海岸資源を活用した新たな地域活性化プランの提案
日立市の海岸は、外洋(太平洋)に面し、年間を通し比較的温暖な気候のため、サーフィンの愛好家が数多く訪れています。その実数は具体的な統計が存在しないものの、年間6万人は優に超すと推計されます。
この6月に懸案であった河原子北浜一体整備事業(河原子北浜公園)が完成し、河原子海岸は、県内でもトップクラスのサーフスポットに生まれ変わることになりました。
この河原子北浜公園のハードウェアを活かし、新たな日立市活性化の起爆剤として活用するために、サーフィンによる地域の活性化策「ひたちサーフツーリズム構想」を提案するものです。
製造業を中心とした第2次産業で成り立ってきた日立市の経済は、近年の産業構造や競争環境の変化により、急速にその活力を失っています。その影響を受けて、商店街の衰退、若年層の雇用喪失は深刻な問題であるといえます。
一方、日立市は42万5千人(平成16年度:日立市の統計より)に上る海水浴客が訪れるすばらしい海岸資源を有しています。さらに、推定年間6万人ともいわれるサーフィン愛好者が通年で日立に訪れています。
サーフィン愛好家の数は、今後、安定して増加していくものと想定されます。また、北関東自動車道の延伸効果により、海なし県である埼玉・栃木・群馬県からより多くのサーファーを誘引することが可能となります。さらに、保温性に優れたウェットスーツの開発により夏だけのスポーツから通年スポーツへと変貌していることから、安定的な交流人口の拡大も期待できるところです。
しかし、こうしたサーフィン愛好者は、日立市では未だ内部経済化しておらず、その経済的ポテンシャルを市全体として活かしきれている状況ではありません。
こうした現状から、日立市では、全国に誇るべき観光資源である海岸を活用した経済活性化プランをいち早く策定し、従来の重工業偏重の経済体質からの脱却を進め、雇用喪失による若年層の流出を防止することが急務であると考えられます。そして再び活気ある街、若者文化が根付く街を創りあげるとともに、環境・教育・福祉に関する先進地としての地域アイデンティティを確立していく必要があります。
ここで提案する「ひたちサーフツーリズム」とは、日立市の海岸資源を活用し、マリンレジャー、特にサーフィンを通じた交流人口の増加による地域振興を図り、全国に先駆けて「サーフタウン」としての地域ブランドの確立を目的とするものです。これによって,マリンレジャーに関連する様々なビジネスの創造と雇用回復を目指すだけでなく、海岸資源を活用した教育および福祉プログラムを開発・実施し、日立の新たな市民価値の向上に取り組むものです。
さらには「ひたちサーフツーリズム」の実現によって、自然資源を消費・破壊するのではなく、それらを守り活用することが、地域経済の活性化だけではなく教育・福祉を含めた様々な相乗効果が期待されることを全国に発信し、環境マネジメント地域として海のみならず山や農村などわが国のあらゆる自然資源保全を全国に向けて訴えようとするものです。
経済的波及効果 | 非経済的波及効果 |
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- 河原子北浜公園の管理運営について、地元サーフィン愛好家との協議連携の場を常設する。(平成19年度)
- 河原子海岸でのサーフィンのアマチュア全国大会誘致(日本選手権)を図る。(平成20年度)
- サーフィーの入り込み状況等の実態調査を早急に行う。(平成19~20年度)
- 「ひたちサーフツーリズム」について、具体的な事業計画の策定を図る(平成20年度)
- 「ひたちサーフツーリズム」の具体的な事業を実施し、地域の活性化を図る(平成21~25年度)
「ひたちサーフツーリズム」は市民、特に若者の創造的な行動力と行政との協働によって推進されるべきです。そのために、この推進組織は、サーフィンを愛好する団体(日本サーフィン連盟日立支部)を中心に、観光協会、商工会議所、青年会議所、漁業協同組合と行政が連携した民間団体(NPOなど)が行うことが望ましいと考えます。
この「サーフツーリズム」の先進事例として、福島県南相馬市の「南相馬市サーフツーリズム」が、現在進められています。
この推進母体は、「南相馬市サーフツーリズム推進委員会」で、NPO「ハッピー・アイランド・サーフツーリズム」(理事長:杉山大一郎)らが中心となって運営されています。また、同委員会には、福島大学の奥本英樹助教授がオブザーバーとして加わり、学術的な観点から事業の推進をサポートしています。