茨城県の森林は、面積が約18万9000ヘクタール(県土の31.1%)で県北地域に広く分布しています。茨城県の森林には、私有林の割合(76.2%)や人工林の割合(55.8%)が高いという特徴があり、木材価格の低迷など林業の採算性の悪化のため、森林荒廃が進んでいる現状があります。
森林保全と霞ケ浦の水質浄化のための目的税
また、茨城県南地域には県民の生活や産業の基盤として大きな役割を果たしている日本第二の湖・霞ケ浦があります。(県内44市町村のうち、実に31市町村が上水道や農業、工業用水の提供を受けています)しかし、霞ケ浦は地形的な特徴もあり、生活排水や工場排水、農業排水などの影響により、水質の汚濁が進んでいます。行政や住民の水質改善への懸命な努力が行われていますが、目に見える改善には至っていません。
こうした森林環境や霞ケ浦の環境を守るためは、多額の予算を必要としています。一方、茨城県の財政状況は、県職員の給与カツトなど徹底した行財政改革を行った上でも、今後三ケ年で1000億円台の不足額が出ると試算されています。
一般の公共事業であれば、財政が好転するまで、事業を先送りすることもできます。しかし、環境を守る事業はまさに待ったなしで、一度破壊された環境を元に戻すには大変な予算と労力を必要とします。
こうした県財政の中、検討されているのが、森林保全や霞ケ浦の環境対策に限って使われる県独自の新たな税制度の導入です。
個人県民税1000円増、法人県民税均等割10%増で約16億円の財源確保
森林や霞ケ浦などの恩恵は広く県民全体に及び、また負担が過大になることも避けるため、新たな環境税は、広く浅くすべての県民、事業者が負担する方式が適当であると考えられています。(具体的には県民税均等割超過課税方式の導入が有力です)
具体的には、現行の個人県民税均等割に年額1000円を加算し、法人県民税均等割に1割を加算することが検討されており、これにより年間16億円の税収増が見込まれています。この環境新税は、当然、森林の保全、霞ケ浦の環境対策に限って使われます。
全国的にこうした県独自の環境税の動向を見て見ると、すでに導入している県が24県あります(16県が既に施行済み、8県が19年度以降に導入)。そのほとんどが森林保全のみを対象としており、茨城県が導入を検討している県民税均等割超過課税方式を採用してしています。その税額は、個人県民税均等割に500円プラス、法人県民税均等割に5%プラスを、16県が採用しています。神奈川県は、「水源環境保全税」という名目で、水源環境の保全・再生に広く活用できる税制度を創設し、県民税所得割も0.025%超過徴収することで、38億円の財源を確保しています。
地球温暖化防止のためにも導入に向け活発な議論を
茨城県での環境新税の議論は、現在、県自主財源充実研究会での中間取りまとめが行われています。今後、県民からの意見募集、アンケート調査などを行い、夏頃には条例案が取りまとめられる予定です。
こうした環境新税は、地球温暖化対策としても、重要な財源確保策となります。森林は、地球温暖化の原因物質である二酸化炭素の吸収源であり、京都議定書でも森林の涵養によって二酸化炭素削減量の3.9%を賄うことが認められています。
環境新税の検討の過程では、地球温暖化防止の視点も加味した広い議論が必要です。
森林環境税 全県民等しく課税 08年度にも導入
茨城新聞(2007/3/13)
個人は年1000円負担
県が森林保全や霞ケ浦の水質浄化の財源として導入を目指している「森林環境税」(仮称)の概要が十二日、明らかになった。新税はすべての県民・法人(企業)が等しく負担するとして、税額は個人は年額千円、法人の場合は資本規模に応じて年額二万円-八十万円の五段階を予定。課税期間は当面五年間とし、税収規模は総額十六億円程度を見込んでいる。こうした新税案について、県民から今後幅広く意見を募り、その結果を踏まえ、早ければ二〇〇八年度から導入される見通しだ。
森林環境税は、地方自治体の課税自主権に基づく県の新税としては「核燃料等取扱税」(一九九九年度創設)に次いで二番目。ただ、核燃料等取扱税は原子力施設の立地に伴う行政負担を賄う税源のため、課税対象も原子力事業者に限られている。全県民(県内企業含む)を対象にした新税としては初めて。
森林環境税の概要は同日、県議会・総務企画委員会の中で県側が明らかにした。森林環境税をめぐっては、県林業協会(関宗長会長)などが昨年八月末、橋本昌知事に森林保全などを目的とした新税の創設を求める要望書を提出。これを踏まえ、外部有識者らで作る県自主税財源充実研究会が昨年十月から具体的な税制案の検討を進めてきた。研究会は月内にも中間報告を取りまとめる予定で、同日の委員会では中間報告の骨子が説明された。
説明によると、新税導入の背景には近年の森林の著しい荒廃や、霞ケ浦の水質汚濁に改善が見られない実情がある。新税は①森林保全②霞ケ浦の水質保全-を目的とする事実上の「目的税」。具体的な使途として森林の間伐や県産材の活用、霞ケ浦の水質浄化対策、市民参加の水質浄化運動などを予定している。
県民すべてに税負担を求めるのは森林と霞ケ浦の恩恵は県民が等しく享受するためで、負担額も同様の理由から県民税均等割の超過課税方式とした。
個人は個人県民税均等割(現行年千円)に年額千円、企業は法人県民税均等割に年額10%を上乗せする方向が打ち出された。
県によると、森林環境税は既に高知、岡山など全国計十六県で導入され、他の八県でも〇七年度以降の導入が予定されている。