3月12日に開催された県議会文教警察委員会において、県議会公明党の村本修司議員は、いじめの撲滅について質問しました。村本議員は、県内におけるいじめの認知件数が依然として減少していないことに言及し、公立・私立の学校におけるいじめの対応について取り上げました。
県教育委員会は、いじめの対応については公立・私立を問わず法に基づいて行われるため、基本的な対応の違いはないことが説明しました。その上で、私立学校においては、独自の教育方針による運営のため、学校側の対応が公立と異なる場合があると答えました。
これに対し村本議員は、私立学校では公立学校に比べて行政の指導が及びにくい点を懸念し、早期認知や学校側の対応が不十分であった場合に問題が表面化しづらい可能性があると指摘。県の適切な調査や指導の重要性を強調しました。
さらに、村本議員は、いじめを防ぐための「予防教育プログラム(CAP)」の導入を提案しました。 CAPは、子どもたちがいじめや暴力から自分の心と体を守ることを学ぶプログラムで、ロールプレイングやディスカッションを通じて、いじめに対する認識を深めることができると説明しました。特に、いじめの加害者が自らの行為を「ただのふざけ合い」と認識し、いじめとは認識していないことが問題であるとし、クラス全員がいじめを模擬体験することで、いじめを客観視し、抑止につながる可能性を訴えました。
村本議員は、いじめ撲滅への取り組みは継続的な課題であり、教育現場において効果的な方法を積極的に取り入れていくことが重要であると述べ、引き続き議論を深めていく考えを示しました。
CAPプログラムの意義と広がり
いじめ、虐待、体罰、誘拐、痴漢、そして性暴力。こうした問題が、今もなお多くの子どもたちの心と身体を脅かしています。私たち大人は、こうした暴力から子どもを守る責任を果たしているでしょうか。実は、子どもたち自身にも「自分を守る力」があり、その力を信じ、引き出し、育てるプログラムが全国各地で実践されています。それが「CAP(キャップ)プログラム」です。
CAPとは、「Child Assault Prevention(子どもへの暴力防止)」の略で、子どもたちが自分の心と身体を守るための力を身につける、予防教育の取り組みです。このプログラムの大きな特長は、ただ危険を教えるのではなく、子ども自身の人権や自己決定の力を尊重し、エンパワメント(内なる力の開花)を促すことにあります。
CAPの基本となる考え方には、三つの柱があります。まず第一に「子どもの権利」です。CAPでは、すべての子どもが「安心」「自信」「自由」の3つの権利を持っていることを伝えます。暴力はその権利を侵害するものであり、子ども自身が「自分には大切な権利がある」と気づくことが、自らを守る第一歩になるのです。
第二の柱は「エンパワメント」です。これは、子どもたちが本来持っている問題解決力を信じ、その力を発揮できるように働きかける姿勢のことです。CAPでは、子どもを「守られるだけの存在」ではなく、自ら行動できる存在としてとらえます。例えば、ロールプレイ(役割劇)を通じて、「NO(いやと言う)」「GO(その場を離れる)」「TELL(信頼できる大人に話す)」という3つの行動を学び、自分の身を守る具体的な力を身につけます。
そして第三の柱が「コミュニティー」、つまり家庭・学校・地域が一体となって子どもを支えるという考え方です。CAPでは、子どもに直接ワークショップを行う前に、保護者や教職員を対象とした「おとなワークショップ」を実施し、暴力の実態や人権の尊重、そして子どもに寄り添う方法について共通理解を深めます。さらに、実際の子どもワークショップは、地域の市民活動として結成されたCAPグループに所属する専門家が、学校の授業時間中に行います。このように、子どもが孤立しない環境を整え、地域ぐるみでの暴力防止の文化を育てていくのがCAPの実践なのです。
「自分には守るべき権利がある」と知ったとき、子どもたちは不思議なほどしっかりと自分の気持ちを伝えられるようになります。私たち大人は、その力を信じ、支え、育むことが求められています。CAPプログラムは、その実現に向けた大きな一歩なのです。
これからの時代を生きるすべての子どもたちが、安心して、自信を持って、そして自由に生きていける社会をつくるために。CAPの輪がさらに広がっていくことを、心から願っています。