
財政の硬直化が深刻な課題となっている現在、多くの自治体では「人件費の見直し」が喫緊のテーマとなっています。特に、政策判断や組織運営の中核を担う市町村長や副市町村長などの「特別職の給与」は、単なる支出項目ではなく、その自治体の行政運営に対する価値観や戦略性を映し出す鏡でもあります。
県全体では、総人件費約2027億円のうち、特別職の給与は15億円(約0.75%)にとどまっています。割合としては小さいものの、ここに込められた行政の考え方は見逃せません。
日立市では、特別職の給与は6,889万円と県内上位の水準です。人口1人当たり人件費も8万1005円と最も高く、これは多様な行政サービスの維持とともに、幹部職への厚い処遇が背景にあると考えられます。
副市町村長は、市町村長を補佐し、行政全体のマネジメントを担う重要なポストであり、その位置づけは、かつての「助役」制度を発展的に再構築するかたちで平成19年に設けられました。地方制度調査会の答申を受けて制度化されたこの役職は、トップマネジメント機能の強化と、政策企画への関与をより明確にすることを目的としています。
この制度では、市町村ごとに副市町村長の定数を条例で定めることができるため、自治体の規模や行政需要に応じて柔軟な運用が可能となっています。茨城県内においては、県庁所在地である水戸市が定数3名と最多であり、日立市、土浦市、古河市、取手市、つくば市、東海村が定数2名、それ以外の市町村は1名とされています。
しかしながら、実際には定数が設定されていても、欠員状態となっている自治体も少なくありません。たとえば、2024年度時点で副市町村長に欠員があるのは、水戸市、土浦市、鹿嶋市、常陸大宮市、東海村、河内町、美浦村、利根町などとなっています。
近年、特筆すべき動きとしては、茨城県庁の退職者が副市町村長として県内の自治体に起用されるケースが増えていることです。2024年度は、土浦市や牛久市、行方市をはじめとした23市町で県職員OBが副市町村長に就任しており、これは県内全体の半数を超える規模です。背景には、豊富な行政経験を持つ県職員を、地元行政における政策立案や対外調整のキーマンとして期待する自治体側の意向があります。
日立市では、一時期県から現職の職員を副市長に迎えた時期がありましたが、現在は市職員の生え抜きの副市長2名が就任しています。
