12月1日、鳥取県八頭町とデベロップ社が、災害時における「レスキューホテル」出動に関する防災協定を締結したというニュースが届きました。自然豊かな八頭町が、地域防災力の強化にむけて新たな一歩を踏み出したことを心強く感じています。私自身、今年4月に八頭町を訪問し、吉田英人町長と懇談したご縁もあり、この協定には特別な思いがあります。
八頭町は扇ノ山をはじめとする山々に抱かれ、八東川がゆったりと流れる穏やかな地域です。風光明媚で観光資源にも恵まれています。住民の安心安全を守るため防災・減災の取り組みにも積極的で、今回の協定締結が現実のものとなったのだと思います。

デベロップ社が全国に展開する「HOTEL R9 The Yard」は“レスキューホテル”と呼ばれ、平時は宿泊施設として利用され、有事には被災者を支援する施設へと即座に変わる特長があります。客室そのものが独立したユニット型で移動が容易に出来るため、被災者の一時的な個室休憩、医療・福祉関係者の活動拠点、復旧作業に携わる方々の打ち合わせスペースなど、さまざまな用途に迅速に転用できるのが最大の強みです。プライバシーを確保しながら、安全な空間をすぐに確保できるという点は、災害が激甚化する現代のまちづくりにおいて大きな価値があります。
2025年12月現在、全国では119拠点・4,505室が整備され、自治体との協定締結も広がりを見せています。その中で鳥取県では八頭町が初めての協定自治体となり、地域防災の先進的な取り組みとして注目されます。
私が八頭町を訪れた際には、町の魅力にも強く惹かれました。若桜鉄道の木造駅舎や国の登録有形文化財となっている鉄橋、蒸気機関車時代の転車台が残された若桜駅、バイク愛好家の聖地として全国から人が訪れる隼駅など、地域資源がしっかりと守られ、観光の力へと結びつけられていました。吉田町長とは、これらの貴重な資源をどう持続的に生かしながら、安全で安心な暮らしを守る地域防災をどのように築いていくかについて、率直に意見を交わすことができました。
八頭町が「観光振興」と「防災力向上」を車の両輪として捉えている姿勢は、地方創生のモデルケースとして非常に示唆に富んでいます。地域が持つ魅力を磨きつつ、同時に災害への備えを確かなものにしていく──その双方を高いレベルで両立させようとする姿勢が、今回の協定締結につながったのだと思います。
レスキューホテルという新しい防災資源を活かしながら、八頭町の“安心・安全”がさらに高まっていくことを心から願っています。そして、この取り組みが全国に広がり、災害に強い地域づくりのモデルとなることを期待しています。
