2月7日付の地元紙・茨城新聞の一面に古河市住宅公社の破綻処理問題が大きく報道されました。本来は、8日に白戸仲久古河市長(住宅公社理事長も兼ねる)が定例記者会見で公表する予定であったようですが、茨城新聞がいち早く情報をキャッチし、報道に踏み切ったようです。
その内容は、「古河市住宅公社は、保有地の地価下落などから約50億円の債務超過に陥っており、市は新年度予算で公社に対し約50億円の公費を一括投入し、債務超過状態を解消。今後15年かけて公社保有地を段階的に処分し、最終的に公社を解散させる方針を固めた」というものです。
「財団法人古河市住宅公社」(以下、住宅公社と略称します)は、民法34条に基づいて古河市が全額出資して昭和40年に設立された公益法人です。住宅の建築、賃貸、分譲、用地取得、造成などの多方面の事業を展開してきました。しかし、バブル崩壊後の景気低迷や民間業者の安価で良質な物件の供給などにより業績は低迷していました。特に、地価下落により手持ちの資産(土地)の実勢価格は下がり続け、含み損が膨らんでいきました。県の住宅供給公社のように、地方住宅供給公社法に基づく法人であれば、平成12年に閣議決定された行政改革大綱において、平成14年度決算から時価評価方式が導入され、資産の適正な評価が行われてきたとことですが、古河市の住宅公社は民法上の法人であったことから、資産の再評価も行われないまま今日に至りました。
そこで、古河市は平成18年12月の時点で、公社の保有する資産について、初めて時価評価を実施しました。その結果、含み損(帳簿上の取得時の価格と販売できるであろう現在の価格との差)が、実に40億900万円に達しいていることが分かりました。
また、現状の住宅公社の経営も、借入金の総額が67億1900万円に上り、これに伴う支払利息は年間9900万に達しています。人件費負担をはじめとする一般管理費も5200万円掛かっています。平成17年度決算では、6000間年の純損失が発生し、累積赤字も8億4000万円となっています。
こうした状況で、時価評価により資産の評価替えを行うと、債務超過額が49億3000万円になることが判明しました。
市は、債務超過分について15年間で分割して解消することとし、債務超過分の15分の1(3億3000万円)を一般会計から公社に投入することにしました。
この処理スキムは、県の住宅供給公社などと同じスキムで、住宅公社の債務を全額市が債務保証しているためにとられた方式です。
3月議会に向けて、この破綻処理問題は古河市にとって大きな議論を呼ぶこととなります。過去の経営責任を巡る議論も当然起こると思われます。現在所有する土地や資産をどのように処分するかも、大きな課題となります。県内には、同様の問題を抱える自治体もあり、古河市の今後の動向が注目されます。
古河市住宅公社 債務超過50億円 市、全額公費処理へ
茨城新聞(2007/02/07総合版1面)
歴代役員の責任追及
古河市の外郭団体・古河市住宅公社(理事長・白戸仲久同市長)が保有地の地価下落などから約五十億円の債務超過に陥っていることが六日、分かった。市は新年度予算で公社に対し約五十億円の公費を一括投入し、債務超過状態を解消。今後十五年かけて公社保有地を段階的に処分し、最終的に公社を解散させる方針を固めた。白戸市長は八日記者会見し、こうした処理策を正式発表するとともに、旧古河市長ら公社の歴代役員らに対しても一定の経営責任を求めていくとみられる。
同公社は一九六五年、合併前の旧古河市が全額出資して設立した財団法人。現在は旧総和町・旧三和町との合併後の新・古河市に引き継がれている。経営はバブル期ごろまでは比較的順調だったが、バブル崩壊後は保有する分譲地などの売れ残りが続き、深刻な経営難に陥っていた。
関係者によると、公社が現在抱える分譲地などの土地は約三万三千五百平方㍍。金融機関からの借入金も二〇〇五年度末現在で約六十七億一千九百万円に膨れ上がり、支払い利息も年間約九千九百万円に上っている。一方で、公社の抱える土地などの資産価値は長期の地価下落に伴い、時価換算では大幅な下落が見込まれていた。
