2000年4月施行の地方分権一括法で機関委任事務が廃止され、国と地方自治体は「上下」から「対等」関係になったといわれています。
しかし、対等と言われる国と地方との関係は、まだまだ不十分であり、地域主権をめざす地方自治体は、国に対し権限と財源の大幅移譲を求めるています。この分権改革は20年近くも続くテーマでもあり、まだまだ進めなくてはならない大きな課題です。
これに加え、近年は地方自治体の政策決定のあり方が議論の焦点になっています。換言すると、地方自治体の首長と議会の関係、また、議会と住民の関係が、今、厳しく問われています。
このうち、首長と議会の関係は、鹿児島県阿久根市や名古屋市のように全面対決となり、市長リコール(阿久根市=昨年12月)や、市議会解散(名古屋市、阿久根市とも2月。投票は名古屋市が3月13日、阿久根市が4月24日)に至った例もあります。こうした対決一本やりへの評価は、本来の地方自治の姿とは相容れないような気がします。
言うまでもなく地方自治における議会と首長との関係は、国のような議院内閣制ではなく「二元代表制」をとっています。つまり、そこには、与党や野党という考えは本来存在せず、住民の生活向上や地域活性化を目的とした、緊張感あふれる是々非々の議論が必要です。
健全な二元代表制を実現するためには、何よりも議会に対する広範な行政情報の公開が必要です。
その上で、首長は議会における議案等の審議や調査の過程で出された提案を真摯に受けとめて、県政運営に取り組むことが求められています。
他方、議会と住民の関係については、2006年に北海道栗山町が公明党町議の主張を受けて全国初の議会基本条例を実現させるなど、議会主導による地方自治の活性化が各地で動き出していることも見逃してはいけません。
例えば「開かれた議会」をめざし、議員が住民を招いて「出前議会」を開き、地域の意見を聞いたり、議会審議をテレビやインターネットで中継するなどのアイデアが実現しています。また、議員が質問し執行部側が答弁する伝統的な形の審議を、議員同士で話し合う場にすべきとの考えも生まれています。
こうした「開かれた議会」づくりとともに、「議員定数・議員報酬の見直し」問題もあります。どちらも、議員がどこまで改革の主体者になれるかが問われるテーマです。
こうした現状の中、2月12日付けの朝日新聞では「全国自治体議会アンケート」の結果を公表し、その総括に、次のような主張を掲載しました。
議会なんて、いるのか。議員って何をやってんだ――。厳しい「議会たたき」が吹き荒れている。そんなに議会はひどいのか。実態をみるために、「質」と「規模」を調べた。
結論から言えば、議会の「質」は低い。首長が提案した議案をすべて無修正で可決する。
議員みずから政策条例をつくろうとはしない。賛否が割れた議案に対する個々の議員の投票態度も公表しない。
「丸のみ」「無提案」「非公開」。「ダメ議会・三冠王」が全体の3分の1を超す。
こんな「居眠り議会」では、大阪府や名古屋市のような人気者の首長にはとてもかなうまい。
私ども公明党は党の基本的な考え方として「公明党のめざす地方議会改革への提言――地域主権の確立のために」を発表しました。
提言には、(1)「議会基本条例」の制定を推進、(2)議会権能の強化、(3)「見える化」の推進、(4)住民参加を推進、(5)議員定数・議員報酬などの適正化――などが盛り込まれています。
これを受けて、茨城県議会でも私ども茨城県議会公明党は、以下のような議会改革の基本的な考え方を提案したいと思います。(現時点では井手よしひろ県議の私案です。早急に公明党会派で内容を取りまとめたいと思います)
- 議会のチェック機能や政策立案能力の向上を目的として「議会基本条例」の制定をめざします。
- 多くの自治体で県総合計画などの重要な県計画について、議会の議決を求める条例を制定していまが、二元代表制による責任ある県政の運営のためには、こうした条例の検討も必要です。
- 「議会権能の強化」については、緊急事態に対応するため議会や委員会がいつでも開催できるように、原則として議会の通年開催、いわゆる“通年議会”とすることを提案します。あわせて、議会事務局の強化もめざします。
- 本会議を一層活発化するために、質問を「一括質問方式」から対面での「一問一答方式」に変更します。
- 議会での議論の質を向上させるために、議席へのインターネットに接続したパソコンの持ち込みや説明の際のプロジェクターなどの活用を認めます。
- 議会で議員同士の意見交換を行うために「自由討論」の場を創出します。
- 「見える化」の推進については、常任委員会のインターネット中継などの導入、議員個人の議案採決態度の公表など、なお一層の情報公開を進めます。
- 予算審議にあたって、専門家や学識経験者より意見を聞く「県民公聴会制度」の導入、「出前議会」「議会報告会」を通じて住民の声を聞く機会を持つほか、住民が議論に参加できる場づくりも推進します。
- 議員定数や選挙区割りについては、行財政改革の観点や住民の判断などを踏まえ削減や見直しを進める必要があります。国勢調査の結果を受けて、来年12月頃までに、具体的な内容に合意できるよう議論を進めます。
地方自治は、首長と地方議会との両者が「どうすれば地域が良くなるか」を競い合って住民生活の向上をめざす制度に他なりません。議会改革によって、議員の「政策立案能力」「現場力」「発信力」といった議員力の向上をはかり、議会の活性化とともに、住民生活の向上に結び付けることが肝要です。
茨城県議会の改革について、この党の基本方針の下、私ども公明党は、真摯に他会派との話し合いに取り組み、県民の負託に応えてまいりたいと思います。