「関東・東北豪雨」で鬼怒川の堤防が決壊して、大きな被害が発生してから9月10日でまる一年が経過しました。公明党の石井啓一国土交通大国は、常総市を訪れ、新たに造られた堤防で義理者に祈りをささげたあと、復旧工事の進捗状況などについて確認しました。
常総市の上三坂地域では、関東・東北豪雨で一人が亡くなり、住宅8棟が流されました。石井大臣はボランティアの皆さんが設置した献花台に、花を手向けました。このあと、国定省の担当者から、新らたに造られた堤防について、説明を受けました。三坂町の堤防は5月末、長さ約200メートルにわたる本堤防が完成しました。国は2020年度までに約600億円を投じて、鬼怒川周辺の緊急整備を進めています。
県内では常総市で2人、境町で1人の計3人が亡くなりました。7月22日現在、水害による住宅被害は全壊54件(うち常総市53件)、大規模半壊1785件(1581件)、半壊3720件(3492件)、床上浸水187件(150件)などとなっています。住宅の再建ができず、常総市民79世帯197人(8月26日現在)が、県や市が提供する公営住宅などで仮住まいを続けています。
経済被害は農林水産業が121億円、中小企業が201億円に上っています。県中小企業課によると、水害による被災を原因として廃業した業者は少なくとも常総市43件、境町1件、結城市1件の計45件です。常総市の人口(約6万2000人)は豪雨後約800人減少しました。
視察後、石井大臣は記者団に対して「堤防の整備などの復旧が着実に進んでいる印象を受けましたが、復旧、復興は道半ばだと思います。今後も様々な取り組みを進めていきます」と述べました。その上で「これからも堤防の整備というハード面だけではなく、住民が迅速に避難することができる広域の避難体制
の整備などのソフト面も組み合わせて、住民の安全安心を守りたいと決意しています。さらに、関東・東北豪雨の教訓を国が管理する河川だけではなく、県にも広げていきたい」など今後、広域避難に向けた整備を進めていく考えを示しました。
常総水害が残した教訓をハード面、ソフト面で活かす!
常総市の水害は、地方自治体の危機管理に対して多くの教訓を残しました。
特に堤防に代表されるハード面の整備を計画的に進める必要性を再確認させました。公共事業が無駄である、という行きすぎた議論から、必要な事業を着実に進めていくことが重要です。
その意味でいち早く国交省が策定した「鬼怒川緊急プロジェクト」と、その裏付けとして5年間で600億円の集中投資は時宜にかなった施策です。
その上で、石井大臣が指摘しているように県管理の中小河川整備も連係して進めなくてはなりません。常総市の場合は、鬼怒川に支流である八間堀川の溢水や樋管や水路から逆流した雨水が被害を拡大しました。
国管理の河川の堤防の回収率60%を越えていますが。県管理河川は4割台にとどまっています。水害対策には、県の水防予算をどのように確保するかも大事な視点です。と同時に水門の閉鎖管理などを見直し、水防団(消防団)などの安全を守りながら管理を有効に行うためのシステムづくりも喫緊の課題です。
一方ソフト面の対策では、今回の常総水害を教訓に、国と県内自治体が本格的に導入した「タイムラインの活用」と「情報の共有、伝達体制の整備」が重
要です。
国交省は、茨城県内の10市町において、避難勧告の発令に着目したタイムライン(平成28年5月版)を作成し、5月31日に公表しました。
今回タイムラインが制作された茨城県内の10市町。結城市(鬼怒川)、龍ケ崎市(小貝川)、下妻市(鬼怒川、小貝川)、常総市(鬼怒川、小貝川)、取手市(小貝川)、つくば市(小貝川)、守谷市(鬼怒川、小貝川)、筑西市(鬼怒川、小貝川)、つくばみらい市(鬼怒川、小貝川)、八千代町(鬼怒川)です。
”タイムライン” とは、「いつ」、「誰が」、「何をするのか」を、あらかじめ時系列で整理した防災行動計画です。国、地方公共団体、企業、住民等が連携してタイムラインを策定することにより、災害時に連携した対応を行うことができます。このタイムラインにもとに具体的な訓練を繰り迎える必要があります。
必要なソフト対策の第2は、防災情報の共有と発信です。
常総市では、鬼怒川が決壊する前に上三坂地区など、避難勧告が出されなかったことが最大の問題点として指摘されています。
避難情報を、早く住民に伝えるために、国は携帯電話へのメールによる洪水情報の発信を、まず鬼怒川沿岸住民からスタートさせました。このような仕組みづくりは重要です。
しかし、国や地方自治体からの防災情報は、いわゆる防災弱者といわれるお年寄りや障がい者の方々へ、どのように伝えていくかという課題は、解決されていません。地域の自主防災組織などを活性化させる取組みも早急に行うことが必要です。