野菜や果物、卵などを買いたくても身近な商店が閉店してしまった。高齢で車の運転ができず、足腰も弱くなり、買い物に出かけたくても出かけられない。そうした日常の買い物に苦労している「買い物弱者」が増えています。
農林水産省の農林水産政策研究所が昨年10月に公表した推計によると、住まいから生鮮食料品店まで直線で500メートル以上離れていて、移動手段として自家用車を使えず、食料品の購入が困難な65歳以上の人は、2025年に全国で598万人に上るといわれています。買い物弱者は、10年の時点で382万人いるとされていましたから、25年には56.4%の大幅増になります。
一方、農村部の増加率は約24%ですが、都市部は約93%に上り、買い物弱者の増加は今後、都市部で顕著になっていくと見込まれています。人数をみても、25年の段階で農村部が249万人、都市部が349万人に達し、都市部が一気に深刻な問題に直面する恐れがあるのです。
特に、都市部郊外の大規模住宅団地である「ニュータウン」は、商店が近くにない地域に住宅地を造成している場合が多く、住民の高齢化に伴い、買い物弱者が増えていくと懸念されています。
具体的な支援策を急がなければなりません。経済産業省は2月23日から3月20日まで、全国9地区で買い物弱者問題に関するシンポジウムを開催し、対策のあり方を探っています。公明党も統一地方選の重点政策で、買い物弱者対策の強化を掲げ、支援事業の立ち上げに必要な資金の補助などを打ち出しています。
全国各地の買い物弱者を応援するためには、具体的には3つの方向性があります。①身近な場所に店を作ること、②家まで商品を届けること、③家から人々が出かけやすくすることの3つです。
経産省が3月23日に都内で開いたシンポジウムでは、地域のスーパー撤退後、地元住民が出資し、公明党市議も設立を後押ししたスーパーを開店した新潟県十日町市や、生活協同組合と協働で食料品の移動販売車事業を進めている千葉県野田市などの事例が紹介されました。一方で、こうした取り組みは採算性の確保や継続が難しいとの問題も指摘されており、国や自治体の一層の支援が必要です。
誰もが住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、買い物弱者対策に本腰を入れて取り組んでいかなければなりません。
買い物難民との表現はマイナスイメージを与える
さて、こうした買物支援、買い物弱者の話を地域の有力者と意見交換している際、貴重なご指摘をいただきました。地元、茨城新聞に移動販売車を紹介する記事が載っており、「“買い物難民”の命綱に」との見出しがついていたことに、憤慨されていました。『難民』とは、デジタル大辞泉によると、「1. 天災・戦禍などによって、やむをえず住んでいる地を離れた人々。2.人種・宗教・政治的意見の相違などによる迫害を避け、国外に逃れた人々」という意味です。これが転じて、「さまざまな事情で困った状況にある人々」という意味での買い方が目立っています。買い物難民、帰宅難民、介護難民等など、最近では携帯電話の電波が届かないところに住む人を携帯難民(スマホ難民)などと表現しています。
先程のお話を聞いた方は「買い物難民の“難民”という言葉に“家のない人”といマイナスのイメージを持つ年寄りは多い。新聞記事が出てから移動販売車に来ても、買い物に来なくなった人がいる」「移動販売車で買い物をする人は難民なのか?」と厳しく指摘されていました。
確かに、今までは無神経に「買い物難民」という言葉を使っていました。行政やNHKなどは「買い物弱者」という表現が一般的なようです。弱者という表現にも抵抗があるかもしれませんが、「買い物難民」という言い方は控えていくべきだと思います。