
8月5日の参議院予算委員会で、参政党の神谷宗幣代表が行った発言は、日本の将来を真剣に考える国民として看過できないものでした。
神谷代表は日米関税交渉を巡る質疑の中で、アメリカ・トランプ大統領の政策に賛同することを交渉カードにせよと提案し、その具体案として6つの政策見直し・廃止案を列挙しました。しかし、その中身を冷静に見れば、これは単なる外交戦略の話ではなく、参政党が持つ人権軽視の本質、そして世界が努力を重ねて築いてきた持続可能な未来への流れを逆行させる危険な思想が露わになっています。
第一に、「日本が進めてきたSDGsという政策を止める」との主張です。SDGs(持続可能な開発目標)は、貧困削減、教育の普及、環境保護、ジェンダー平等など、人類共通の課題解決を目的とした国際合意です。これを一方的に否定することは、日本が国際社会の信頼を失うだけでなく、国内の課題解決の機会も放棄する行為に他なりません。
次に、「パリ協定など脱炭素政策の廃止」という提案。気候変動は科学的に明確な脅威であり、豪雨、猛暑、台風被害などの異常気象はすでに私たちの生活に直結しています。この流れに背を向けることは、将来世代への責任放棄であり、短期的な経済利益のために地球環境を犠牲にする愚策と言わざるを得ません。
さらに、「WHOからの脱退」「ウクライナ支援の見直し」といった発言は、国際協調を軽んじ、孤立主義に傾く危険な兆候です。感染症対策や安全保障の分野は、一国だけでは解決できない課題です。これらの連携を断ち切れば、日本は国際的な孤立と安全保障リスクの増大に直面するでしょう。
また、「DEI政策の廃止」という表現で、実際にはDEI(多様性・公平性・包摂性)政策を否定する意図が示されました。これは、性別や障がい、出自に関係なく平等な機会を保障する社会の土台を揺るがすものであり、マイノリティの人権を軽視する姿勢そのものです。
最後に「政府によるSNS規制の撤廃」。表現の自由は民主主義の根幹ですが、それは同時に、虚偽情報や差別的言動の拡散を野放しにしてよいという意味ではありません。健全な公共空間を守るための適切なルール作りを否定することは、かえって自由を損なう結果を招きかねません。
これら6項目をまとめて見ると、参政党は人権、多様性、環境、国際協調といった現代社会の基本原則を否定し、日本を国際的な信頼から遠ざける方向へ導こうとしていることがわかります。しかも、それを「日米関税交渉のカード」という姑息な理由づけで正当化しようとする態度には、強い嫌悪感を覚えざるを得ません。
国際社会は、対立や分断ではなく、協力と共生によって未来を切り拓こうとしています。その中で、日本が果たすべきは橋渡し役であり、信頼できるパートナーであるはずです。参政党の主張はその真逆を行くものであり、私たちが目指すべき未来像を根底から損なう危険な選択肢です。日本の未来を守るために、このような発想に断固としてNOを突きつける必要があります。