日立市は8月6日、市新庁舎整備事業第1期本体工事の一般競争入札を開札しました。唯一入札に参加申請していた大成建設・りんかい日産建設・鈴縫工業・秋山工務店・岡部工務店JVが、辞退したため入札は不調に終わりました。第1期分の予定価格は、102億378万円(税別)で、東日本大震災の復興需要や東京オリンピックの建設需要拡大などによって、資材や人件費が増大しており、JVは予定価格内の工事施工を断念した模様です。
第1期工事の概要は、S・RC造(基礎免震構造)地下1階地上7階建て延べ2万7089㎡の執務棟・屋内広場の建築・電気設備・機械設備工事、外構工事、旧数沢川の護岸・橋梁や旧車両棟の解体工事など。落札者が出れば、市議会が9月定例会で可決した後、着工する計画でした。工期は2016年10月31日までの予定でした。
設計は、地元日立市出身の著名な建築家・姉島和世氏(SANAA事務所)が担当しました。
また、17年1月に執務棟・屋内広場の供用を開始した後、既存庁舎を解体する計画です。その跡地には、第2期本体工事として大屋根と多目的ホール棟を17年度に建設する予定。このほか、第2期数沢川改修工事なども実施し、18年度の全工事完了を目指しています。
今回の入札不調を受けて、日立市は計画の大幅な見直しに迫られています。一部市民の間からは、建設の凍結を求める声も上がっています。日立市の新庁舎建設計画凍結を求めている市民団体「日立市の再生を考える市民の会」(山本忠安、高浜正敏共同代表)は、7月4日、3回目となる署名簿提出も同時に行い、「多くの市民の声を無視し、建設を強行することは極めて遺憾」として入札の中止と計画凍結を吉成明市長に申し入れました。この日提出した要望書では、千葉県木更津市と埼玉県秩父市が建設資材や人件費の高騰を理由に新市庁舎の建設延期を決めたことに触れ、「建設強行はリスクを無視したあまりにも無謀な行為」と指摘。「入札を中止し、建設関連の市況が落ち着くまで建設を凍結し計画を見直すべきだ」としています。署名者数は、合計で8285人分となっています。
実際に入札が不調に陥ったことを踏まえれば、建設工事の一定期間凍結もやむを得ない判断だと考えます。今回の市庁舎建設費の財源内訳は、国の震災復興特別交付税が26億円、震災復興の枠組みの一つである被災施設復旧関連債53億円、十王町との合併特例債29億円などとなっています。合計で108億円余りが国からの支援を受けることが出来ます。この震災復興の関連財源及び合併特例債の発行は延長も可能であり、消費増税などのマイナス要因も考慮に入れなくてはいけませんが、3年から5年程度の計画延長を視野に入れる必要があるのではないでしょうか。吉成明市長の決断に期待いたします。