本日、2026年2月2日、新座市議会にて開催された防災研修会に、講師として登壇させていただきました。今回は、国立研究開発法人防災科学技術研究所の客員研究員である増田和順さんとご一緒に、「常総水害・能登半島地震 大規模災害の教訓をどう活かすか」というテーマでお話をさせていただきました。島田久仁代議長や並木傑市長をはじめ、市議会議員の皆様、そして市の防災を担う職員の皆様が熱心に耳を傾けてくださり、私自身にとっても大変学びの多い、意義深い時間となりました。
今回の研修を通して、改めて強く感じたのは、「災害の記憶をいかに自分ごととして受け止められるか」が、防災力を高めるうえで極めて重要であるということです。かつて茨城県を襲った常総水害では、堤防の決壊により市の約3分の1が浸水するという、想像を絶する被害が発生しました。その経験から私たちは、「いつ、どこへ、どのように避難するのか」を時系列で整理する「マイ・タイムライン」の重要性を痛感しました。これは単なる書類づくりではなく、家族構成や健康状態、介護の有無などに応じて、常に見直し続ける“生きた計画”であることが大切です。

新座市においても、避難行動に支援を必要とする方は7,000人を超えています。名簿を整備するだけでは十分とは言えません。地域の中で、「誰が、誰を、どのように支えるのか」を日頃から話し合い、顔の見える関係を築いておくことこそが、いざという時に命を守る力になります。共助の輪を平時から育てていくことが、最大の防災対策であると、改めて実感しました。
また、避難所の環境整備についても重要なテーマとして共有しました。避難所は、単に雨風をしのぐ場所ではなく、被災された方々の健康と尊厳を守る生活の場でなければなりません。その基本となるのが、「TKB」、すなわちトイレ・キッチン・ベッドの充実です。国際的なスフィア基準では、居住空間の確保や、女性の負担を軽減するためのトイレ配置など、具体的な目安が示されています。近年では、平時はイベントなどで活用し、災害時にはすぐに現場に駆けつける「トイレカー」や「トイレトレーラー」など、フェーズフリーの設備も注目されています。こうした取り組みは、新座市の安心感をさらに高める大きな力になるはずです。
研修では、増田さんから、自治体防災における意外な落とし穴についてもご指摘いただきました。例えば、防災行政無線は長年頼りにされてきましたが、近年の高気密住宅では雨音などにかき消され、聞こえにくいケースが増えています。また、東日本大震災で大きな効果を上げた「黄色い旗」運動についてもお話がありました。玄関先に旗を掲げることで安否を確認できるこの仕組みが、能登半島地震では十分に活かされず、孤立死を防げなかった現実があります。制度や仕組みがあっても、それが地域に根づいていなければ、命を守る力にはなりません。
さらに、担当者の異動などにより、過去の教訓が書類の中に埋もれてしまう危険性についても、強く意識する必要があります。形式的な引き継ぎだけではなく、石碑や語り部、研修会などを通じて、記憶を地域全体で共有し続けることが重要です。防災とは、一度整えれば終わりではなく、世代を超えて受け継いでいく営みなのだと、改めて感じました。
仮設住宅のあり方についても、近年は大きく進化しています。従来のプレハブ型に加え、工場で生産して運搬・設置する「ムービングハウス」は、断熱性や防音性に優れ、設置までのスピードも非常に速いのが特徴です。災害発生後の半年間をどのように過ごせるかが、その後の復興や生活再建を大きく左右します。住環境の質を高めることは、被災者の心身の回復を支える重要な要素なのです。
研修の最後に、私の好きな言葉を皆様にお伝えしました。「嵐を止めることはできないけれど、帆の操り方を学ぶことはできる」という言葉です。自然災害という大きな力を完全に防ぐことはできません。しかし、過去の教訓を羅針盤として備えを重ねることで、被害を最小限に抑えることは可能です。新座市の皆様が、これからも安全に、そして安心して暮らし続けられるよう、共に学び、考え続けていければと願っています。
改めまして、本日ご参加いただいた皆様に心より感謝申し上げます。誠にありがとうございました。今後、「マイ・タイムライン」の具体的な作り方や、最新の防災設備について詳しく知りたい方がいらっしゃいましたら、どうぞお気軽にお声がけください。今回の講演内容をさらに具体化し、新座市の地域特性に合わせた「個別避難計画ワークショップ」として展開していくことも可能です。次の一歩に向けて、引き続きお手伝いできれば幸いです。





