大半は受給時に決着済み、「第2の記録漏れ」は全くの誤解
厚生年金の「旧台帳」の記録1430万件について、「第2の記録漏れ」などと誤解を招く報道が一部になされています。
厚生年金は、昭和17(1942)年にスタートした制度で、その後改正され、昭和29(1954)年4月に新法に移行しました。
この当時の厚生年金の加入の状況をみると、【図】のように、大きく三つのグループに分かれます。
一つは、昭和29年3月末までに厚生年金に加入していたけれども、昭和29年4月1日以降は入っていないグループ。二つ目は、昭和29年3月末までに厚生年金に加入していたが、昭和29年4月1日から昭和34年3月31日までの間は加入しておらず、その後、再び厚生年金に加入したグループ。三つ目は、同じく昭和29年3月末までに厚生年金に加入し、昭和34年4月以降も引き続き継続加入していたグループです。
報道された1430万件とは、①と②の「旧台帳」の記録の件数ですが、旧台帳の記録はマイクロフィルム化されて「記号番号」が付され、コンピューターにはその「記号番号」が収録されているので、どこを探せば見つかるか分かるようになっています。
誤解を招く報道がされているのは「この記録が宙に浮いたまま、年金の受給権につながっていないのではないか」という指摘です。
まず、③の、ずっと継続して加入していた人は、そのまま記録が自動的に新台帳に移行しており、全く問題はありません。
また、①の、昭和29年4月以降に加入していない人は、加入歴が最大で12年にしかならないため、年金受給権が原則として発生しません。また、当時あった脱退一時金の制度を利用し、退職時に一時金を受けた方の記録が含まれます。
そして、②の人についても、昭和29年3月末以前に厚生年金の資格を失った後、事業主が適切に届け出を行っていれば、昭和34年4月以降に厚生年金に再加入した段階で、昭和29年以前の旧台帳の加入記録が昭和34年以降の新台帳の記録につながります。
ですから、旧台帳の1430万件は、①の原則的に対応しなくていいグループと②の新・旧台帳の記録を結ぶ仕組みによって年金裁定(受給権の確認手続き)の際に対応できるグループの記録であり、年金の支給開始が近づき、受給者本人から記録確認を受ける際などに旧台帳に該当する事例はその都度、データ入力して基礎年金番号に統合しており、実際支給が行われなかったり減額されているケースはほとんどないと思われます。
ただ、②の場合、再加入した際に、事業主の届け出が適切に行われなかった場合は未統合になってしまいます。この場合、裁定時に統合されることになりますが、いまだ統合されていない記録が残っている可能性はあります。
また、①の人でも、国民年金との通算で受給権が発生するケースもあります。
①や②の人も、年齢的には68歳以上の方々であり、政府・与党の年金記録問題への対策である、1.受給者の方々すべてに加入履歴をお知らせする、2.無年金の方々にも介護保険料の納入案内などで周知を図ること、3.マイクロフィルムとコンピューターに収録されている他の記録との突き合わせを計画的に行う――などを講じて、こうしたケースにも万全に対応していくことができます。
私は、年金への不信を必要以上に煽る報道には疑問を感ずる一人です。