7月19日、20日の両日、井手よしひろ県議は長野県大町市を訪れ、「北アルプス国際芸術祭」を視察調査を行いました。
北アルプス国際芸術祭2017~信濃大町・食とアートの廻廊~は、総合ディレクターに北川フラム氏を迎え、土地固有の生活文化を表現する「食」と、地域の魅力を再発見する「アート」の力によって、大町市がもつ様々な価値を再発見し、地位の魅力を世界に発信することで地域再生のきっかけとなることを目指して開催されました。
開催期間は、6月4日(日)~7月30日(日)までの57日間。実行委員長は牛越徹 (大町市長)。源流エリア、仁科三湖エリア、市街地エリア、東山エリア、ダムエリアの5つのエリアに、36組のアーティストの作品が展示されています。
北川フラム氏が掲げた芸術祭メインテーマ「水、木、土、空。」のもと、統一感のある作品が展開されています。
会場となった大町市は、長野県の北西部、松本平の北に位置します。3000m級の山々が連なる北アルプス山脈の麓に位置し、清冽な雪解け水と澄んだ空気、四季折々の景観に恵まれ、古くは「塩の道」千国街道の宿場町として栄えました。 北アルプス登山の拠点として、また立山黒部アルペンルートの長野県側の玄関口として、多くの観光客で賑わっています。
人口は約2万8000人、面積は565km2、市街地の標高は700m余りで典型的な内陸性の気候です。井手県議が訪れた7月19日は、梅雨明けが発表され、最高気温も34度を記録しました。それでも朝夕は18度以下まで気温が下がり、過ごしやすい気候でした。
近年の少子高齢化、人口減少は深刻で、日本創成会議が発表した消滅可能性都市に上がっています。
市民の勉強会が淵源、5年の歳月を掛け実現へ
20日午前、井手県議は大町市役所を訪問。北アルプス国際芸術祭について、大町市議会勝野富男議長、太田昭司市議、芸術祭を担当する大町市まちづくり交流課の担当者から、芸術際の概要や現在までの状況をヒアリングしました。 太田市議には、その後も作品のご案内をいただきました。
北アルプス国際芸術祭は、2012年から始められた地域有志の勉強会がその淵源です。北川フラム氏や山崎亮氏、玉置泰紀氏などが、芸術による地域おこしの可能性などを、地域住民に熱く語りました。開催にあたっては、反対の声も大きかったと言われています。大町市長もその政治生命をかけて、芸術祭の成功に向けて取り組みました。
人口2万8000人の小さな町で、2億円の事業費を掛けた一大イベントです。行政と市民、そしてアーティストとの熱き思いが凝縮した芸術際であることを実感しました。
開催目的は4つ。1.現代アートの力を借りて、大町市の魅力を国内外に発信する。2.観光誘客により、人々の流動・交流を起こし、地域を交流の場とする。3.市民の参加を、地域づくりに取り組む原動力とする。4.地域消費を拡大し、地位を元気にする手がかりとする。7月17日現在で17万6282人を動員した今回の芸術際は、この4つの目標をほぼ達成できたのではないかと実感しました。
総事業費は約2億万円。内訳は国から6000万円(過疎債)、パスポート・協賛金5800万円、ふるさと納税4000万円、大町市の一般財源6000万円などとなっています。パスポート・協賛金などが当初計画より上回っており、最終的には市の負担を軽減させることができると言います。
市民参加の状況は、ボランティア登録が580名。市外のボランティアが6割を超えています。
今回の視察の目的は、2019年に開催が決定した第2回茨城県北芸術祭に、大町市の取組から何が学べるかということです。
県北芸術祭の開催地の人口規模の10分1程度しかない大町市。事業規模では県北芸術祭の6億6000万円、北アルプス国際芸術祭が2億円と3分の1に達します。いかに集中的に予算が投下されたかをうかがい知ることが出来ます。
チケット販売枚数は、県北芸術祭の2万5692枚に対し、すでに北アルプス国際芸術祭は2万1000枚以上を販売しています。入場客数が77万6000人に対し、多分25万人以上を記録すると推測され、大町市の実行委員会の精力的な取組が際立っていると思います。
地域振興を芸術祭で行おうという“必死さ”を茨城は学ぶべきではないでしょうか。
また、県北芸術祭は芸術と食のコラボも学ぶべきです。地域芸術祭は、出品作品だけの魅力ではなく、地域の食や観光(温泉、風景など)などトータルな取組が必要です。
反面、北アルプス国際芸術祭に関しては芸術祭の運営面で、改善すべきところが多くみられます。大町市は、来場者の客層の想定を誤ったようなに思われます。会場を実際に歩いてみて、他の地域芸術祭にみられる若い女性のお客様より、シニア層の来場者が目立ちます。これは、県北芸術祭でも実証されたことです。シニアの方には、会場の高低差や狭さ、駐車場から会場までの遠さなど、多くの課題が残りました。
また、広い地域に点在する会場を見て回るためには、車(レンター、自家用車)は必須でした。会場をピンポイント案内するためには、駐車場の住所またはマップコードを案内地図やガイドブックに表示する必要がありました。次回への改善ポイントになると思います。