政府は少子化対策の一環として、入院を含めた出産費用全額を国が負担する「出産無料化」制度導入の検討に着手しました。
猪口邦子少子化担当大臣は、1月13日午前の記者会見で、出産費用全額を国が負担する出産無料化の構想について「『フリーバース』と呼び、『誕生はただ』という考え方だ。広く国民の意見を聞きながら、検討していきたい」と述べ、前向きに検討する考えを示しました。(読売新聞2006/1/13付けに記事より引用)
『フリーバース』構想は、若年夫婦などの経済負担を軽減することで、少子化に歯止めをかけるのが目的です。6月に閣議決定する「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」(骨太の方針)に盛り込むことが検討されています。
政府の少子化対策は、出産や育児などの経済的負担の軽減と働く女性が出産後も社会復帰しやすい環境作り―の2点が大きな柱となっています。出産無料化は、児童手当の充実などと並んで、経済的負担軽減の目玉というべきものです。
現在、出産への支援は、母親か配偶者が加入する健康保険組合など公的医療保険から、「出産育児一時金」として30万円が支給されています。公明党はマニフェストで、出産一時金を50万に拡充することを訴えていました。こうした声を受けて、政府は、一時金を今年10月から5万円増額して35万円とする方針を決め、通常国会に医療制度改革関連法案として健康保険法などの改正案を提出します。
厚生労働省の2002年の調査では、旧国立病院に入院して出産した場合、出産費用は平均31万7000円かかるとされています。一方、03年に民間の情報調査会社「リクルート」が行った調査によれば、出産にかかる費用は、入院・分娩費に約39万円、出産準備品購入費が約15万円、その他約13万円など、総額約67万円にのぼっています。ちなみに「All About Japan」で紹介されている具体例では、医療機関への支払いが51万5760円となっています。
出産費の無料化は、政府の少子化に対する積極的な姿勢を明示する具体的な施策として期待されます。
参考:【実録☆妊娠・出産でかかるお金】ユーコさんの妊娠・出産費用(All About Japan)
13日午前の記者会見で「出産無料化」に積極的な発言をした猪口大臣が、午後には「具体的な考え方が煮詰まった段階では全くない」と発言を修正しました。
多大な予算の投入が必要な少子化対策。すぐに実現できる内容ではないと思いますので、これにめげずに政府内の方向性を確実にしてもらいたいと思います。
ガンバレ猪口と多くの国民は応援していると思います。
猪口氏、「出産無料化」朝令暮改 混乱招き発言修正
朝日新聞(2006年01月13日)
少子化対策の一環として出産費用を国などが全額負担する支援策について、猪口少子化担当相は13日、「広く検討することは視野に入る」と発言し、前向きな姿勢を示した。その後、政府内からは打ち消す発言が相次いだ。出産育児一時金の支給増額を盛った来年度予算案が昨年末に決まった直後の新規施策の検討は難しく、安倍官房長官も会見で「猪口大臣が精力的に全国を回っておられて、その中で要望が強かったということだ」と火消しにやっきだった。
猪口氏は同日午前の閣議後の会見で、「方向性を決定したことはない」としながらも「(出産無料化は)着任以来強く寄せられている意見の一つ」として、積極的な姿勢を示した。
しかし、政府は、医療制度改革に伴って出産育児一時金を30万から35万円に引き上げることを、20日開幕の通常国会に提出する来年度予算案に盛っている。川崎厚生労働相も会見で「いかにも今の予算に直接関係してそうな議論も出ており、明確に切り分けないといけない」とくぎを刺した。
午後に入って、首相官邸で安倍氏と会った猪口氏は記者団に「具体的な考え方が煮詰まった段階では全くない」と発言を修正。その後開かれた少子化社会対策推進会議の初会合でも、訪問先の県知事などから出た意見として紹介するにとどめた。