厚生労働省では、毎年11月を「児童虐待防止推進月間」と定め、家庭や学校、地域等の社会全般にわたり、児童虐待問題に対する深い関心と理解を得ることができるよう、期間中に児童虐待防止のための広報・啓発活動など種々な取組を集中的に実施しています。
全国の児童相談所(児相)が昨年度対応した虐待の件数は、12万2578件(速報値)で、過去最多を更新しました。
虐待への関心が高まっていることや、子どもの目の前で配偶者に暴力をふるう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」を警察が「心理的虐待」に該当するとして、積極的に児相に通告したことなどが増加の要因とみられています。
児童虐待防止法が定義する虐待は、暴力などの「身体的虐待」、食事や入浴などの世話をしない「ネグレクト」、わいせつ行為などの「性的虐待」、心ない言動や無視などで傷つける「心理的虐待」―の4つに分けられます。
厚労省が今年(2017年)8月に公表した速報値では、昨年度に児相が対応した虐待のうち51.1%が心理的虐待で、半数を超えています。
公明党は、2000年11月に施行された児童虐待防止法を推進。虐待を発見した際の通告義務が明確になりました。ほかに、子どもや親の相談などに当たる児童福祉司を増員するための配置基準の見直しなど、対策を充実させてきました。
虐待を通報するための専用電話も、公明党のなどの尽力で立ち上がりました。2015年7月にスタートした児童相談所全国共通ダイヤル「189(いち・はや・く)」です。24時間365日体制で対応します。
さらに、虐待を未然に防止するため、保健師らが生後4カ月までの乳児がいる全ての家庭を訪問し、育児不安などの相談に応じる「こんにちは赤ちゃん事業」も、国と地方の公明議員が連携して普及を進めてきました。昨年4月時点で、全国97.8%の市町村で実施されています。
虐待の背景には、親の孤立や産後うつなど、さまざまな要因が考えられます。公明党は、保健師などの専門家が、妊娠から出産まで切れ目なくサポートする「子育て世代包括支援センター(日本版ネウボラ)」を推進していて、昨年4月時点で296市町村、720カ所まで広がりました。
児童福祉法と児童虐待防止法を改正
今年6月には、児童福祉法と児童虐待防止法の両改正法が成立。1年以内に施行されます。この改正により、児童相談所による保護者への指導の効果を高めるため、家庭裁判所(家裁)の関与が強化されます。児相は必要に応じて保護者の同意なしに子どもを引き離す「一時保護」を行うことができるため、保護者が反発するケースがありました。
改正法により、児相による施設入所などの申し立てを受けた家裁は、審判の前に、児相を管轄する都道府県に保護者の指導を行うよう勧告。その後、家裁は指導の結果などについて児相の報告をもとに、施設入所の可否を判断します。
このほかに、保護者に子どもとの接触を禁止する「接近禁止命令」の対象を拡大。これまでは保護者の意に反して施設などに入っている場合に限られていましたが、一時保護や保護者が同意して施設に入所している場合でも、必要があれば命令を出せるようになります。