茨城県北部の中核都市・日立市では、人口の減少が止まりません。昭和60年に21万8000人を記録した人口は、平成21年には19万3500人余りに減少してしまいました。
同時に日立市では高齢化が著しく進んでいます。昭和60年に9.3%であった高齢化率は、平成19年には20.9%に跳ね上がっています。
このような人口減少と高齢化が同時進行する都市は「縮小都市」と呼ばれています。
日本全体の人口が、今後増加に反転する可能性はありえず、こうした「縮小都市」が21世紀の都市の基本であることを認識する必要があるようです。
しかし、実際に小さな街づくるを推進することは非常に難しい現実があります。たとえば、多くの市町村が「人口増加や人口の維持」を前提とした総合計画をつくり続けました。私たち地方議員にあっても「人口の1割減を想定して、公共事業を考えよう」などと、選挙公約に掲げたならば、後援者からの反発を受けてしまいます。
縮小都市は日本に限った課題ではありません。先進諸国にも共通した課題でもあります。
6月6日付け聖教新聞の文化のページには、大阪市立大学大学院矢作弘教授の“魅力ある「縮小都市」づくり”と題された記事が掲載され、諸外国の取り組みや長崎でのNPOの取り組みがコンパクトに紹介されています。
矢作教授は、海外の先進都市の状況を以下のように説明しています。
「人口減少は当面、避け難い。それならば縮小することを悲観するのではなく、新しい『都市のかたち』を創造するチャンスと考えよう」という思考である。そこで提案される都市政策は「賢く衰退する(smart decline)」「より小さく成長する(growing smaller)」などの表題で言い表されている。
縮小都市政策の基本は、田畑や野山をつぶして郊外に都市を拡散させてきたこれまでの「開発主義」とは決別するところにある。ドイツや米国の中西部の都市では、インナーシティー(都市周縁部)で空き家が急増していることに対応し、①入居のめどのない空き家を解体し、跡地を緑地に戻す②集合住宅も2戸を1戸に減築し、1世帯当たりの居住スペースを広げるーーなど、縮小を環境の改善や生活の質のアップに結び付ける努力がはじまっている。
また、インナーシティーの工場跡地を活用する新しいタイプの都市農業が生まれている。NPO(民間非営利団体)が中心となってネットワークを形成し、そこでとれた農産物をファーマーズマーケットや地元のスーパーマーケットに直卸しする地産地消の社会運動である。大学農学部が技術支援している。新規雇用も創出されている。
郊外開発を抑制し、ひとも投資も都心に集積させようとするときに、都心に残る古いビルや周辺部の空き倉庫をロフト(住宅や小さなオフィス)に蘇生させ、都市の再活性化に結び付けることも縮小都市政策の柱の1つになっている。
縮小都市政策の基本は、田畑や野山をつぶして郊外に都市を拡散させてきたこれまでの「開発主義」とは決別するところにある。ドイツや米国の中西部の都市では、インナーシティー(都市周縁部)で空き家が急増していることに対応し、①入居のめどのない空き家を解体し、跡地を緑地に戻す②集合住宅も2戸を1戸に減築し、1世帯当たりの居住スペースを広げるーーなど、縮小を環境の改善や生活の質のアップに結び付ける努力がはじまっている。
また、インナーシティーの工場跡地を活用する新しいタイプの都市農業が生まれている。NPO(民間非営利団体)が中心となってネットワークを形成し、そこでとれた農産物をファーマーズマーケットや地元のスーパーマーケットに直卸しする地産地消の社会運動である。大学農学部が技術支援している。新規雇用も創出されている。
郊外開発を抑制し、ひとも投資も都心に集積させようとするときに、都心に残る古いビルや周辺部の空き倉庫をロフト(住宅や小さなオフィス)に蘇生させ、都市の再活性化に結び付けることも縮小都市政策の柱の1つになっている。
さらに、長崎市の例を引きながら、縮小都市における新たな街おこしの事例を紹介しています。
これらの縮小都市政策の取り組みを通して明らかになってきたことは、行政が補助金や減税などで活動を支援する一方、民間のいろいろな組織が参画し、必要に応じて地元大学も関与し、活動の範囲に重層的なパートナーシップを構築することが重要である。
