沖縄戦の検定問題:沖縄の声を受け止め研究機関の新設を
教科書検定で太平洋戦争末期の沖縄戦において、旧日本軍が住民に「集団自決」を強制したとの記述が高校日本史の教科書から削除された問題について、公明党の太田昭宏代表は10月2日昼の政府・与党連絡会議で、「旧日本軍の関与は否定できるものではない事実だ」との認識を示した上で、「後世に(沖縄戦の)歴史を残す意味からいっても、冷静かつ客観的な調査・研究が必要ではないか」と述べ、新たな研究機関の設置などの検討を提案しました。さらに、太田代表は「沖縄の皆さまの痛み、心に重きを置いて、善処してもらいたい」と要請しました。
白保台一氏(公明党沖縄方面議長)ら 文科相にも要請
一方、公明党の白保台一沖縄方面議長は、10月2日夕、文科省で渡海紀三朗文科相と会い、この問題に対する沖縄県民の気持ちを十分にくみ入れ、善処するよう申し入れました。これには東順治副代表、斉藤鉄夫政務調査会長、富田茂之文科部会長(衆院議員)、遠山清彦参院議員、池坊保子文科副大臣(公明党)が同席しました。
白保氏は「正しい歴史を残しておかないからこうした話になる。きちんと研究して真実を後世に残すべきという点で県民の気持ちは皆同じだ」と強調しました。
また白保氏は、9月29日に沖縄・宜野湾市で行われた、検定撤回を求める超党派の沖縄県民大会には、先島諸島で同時開催された大会を含めると主催者発表で12万人超もの県民が参加したことに触れ、「県民の思いをしっかりと受け止めていただきたい」と心情を訴えました。渡海文科相は「明日(3日)、県知事に会うことになっている。県民の皆さまの気持ちは受け止めなければならない。このことと中立、公平、公正という教科書の検定制度をどのように守っていくか。その中で自身の職務を果たしていきたい」と述べました。
教科書検定問題については、他党に先駆けて党沖縄県本部(糸洲朝則代表=県議)が本年4月10日、記述削除は極めて遺憾として伊吹文明文科相(当時)あてに申し入れを実施しました。その際、白保氏は「住民が日本軍の配った手榴弾で命を絶ったという多くの事実がある」と、軍主導の集団自決は紛れもない事実であると指摘。教科書検定委員と沖縄県民による沖縄戦の共同研究機関の設置や、教科書検定委員が沖縄戦の犠牲者の証言を直接聞く機会を設けること――を求めています。
29日の沖縄県民大会には、白保、遠山両氏、糸洲県代表をはじめ、公明党の議員、党員・支持者ら多数が参加。県民を代表し、仲井真弘多知事が検定意見の速やかな撤回と記述の回復を求める決議を採択しています。
一方、10月2日の閣議後記者会見で渡海文科相は、教科書会社から訂正申請があった場合、「中身を審議会で検討してもらわなければならない」とする一方、「検定後に新たな事実や証言が出ている」と述べ、内容次第で記述の復活が承認されることもあり得るとの考えを示しました。
(写真は、9月29日の検定撤回を求める沖縄県民大会を伝える「琉球新報号外」。クリックするとPDF版にリンクします)
集団自決記述で訂正申請へ、複数の教科書会社が月内にも
読売新聞(2007/10/3)
高校日本史の教科書検定によって、沖縄戦の集団自決に「日本軍の強制があった」とする記述が削除された問題で、複数の教科書会社が今月中にも、文部科学省に訂正申請する方針であることが分かった。
来春から使用される教科書に訂正内容を反映させるには、印刷などの時間を考慮すると、11月中に教科書の記述を確定する必要があるためだ。同省も訂正申請を受け次第、速やかに対応する方針を固めている。
関係者によると、次年度の教科書は、通常であれば、11月中に記述内容を固め、12月末までに印刷を終えることになっている。今回、集団自決への軍の関与について、これから何らかの記述変更を行う場合、極めて時間が限られている。
現段階では、教科書会社の訂正申請を認めるかどうかを同省が判断するのにどの程度の時間がかかるか不透明なため、ある教科書会社の編集者は「どのような表現にすべきか早急に結論を出し、月内にも訂正申請を行いたい」と話した。
一方、沖縄県の仲井真弘多知事などは3日午前、渡海文部科学相らと面会し、検定意見の撤回などを求めた先月29日の沖縄県民大会の決議文を手渡すことにしている。