声明は、単なる一政治家の発言とは違います。党としての公式見解であり、歴史認識や理念を国民に示すものです。その公式声明に重大な事実誤認が含まれているということは、党としての歴史に対する姿勢が問われる問題です。
戦後日本の歩みは、数々の政治的試練を経て積み上げられてきました。1989年、1993年という節目は、日本の民主主義の転換点として記憶されています。それを無視し、「初めて」と言い切ってしまうのは、歴史を軽んじる姿勢の表れにほかなりません。
歴史に誠実であることが政治の責任
終戦から80年という節目の時だからこそ、私たちは歴史の事実に誠実であるべきです。過去を正確に振り返り、そこから未来への教訓を導き出すことが政治の責任です。
参政党の声明に見られる誤認は単なる言葉の間違いではありません。国民に誤った認識を植え付け、歴史を軽視する危うさをはらんでいます。政治を担おうとする政党が歴史の基本的事実さえ誤るならば、その信頼性自体が疑われざるを得ません。