7月12日、井手よしひろ県議ら県議会防災環境商工委員会のメンバーは、徳島県上勝町の”葉っぱのビジネス”・契約農家に出荷情報を提供する第三セクター「株式会社いろどり」を現地調査しました。井手県議は、個人調査で2008年の12月に「いろどり」を一度調査しており、今回の調査では、この間9年の歳月が流れの中で、何が変わり、何が変わらなかったのかを明確にしたいと考えました。
葉っぱビジネスは、和食に添える葉や花などの「つまもの」を山林で採取して商品化するビジネスモデルです。今から30年以上前の1986年に、当時農協の営農指導員であった横石知二氏は、生産者4戸の協力を得て事業をスタート。1999年に町の第三セクター会社「いろどり」を設立されました。横石社長の陣頭指揮の下、今では約200戸の生産者が320種類以上の葉っぱを収穫し、パソコンやタブレットを駆使して生産を管理、京阪神や首都圏に出荷しています。売上高は、1994年度に初めて年間1億円の大台を突破。今では年間売上高2億6000万円にも及ぶ、まちの基幹産業として成長しましあ。生産者の多くが高齢者で、年収1000万円を超す人もいます。
それまで、つまものは料亭の板前らが独自のルートで入手していました。葉っぱなら高齢者でも楽に取り扱え、山林にたくさん眠っています。それを顧客が望む時期に、必要な量だけ提供する体制を整えたことで、全く新しいビジネスモデルを構築することができたのです。
彩農家の草分けの一人・西蔭幸代さんから現場の声を伺うこともできました。
人を育てるという新たな使命
上勝町は徳島県の中央部、四国山地の中にあります。もともと林業が盛んで、ピーク時の1955年に約6300人の人口を抱えていました。
しかし、高度経済成長期に入り、林業に陰りが見られるようになると、若者の町外流出が相次ぎ、人口が急激に減少しました。その後町の経済を支えたミカン栽培も、冷害で壊滅的打撃を受け、高齢化と人口減少に歯止めがかかりませんでした。
今年(2017年)7月1日現在の人口は1598人、世帯数は803世帯と、町としては四国で最も小さい自治体となってしまいました。2040年には880人まで減少すると予想されています。高齢化も急速に進行し、65歳以上の高齢者が過半数を占める限界自治体です。
こうした上勝町にあって、”葉っぱのビジネス”は起死回生の地域振興策でした。しかし、いろどりが7年前にアンケートをとったところ、「10年以内に葉っぱの製造農家が半減する」という結果が得られました。どんなに素晴らしいビジネスモデルであっても、そのビジネスを行う人がいなくなってしまえば、意味がありません。そこで、考え出されたのが”インターンの受け入れ”です。2011年から具体的に受け入れを介しました。その知名度から、参加者を募ったところ、定員50人に1500人以上の応募があったこともあります。上勝町に移住したり、町内で起業する若者も増えてきました。40名近くの若者が上勝町に新たに住むようになりました。(上勝町インターンシップ:http://www.irodori.co.jp/asp/nwsitem.asp?nw_id=9346)
いろどりは、つまものを採集して販売している会社と勘違いしている人もいるようです、実はそうではありません。農家に、迅速に正確に販売場を提供する販売コンサルティング会社です。葉っぱ農家の売り上げの5%を情報料として受け取っています。さらには、上勝町での新規起業のアドバイスや人材育成、講演や研修の受け入れなどの業務も行っています。
今回の現地調査でみた葉っぱのビジネスは、単に高齢者が所得をあげるというモデルから、地域に新たな人の流れを作るという、まさに第2章の活動に入っていると実感しました。
いろどり代表取締役横石知二氏のインタビュー