10月10日、関東・東北豪雨で鬼怒川の堤防が決壊してから1か月。太田昭宏前国交相よりバトンを引き継いだ石井啓一大臣は、大きな被害が出た茨城県常総市を視察し、災害の再発防止に向けて、鬼怒川全体を対象とした堤防の改修を検討するよう指示したことを明らかにしました。井手よしひろ県議ら公明党県議団、地元常総市議団も同行しました。
まず石井大臣は、茨城県常総市の鬼怒川の堤防が決壊した現場に到着すると、出迎えた高杉徹常総市長らと共に、あふれた水が流れ込んだ住宅地に向かって黙とうをささげました。その後、堤防の復旧状況について国交省職員から説明を受けました。
1か月前、堤防が200メートルにわたり決壊したこの場所では、川岸に土砂を積み上げた後、コンクリート製のブロックで覆い、応急的に仮堤防が整備されました。また、河川側には鋼鉄の矢板によって実時が堰き止められており、今後、仮堤防を恒久的な堤防に作り替える工事に備えられています。
一方、濁流が流れ込んだ住宅地に目を向けると、傾いた電柱や押し流された家屋など、被災した当時の光景とほとんど変わっていない現状が広がっています。目の前を走っていた県道は濁流によって寸断され、地盤の土は大規模に削られたままです。水害の爪痕が今も生々しく残されています。
地元の区長・渡辺さんは石井国交相に対し「何一つ変わってないですよ。この1か月間、行政は何をしてたんだってことですよ。一刻も早く県道を仮復旧させ、流された土地を元に戻してもらいたい」と、現状を切々と訴えました。
その後、石井大臣の一行は、JA常総ひかりのカントリーエレベーターを視察しました。橋本昌県知事も合流し、JAいばらき中央会の加倉井豊邦らから被害状況の説明を受けました。今回の豪雨では114億円以上の農林水産業での被害が見込まれており、特に収穫後の米が農業共済の適用にならないことや飼料用米の補償単価が低い問題、農業用機械の被害補償の問題など、多くの課題があります。
次に、今日から全線で運転が再開された関東鉄道常総線水海道駅を視察しました。常総線は、水海道~下妻駅間(18.6キロ)で始発から運行を再開し、1か月ぶりに全線開通した。常総線は取手~下館駅間(51.1キロ)が不通となり、一部区間ずつ運行を再開してきました。この日の開通区間は応急復旧の位置づけで、当面、時速を約40キロに落として運転し、本数も通常の3割程度となっています。
続いて、今も200人余りが避難生活を余儀なくされている青少年の研修施設「あすなろの里」を訪れ、避難している住民の声を直接聴取しました。
80代の女性が「家財道具が流されてしまい、もとの生活に戻れない。一人暮らしなので、家がどうなっているのかも分からない。どこから手をつけて良いのかも分からない」と訴えたのに対し、石井大臣は「生活の再建に向けて取り組みます」と答えました。
石井大臣は視察のあと、記者団の取材に答え「防災や減災の対策の必要性を改めて痛感した。鬼怒川については、緊急かつ集中的に改修を行うよう指示した」と述べました。さらに、『河川激甚災害対策特別緊急事業』を活用して、決壊した場所だけでなく、鬼怒川全体を対象とした堤防の改修を検討するよう指示したことを明らかにしました。
国土交通省によると、災害の再発防止に向け、5年ほどかけて、堤防を従来より高くしたり、堤防のない場所に堤防を造ったりするなどの対策を進めることにしており、今後具体的な計画の策定や予算の確保を進めます。