人口減少の縮小都市では、財政基盤が弱体化する傾向にある。都市政府がこれまでのように、地域のことをあれもこれも世話をすることはできなくなる。今後は、都市政府と地域のステイクホルダー(利害関係者)が連携することが大切になる。換言すれば、「地域力」を問われることになる。
長崎市は人口が減少するようになって久しい。市域の70%が坂道にある斜面地都市でもある。その斜面地住宅地で高齢化が急ピッチで進展している。斜面地暮らしの高齢者は買い物や病院通いなどの移動が困難で、生活の持続可能性が危うい。その意味では、長崎の斜面地暮らしは、日本の縮小都市の将来の縮図になっている。
その長崎では、長崎斜面研究会というNPOが立ち上がり、斜面地暮らしの高齢者を支える活動を展開している。長崎大学教員、学生、医師、ソーシャルワーカー、公務員、看護師、商店主…などが会員になり、高齢者の移動を助けるネットワークを作っている。長崎大学工学部と三菱重工長崎造船所の退職技術者が連携し、高齢者の移動を支援する機器の研究開発も行っている。
こうした民間、大学主導のコミュニティー活動を、長崎市は、決して大きな額ではないが財政面から支援している。長崎の持つ人的な地域資源がうまく連携し、「地域力」を発揮している例である。縮小都市であることのハンディキャップが、コミュニティー強化の縁起になっていると考えることもできる。
これまでの都市政策は、いかに成長を促すか、開発するか、あるいは開発をコントロールするかに傾注してきた。
「都市の縮小を持続可能な方向にどのように誘導するか」というテーマはまったく新しい政策課題であり、都市政府は今後、試行錯誤を重ねながら「賢く縮小する道」を探求することになる。
人口減少の縮小都市では、財政基盤が弱体化する傾向にある。都市政府がこれまでのように、地域のことをあれもこれも世話をすることはできなくなる。今後は、都市政府と地域のステイクホルダー(利害関係者)が連携することが大切になる。換言すれば、「地域力」を問われることになる。
長崎市は人口が減少するようになって久しい。市域の70%が坂道にある斜面地都市でもある。その斜面地住宅地で高齢化が急ピッチで進展している。斜面地暮らしの高齢者は買い物や病院通いなどの移動が困難で、生活の持続可能性が危うい。その意味では、長崎の斜面地暮らしは、日本の縮小都市の将来の縮図になっている。
その長崎では、長崎斜面研究会というNPOが立ち上がり、斜面地暮らしの高齢者を支える活動を展開している。長崎大学教員、学生、医師、ソーシャルワーカー、公務員、看護師、商店主…などが会員になり、高齢者の移動を助けるネットワークを作っている。長崎大学工学部と三菱重工長崎造船所の退職技術者が連携し、高齢者の移動を支援する機器の研究開発も行っている。
こうした民間、大学主導のコミュニティー活動を、長崎市は、決して大きな額ではないが財政面から支援している。長崎の持つ人的な地域資源がうまく連携し、「地域力」を発揮している例である。縮小都市であることのハンディキャップが、コミュニティー強化の縁起になっていると考えることもできる。
これまでの都市政策は、いかに成長を促すか、開発するか、あるいは開発をコントロールするかに傾注してきた。
「都市の縮小を持続可能な方向にどのように誘導するか」というテーマはまったく新しい政策課題であり、都市政府は今後、試行錯誤を重ねながら「賢く縮小する道」を探求することになる。
今後、我が街・日立のまちづくりを、この縮小都市における街おこしの発想で、見直してみたいと思います。
日立市の継続した人口減少について、私は、まちの元気を奪い、さびしいと思っています。
人口維持の対策として、群馬県太田市の例を出し、もう少し企業誘致に力を入れてはどうかと、ある大学教授に話したところ、その教授は、企業誘致しても、外国人労働者が増加し、治安が悪化しても困るんですよ、という話がありました。
優良企業の誘致や既存企業の成長に期待しますが、「コンパクト シティ」(こじんまりとして、まとまったまち)づくりも、今後は考える必要があるのかもしれません。
「縮少都市」では、元気が出ないので、「コンパクト シティ」のような、名称も検討してはどうでしょうか。
久慈町 大和田稔