

義務教育の学級定員は、40人というのが日本の標準であり、法律で規定されている人数です。
こうした状況の中、茨城県総和町は、中学校の少人数学級を目指した取り組みが行われています。当初、同町の菅谷町長は、28人学級を実現し、新たに必要になる非常勤講師39人を独自に採用し、給与(約1億2000万円)は町が負担する事を発表しました。しかし、法の壁を突破できず、チーム・ティーチング方式で、少人数学級を実現することになりました。
「学級編成及び教職員定数標準法」に規定する学級編成標準(40人学級)は本来、教職員給与の半額を国庫負担、残りを都道府県が負担する際の基礎となる教職員定数算定基準ですが、認可権を持つ都道府県は厳格にこの標準を適用し、40人までは1学級という措置が、全国で取られてます。
市町村独自の少人数学級への取り組みとしては、長野県小海町などの例が有名です。小海町では1985年から、1学級40人未満でも分割して2学級を編成してきました。その分の人件費は、全額町が負担しています。98年度は36人、38人の学級を2つに分割する事を県の教育委員会に求めましたが、県教委に拒否され、1学級を複数の教員で指導するチーム・ティーチング方式が採用されました。
こうした現状を見ると、現行の学級編成は、余りにも杓子定規すぎるように感じられます。教育の機会均等は大切ですが、市町村の裁量での学級定員の変更は、ある程度許されるべきだと思います。現に、98年に発表された中教審の答申でも、この方向性は容認されています。
アメリカでは、小学校低学年を18人学級にする計画を示し、欧州各国も一学級の人数を減らす方向に動いているところが多いと聞いています。順位を競う教育から個性を尊重する教育への転換を図るうえで、少人数学級の実現は、大きな支えになると思われます。
中央教育審議会は98年9月、都道府県が学級定員の標準を下回る人数の学級編成を独自にできるようにすること、都道府県による認可制を届け出制などに改めることを求めた具体的改善策を策定しました。また非常勤講師の報酬についても、国が負担できるようにする法改正も提言しています。
しかし、中教審の提言でも、40人未満の少人数学級が可能になるのは、都道府県単位でのみということです。市町村の独自の判断で少人数学級に取り組みたいという自治体に小人数学級の実現を認めるべきだと考えます。
市町村長の政策判断で少人数学級など教育条件の改善に予算を重点的に配分する選択はありうるし、こうした試みは本当の意味での地方分権に他ならないと思います。
しかしその財政的負担はあまりに大きすぎます。危機的な状況にある地方自治体にとって、毎年恒常的な出費となる教育費(教師の人件費)に多くの予算をかけることは、慎重な話し合いと、勇気ある決断が必要となります。
更に、現行制度の中で市町村で採用された教職員と、県が採用する教職員との待遇面や人材育成の体制など、すり合わせをしなくてはならないことが数多くあります。
教育という失敗が許されない重要な施策であるが故に、その導入には時間をかけた論議が不可欠です。
総和町の少人数学級への挑戦は大きく評価できると思います。ただ、その実現の経緯を見ると、町の考え方は余りにも思いつきの発想が多すぎるような気がして仕方がありません。
県教委との何の話し合いもなく、少人数学級の提案が突然行われたのはどうしてでしょうか?なぜ、中学校の少人数教育なのかも、小学校ではいけなかったのでしょうか?その教科も、議会対策だけで二転三転しています。町の教育関係者に確たる教育のビジョンがあったのかとさえ疑いたくなる場面もあります。
最近、町長系の後援会組織から町内の家庭にチラシが配布されました。そのチラシには、このチームティーチングの提案に、議会で反対した議員の名前が明記されているという異例のチラシです。
総和町の町長を始め教育関係者の一連の行動が、教育の改革との高邁な理想の追求であったのか、2000年秋に行われる町長選挙へのパフォーマンスであったのか、疑問の声がわき上がっていることも事実です。
実現の経緯はともかく、教育の現場での成果は大いに注目していきたいと思います。
このページは、茨城県議会井手よしひろの公式ホームページのアーカイブ(記録保管庫)の一部です。すでに最終更新から10年以上経過しており、現在の社会状況などと内容が一致しない場合があるかもしれません。その点をご了解下さい。 |