市はこうした状況を踏まえ、昨年十二月現在で公社が保有する土地などについて資産価値の再評価を実施。その結果、公社資産には約四十億円の含み損が発生し、公社は約四十九億三千万円の債務超過状態に陥っていることが分かった。公社は金融機関からの新たな運転資金が見込めなくなり、経営の維持自体が困難な事態に直面していた。
このため、市は新年度予算で、公社に対し債務超過相当分の公費を一括投入し、金融機関の借入金を圧縮した上、公社保有地を二〇二一年度まで十五年かけて処分していく方針を固めた。
市がこうした処理方針を固めた背景には、市が公社借入金について最大九十億円の損失補償をしている事情もある、とみられる。法的な破たん処理を採れば、公社の保有地が適正な価格より不当に安く買いたたかれ、市の負担がさらに膨れ上がる恐れがあるためだ。
ただ、新年度投入する約五十億円は市の単年度財源で賄うのは困難なため、大半は公社に対する市の無利子貸付金の形となる。投入資金は実質的には十五カ年の分割払いで負担する仕組みで、市は公社に対し二〇二一年度まで毎年度約三億三千万円ずつ補助金を投入する予定。また、無利子貸付金の原資も巨額になるため、市は当面、原資の大半を金融機関からの一時借入金で調達する、とみられる。
古河市住宅公社の債務超過 市長ら給料半額返上
茨城新聞(2007/02/09総合1面)
歴代役員にも負担要求
巨額の債務超過に陥っていることが判明した古河市住宅公社の問題で、白戸仲久市長は八日、記者会見し、四十九億三千万円の公費を投じる処理策を正式に発表した。併せて、市長は公社に対する監督責任を明確にするため三月から三カ月間、自らの給料を50%減額して返上することも表明。助役二人も同様に給料をカットする。さらに、公社経営が悪化した一九九三年までさかのぼり、歴代役員ら計十四人に対しても応分の費用負担を求める方針を明らかにした。
白戸市長は「住宅公社は数年前から事実上、破たんしていた。血税を投入することについて、市民の理解を得られるか自問自答したが、苦渋の思いで決断した」とした上で、「現職の理事長という立場であることを自覚し、道義的責任を果たす」と語り、副理事長の助役二人も含めて給料カットを行う考えを表明した。減額は市長と助役二人の計三人で三カ月間の総額三百四十五万円。
このほか旧経営陣については、理事長だった歴代の市長三人(うち二人は故人)に各百万円、副理事長だった助役四人に各八十万円、出納役だった収入役二人に各八十万円など、現在の常務理事も含めた計十四人に対して費用負担を要請する。四月から文書で協力を依頼する予定で、市は総額九百八十万円の協力を見込んでいる。
会見で市側は公社の解散へ向けた破たん処理策を具体的に説明。現在は「利払いのために借り入れをし、利子が新たな利子を生む」(白戸市長)状態だといい、債務が雪だるま式に膨れ上がる状態を一刻も早く解消すべきだと強調した。
市が公社へつぎ込む債務超過相当分の公費四十九億三千万円は新年度で一括投入する予定。市民一人当たり約三万三千七百円の血税が使われる計算となり、市は今後、市のホームページなどを通じて説明責任を果たしていきたいとしている。
解説 血税投入、合併で可能に
「旧古河市の隠れ借金」といわれた古河市住宅公社問題。市が債務超過分の血税投入を決断したことについて、関係者は「評価できる」と一様に口をそろえる。
処理策がまとまった大きな要因に「平成の大合併」がある。旧古河市の財政規模は一般会計ベースで約百五十億円。仮に旧市が公社の損失を穴埋めしていたら、「共倒れは確実。財政再建団体になっていた」と関係者はみる。
二〇〇五年九月、旧総和、三和両町との合併で新・古河市が誕生。新市の一般会計は約三百九十億円と財政的な余裕が生まれ、処理策で示したような十五カ年での分割払い、毎年度約三億三千万円の補助金投入を可能にした。
そもそも、市が公社の債務を背負うことになったのは、公社借入金について最大九十億円の損失補償契約を結んでいたから。契約自体は国などの行政実例でも多く見られるものだという。
だが、昨年十一月に横浜地裁であった住民訴訟で「財政援助制限法に違反する」との判断が示され、関係者に動揺を与えた。市が公社の処理を急いだ遠因にはこうした事情もあるとみられる。
契約自体は議会の議決を経ているため、市議会側のチェックの甘さも指摘されそうだ。多額の血税を投入する意味で、市は今後、十分な検証と説明責任が必要だろう。