日本には、あまり知られていない不可解な事実があります。それは、先進国の中で、日本だけが「がんの死亡数が増加している」という事実です。日本人の平均寿命は女性が86.61歳で世界一、男性は80.21歳で第4位。日本の医療は世界トップクラスで、日本人は健康なのだと思いがちですが、「がんによる死」については、様相は全く違うようです。
アメリカで1年間にがんで死ぬ人は、約57万5000人。日本人は、約36万5000人です。人口10万人当たりで換算すると、がんによる死亡数はアメリカの約1.6倍にもなっています。
少し古い資料ですが、2007年7月11日付けの”ウォールストリート・ジャーナル”のオンライン版では、人口10万人当たりのがんによる死亡数が減少しているアメリカに比べて、日本では死亡原因のNo1であるがんによる死が増え続けているとの記事を掲載しました。
なぜアメリカなどに比べて、日本のがん死が多いのか?
様々な要因が考えられますが、がん検診の受診率が著しく低いことや放射線治療、投薬による化学療法などの普及が遅れたこと、胃がんのピロリ菌リスク検査など、欧米では有効とされている取組みに対して消極的であることなどが指摘されています。
こうした状況の中、中学生を中心とする学校教育の中で、がんに対する基本的な知識を広め、 がんの早期発見や万が一にがんを発症した場合に前向きに取組む姿勢を育むことを目的に「がん教育」の重要性が強調されています。
文科省のがん教育に関する最終報告まとまる
文部科学省が外郭団体の日本学校保健会に設置した、がん教育に関する検討委員会の最終報告書が8月にまとまりました。
文科省は2014年度から、先進自治体の事例を分析・調査するとともに、報告書を踏まえたモデル事業を実施します。省内に新たに検討会を設け、全国に展開させるための議論も行う方針です。
国民の2人に1人が、がんになる時代です。子どもたちが健康の大切さを学ぶと同時に、患者に対する偏見や差別を持たないようにするための機会を教育の現場で設ける必要があります。
現在、がんは保健体育の授業で生活習慣病の予防や喫煙などの有害性を学ぶ際、他の病気と併せて紹介される程度にすぎません。国が定めた「がん対策推進基本計画」は、「がんそのものやがん患者に対する理解を深める教育は不十分」だと指摘しています。
報告書では「いのちの大切さを育む、がん教育」との視点で、教育の目標を(1)がんを正しく理解する(2)いのちの大切さについて考える態度を育成する――としています。がんを正しく理解すれば、大人に成長してからの検診の受診率アップにつながるはずです。闘病生活を送る人々に対する理解が深まれば、いのちの大切さを学ぶことも期待できます。
具体的な教育内容として、(1)発生要因(2)予防(3)早期発見・検診(4)治療(5)がん患者との共生――などを挙げた。いずれも重要な内容です。
東大病院・中川恵一医師の“出前授業”
東大病院放射線科進教授の中川恵一医師は、3年前から、「生きるの教室」という出前授業を行っています。これまでに、秋田、山口、 愛媛など地方を中心に中学校10校に出向き、約1300名の中第2年生に授業を行いました。
中川医師は中学生に対して、「がんは遺伝子のコピーミスによって起きる老化現象の一種である」と説明。「体の中のがん細胞は、発見できる1センチの大きさになるまでに10~20年もかかる一方、そこからわずか数年で大きくなる」などと基礎知識をわかりやすく解説します。
その上で中川医師は「がんは生活習慣に気を付ければ、半分は防げる」と語りました。「特に喫煙は害が多い。中学生がたばこを吸うと、がんになるリスタは30倍になります。君たちがたばこを吸うことは、自殺行為なのです」と強調しました。
また、手術以外にも放射線治療などのがん治療の選択肢が増えていることにも言及しました。
授業の後半は、生徒たちに「がんをなくすために、私たちが出来ることは」と問いかけます。「検診に行くように、家族に呼びかける」「バランスの良い食事に気を付ける」「たばこの値段を引き上げる」などの提案が中学生から寄せられます。
こうした授業の効果をアンケート調査の結果でみてみると、「がんは予防できる病気」と回答した中学生は、受講前が23%であったの対し、受講直後は8%に、6ケ月後も63.7%に大幅に上昇しました。「がんは生活習慣が原因の一つと考えられる病気」は31%から86%に、7カ月後も65%とかなり高くなりました。
また、受講後には89%が「家族にがん検証を受けるように勧めようと思う」と回答しました。そして、実際に48%の生徒が「家族にがん検診を受けるよう勧めた」と答えました。子供から親への「逆世代間教育」の効果も表われています。
茨城県でもがん教育の導入を、中学生のピロリ菌検査も提案
井手よしひろ県議ら県議会公明党は、中学2年生への「がん教育」の導入を強く主張しています。モデル校に中川医師のようなトップクラスの“がんの語り部”を招き、 そのノウハウを学びます。地域毎に地元医師会と連係して「がんを知る教室」を実施すべきです。
さらに、中学生にピロリ菌検査を導入します。胃がんの要因はピロリ菌といわれ、中学生の時期に早期発見し、除菌すれは茨城の胃がんリスクは著しく低減できるもの確信します。