高萩市と日立市にまたがり、地域の象徴として44年間にわたり地域住民に親しまれてきたKDDI茨城衛星通信センターは、今年3月に業務を移転し閉局しました。
この跡地と2基の大型パラボラアンテナを有効利用するために、8月6日、茨城県と国立天文台、茨城大学、高萩市、日立市、KDDI株式会社は、協定書を締結し、連携して事業を推進するに合意しました。
施設や土地を所有するKDDIは、パラボラアンテナ2基(台座含む)と土地、建物、施設等については国立天文台へ、その他を高萩市及び日立市へ寄付することで調整が進んでいます。
また、これに先だって5日には、地域住民の方を対象とした第1回目の「宇宙科学講座」と「ワークショップ」が開催されました。宇宙科学講座は、国立天文台教授の井上允先生を講師に迎えて行われました。ワークショップは、大学、行政、NPO等をメンバーと一般参加の市民と「交流拡大」(「手作り望遠鏡作成教室」などの体験交流メニュー、交流イベント企画・検討、県北地域の観光資源等との地域資源との連携方策などの検討)、「跡地の幅広い利活用」(土地、建物、施設等の利活用方策検討、科学技術の推進に繋がる事業検討、ものづくり体験メニュー創出、J-PARC等他の地域資源との連携方策検討)の2つのテーマで行われました。
なお、第2回のワークショップを8月26日(日)10時から、KDDI茨城衛星通信センター跡中央局舎大会議室で開催します。
茨城衛星通信センター跡の有効利用で協定
産経新聞(2007/8/7)
日立、高萩両市にまたがるKDDI茨城衛星通信センターが3月に閉局したことに伴い、センター跡を天文学などの学術研究や教育、地域活性に生かそうと、茨城大、国立天文台、県、日立、高萩両市、KDDIの6者が6日、水戸市文京の茨城大で協定の調印式を行った。今後は大型アンテナ設備を宇宙電波望遠鏡に活用し、国内の宇宙電波望遠鏡とネットワークを構築することでブラックホールや銀河の謎を解明するほか、県北地域活性化の拠点としても大きな期待が高まっている。
同センターは昭和38年11月に国際通信の主要拠点として開設。大型アンテナ2基が設置された約18万平方メートルの広大な敷地には芝生と約300本の桜並木があり、年間約2万人の見学者が訪れるなど地域とのつながりも深い。運用保守態勢の一元化による効率化のために今年3月に閉局し、KDDI山口衛星通信センター(山口市)に機能が移管された。
今回の協定締結で、茨城大と国立天文台がアンテナを宇宙電波望遠鏡として活用するほか、地元自治体やKDDI、地域住民が連携したワークショップやフォーラムの開催、生涯学習などの「宇宙科学を核とした地域再生事業」を展開していく。
アンテナは今後約1年かけて宇宙電波望遠鏡として整備し、平成21年から電波で宇宙観測を行う計画。電波望遠鏡は現在、国内に北海道・苫小牧から沖縄・石垣島までの間に9基設置されており、2基が加わると10基を保有している米国を抜いてわが国が世界一となる。
11基合わせると全長2300キロの電波望遠鏡に匹敵。同時に同じ星を観測しデータを統合することで、より精密な観測が可能になり、ブラックホールや銀河の構造、進化の過程の研究への活用が期待されている。
将来的に韓国や中国など東アジアに設置された望遠鏡とネットワークを構築すると、全長約8000キロの電波望遠鏡と同じ性能を有するという。
調印式で観山正見国立天文台長は「日本の大学と天文台のアンテナをネットワークで結び、巨大な望遠鏡に仕立てていきたい。また人のネットワークをつなぎ世界的で大きな成果を出したい」、菊池龍三郎茨城大学長は「電波望遠鏡を活用した最先端の宇宙科学研究の一翼を担うとともに、施設を教育や文化面でも積極的に活用したい」と抱負を語り、草間吉夫高萩市長は「市民にとって巨大なパラボラアンテナは町の景観を彩る象徴、また日本の国際衛星通信の発祥地としてのシンボルとして親しまれてきた。きょうは県北地域の振興拠点づくりの第一歩」と期待を込め話した。