北朝鮮は5月25日、2度目となる核実験を行いました。核兵器保有についてはNPT(核拡散防止条約)によって定められ厳しく規制されていますが、条約に加盟しない国に対しては有効な手段がとれていないのが現状です。今回の北朝鮮の実験に対して有効な制裁ができるのか、国際社会の結束が求められています。
核保有のルールを定めたNPT
核兵器の保有に関するルールはNPT(核拡散防止条約)によって定められています。 NPTは、核の保有を制限するために1970年に発効した条約で、現在190カ国が加盟しています。この条約で核の保有が認められている国はアメリカ、ロシア、フランス、イギリス、中国の5カ国のみです。実際はこの他に核兵器を保有している国はインド、パキスタンの2カ国、そして北朝鮮、保有が疑われる国としてイスラエルがあります。
インド、パキスタンについては、NPT(核拡散防止条約)に入っていないため、この条約で規制することができません。国連安保理は1998年にインドとパキスタンに対して制裁決議を下し、経済制裁を実施しましたが、両国に核を放棄させることはできませんでした。
重大な危機もあり得る核の拡散
米国のオバマ大統領は5月25日、ホワイトハウスから声明を行い、「北朝鮮の行動は東アジアの人々を危険にさらす」と、核実験の強行を非難しました。
この背景には、北朝鮮が核物質を他国に売り渡すこともあり得るという懸念があります。事実、北朝鮮はイランを含む複数の中東諸国へ弾道ミサイル売却したり、シリアの原子炉建設を支援したりという拡散活動の過去があります。
今後、北朝鮮が経済的に追いつめられた場合、核兵器や核物質を外国に売却する可能性はゼロではないというのが米国筋の見方です。万一、北朝鮮が売却した核兵器が第三国などを経由してテロ組織などの手に渡ることがあったら、世界は大変な危機に直面することになってしまいます。
充分ではなかった2006年の決議
北朝鮮が最初に核実験を行ったのは2006年10月です。このとき安保理は決議1718(北朝鮮核実験実施に対する国連制裁決議)を採択しましたが、充分な効果は得られませんでした。
この結果、北朝鮮にテポドンミサイルの発射実験や第2の核実験を実行させてしまうことになりました。
現在、国連ではアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の5つの常任理事国に加えて日本、韓国を加えた7カ国で大使級の非公式会合が行われています。
安保理の対応には、決議、議長声明、プレス声明の3段階がありますが、4月のミサイル発射(北朝鮮は人工衛星と主張)の際は決議には至らず議長声明で終わっていました。 今回は一番重い決議を出すということで安保理は一致しているといわれていますが、問題はどの程度の内容になるかということです。
国際社会の結束で核拡散を防止
予想されるのは北朝鮮貨物検査の義務化、北朝鮮との銀行取引を禁止する金融制裁などですが、これまで北朝鮮に同情的だった中国とロシアが、どの程度の制裁を容認するのかが焦点となるでしょう。
北朝鮮の核実験に対する反応ですが、中国は核実験に断固反対するという立場を取ってはいるものの、同時に日米には冷静な対応を求めています。一方ロシアは今回の核実験に対して強く対応しなければならないとしており、国連憲章第7章に基づく強制力を持たせるべきとしています。
これは安保理の決議に武力を持った強制力を持たせるというもので、ロシアは今回の事態に対して厳しくあたると考えてよいでしょう。この結果、焦点は中国の対応となり、中国の出方が今回の安保理決議の実効性を決める鍵になりそうな情勢です。
これ以上の核の拡散を防ぐためには、中国をも巻き込んだ包囲網をいかに構築するかということです。北朝鮮の瀬戸際外交に揺さぶられないよう、周辺国の結束が重要な鍵になるでしょう。