地震災害や集中豪雨で河川の護岸がいくつも崩れたりのに、復旧工事が進まない―。こうした事態が今、全国の市町村で顕在化しています。自治体の緊縮財政や市町村合併による職員数削減などの影響を受け、工事を担当する土木関係職員が減少傾向にあるからです。実際、町の約6割は職員数が5人に満たず、村の約5割はいないという状況です。
被災時の市町村には、河川や道路などの状況調査と応急措置をはじめ、被災地点の測量、国に申請する復旧事業費の査定(災害査定)などを迅速に処理していくことが求められますが、十分な人員とは言えません。災害大国である日本にとって深刻な課題の一つです。
そこで国土交通省は、昨年の関東・東北豪雨や今年4月の熊本地震を踏まえ、近い将来に予想される南海トラフ地震などの大規模災害を想定し、被災市町村への支援策を協議する有識者懇談会を設置し、7月下旬に初会合を開催しました。国の支援のあり方などについて、年内に中間取りまとめをする方針です。市町村側の期待も大きく、議論の中身を注視していきたいと思います。
論点の一つとして、国交省職員による緊急災害対策派遣隊の活用促進が挙げられます。自治体に代わり被害状況の調査などを行う派遣隊は、熊本地震でも全国の地方整備局などから現地入りし、短期間で激甚災害の指定を受けることに貢献しました。
ただ、派遣隊の存在や活動内容が市町村側に浸透していない状況も明らかになっています。周知を徹底することで、効果的な運用が期待できます。
また、災害査定の簡素化や市町村職員の研修の充実も、必要ではないでしょうか。市町村単独では準備・管理が難しい衛星通信車などについては、国からの円滑な提供が可能になれば、現地情報を素早く集める上で非常に役に立ちます。
市町村が独自に地元の土木関係業者と災害協定を結び、災害時の迅速な対応に協力してもらう試みも重要です。こうした多様な施策を駆使し、職員不足を補う必要があります。
茨城県では総務、福祉系のタスクフォース創設を検討
井手よしひろ県議ら茨城県議会公明党では、茨城県内に災害対応の総務系のタスクフォース、福祉系のタスクフォースの創設を提案しています。
災害復興を担う現業系の職員の不足も深刻ですが、発災直後にはり災証明書を始めとする様々な被災住民からの相談、申請などに対応する職員も絶対的に不足します。
それを県の職員、県内市町村の自治体職員、でカバーしようという考え方です。そのためには、災害対応の様々なシステムを市町村ごとに整合性を持たせ、事前に充分な打ち合わせを行っておく必要があります。さらに、職員は一定期間で人事異動がありますが、災害対応に習熟した職員は緊急時に災害現場に派遣するなどのフレキシブルな体制を構築する必要があります。
こうした仕組みを“タスクフォース”として組織化していきたいと考えています。