8月4日、牛久市の市民団体・緑のスクラム(牛久市の福祉と健康を考える市民の会)が主催した「健康フォーラムinうしく」が開催されました。ピロリ菌ABCリスク検査の、茨城県内自治体での実施を訴える伊藤史子先生(医学博士/NPO法人日本胃がん予知・診断・治療研究機構理事/元目黒区健康推進部長)の?講演は、具体的で大変説得力があるものでした。
開催地の牛久市長池辺勝幸、茨城県保健予防課入江ふじ子課長、衆議院議員古屋範子議員も出席され、それぞれの立場から胃がんを中心とするがん対策について、ご挨拶をうかがいました。
ピロリ菌ABCリスク検査とは、血液検査でピロリ菌抗体と胃の萎縮度を測るペプシノゲンを測定し、その組み合わせから胃がん発症のリスクを明らかにするものです。その結果をもって、リスクのある人は専門医の内視鏡による精密検査を行うととで、対象を絞った効率的な胃がん検診を行う事が出来ます。また、ピロリ菌が発見された場合は、早期に除菌し胃がんになる危険性を大きく低減させることが出来ます。
ピロリ菌が胃がんの原因であることを、ようやく国も認め始めました。胃がん検診は、長年、バリウムを飲みレントゲン撮影を行う方法で行われてきました。しかし、この検査法は煩わしさと苦痛を伴い、胃がんの発見率もあまり高いとは言えません。井手県議ら茨城県議会公明党では、この胃がん検診と別に、特定健診いわゆるメタボ検診にピロリ菌ABCリスク検査を行う事。さらに、その費用を公的で助成することを県内市町村に提案しています。茨城県内の市町村では、胃がんバリウム・レントゲン検診の受診率は10%前後しかありません。一方、特定健診(メタボ検診)は5割程度の受診率があります。簡単なピロリ菌検査を受けてもらえば、今までの5倍以上の方に胃がんの検査を受けてもらうことができるようになります。そしてピロリ菌の除菌を行えば、胃がんの撲滅に大きな効果があると確信します。
さらに、ピロリ菌の除菌に保険適用を提案しています。メタボ検診にピロリ菌の検査を導入し、その除菌を徹底することによって、胃がんは相当数減らすことができと訴えています。
伊藤先生の講演は、ペプシノゲン検査、ピロリ菌検査の効果やその歴史、その二つを組み合わせたABCリスク検査の優位性などを説明。その上で、東京都目黒区、足立区、高崎市、神戸製鋼などの導入例を紹介しました。その上で、日本胃がん予知・診断・治療研究機構が実施した市町村へのアンケート調査結果を基に、「胃バリウム検診は、集団検診としての時代の使命を既に果たした」と指摘しました。
また、最近の国の動向に触れ、「6月8日、『がん対策基本法』に基づき今後5年間の指針となる「がん対策推進基本計画」を閣議決定しました。その『第4。分野別施策と個別目標』の中で、ウイルスや細菌の感染は、癌の原因として寄与が高い要因とされている。(中略)例えば、胃がんと関連するヘリコバクター・ピロリなどがある」と、記載し胃がんの原因がピロリ菌であることを求めています。その上で、取り組むべき施策として「ヘリコバクター・ピロリについては、除菌の有用性について内外の知見をもとに検討する」ことになっていると説明しました。
結論として、以下の5点を強調しました。
- これからの胃がん検診は、地域住民に胃がん発症リスクのない集団が増加する中、ABC分類で対象を集約し、リスクのある人に精密検査を行う方向を採用すべきである。受診率も大幅に高まる。
- 40歳以上一律に毎年放射線を被曝する現行の胃がんバリウム検診は、若年集団にとってはそれを超える利益はない。我々は、既にレントゲン法を超える胃がん検診法を手にいれている。
- ピロリ菌感染者の除菌を行うことにより、胃がんの予防が可能になった。これは地域の胃がんを撲滅する第一歩となる。
- 住民は血液検査で自分の胃の健康状態を知って計画的に検診を行うことで、毎年の検診から解放されます。
- 地方自治体は地域住民のしあわせのため、ABC胃がん検診の一日も早い実施が期待されている。