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ひたみち日記

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映画「もしも徳川家康が総理大臣になったら」――強さに拍手する私たちへの問い

管理者 2025年12月31日
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久しぶりにネットで動画視聴。
余り期待せず、映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』を視てみました。

正直に言えば、タイトルを見た時点では、よくある歴史ネタのコメディ映画だろうと思っていました。AIで偉人を復活させ、内閣をつくるという設定は面白そうですが、話題先行で中身はそれほど深くないのではないか、そんな先入観があったのも事実です。

ところが、視聴を進めるうちに、その印象は大きく変わっていきました。
笑える場面の奥に、いまの日本社会、そして政治のあり方そのものを鋭く照らし返す視点が、随所に仕込まれていたからです。

物語の舞台はコロナ禍の日本。
首相官邸でクラスターが発生し、総理大臣が急死するという未曾有の危機の中、政府は「最後の手段」として、歴史上の偉人たちをAIホログラムで復活させます。
徳川家康を総理大臣に、織田信長が経済産業大臣、豊臣秀吉が財務大臣、坂本龍馬が官房長官という、まさに“最強内閣”です。

彼らの政治は、とにかく迷いがありません。
国民全員への50万円給付のような大胆な政策も、即断即決で進めていきます。
現代の政治家が世論や制度を気にして足踏みする中で、圧倒的なスピードと決断力で国を動かしていく姿には、思わず爽快感すら覚えました。

しかし、この映画は、その爽快感に浸らせたまま終わる作品ではありません。
むしろ、そこからが本題だと感じました。

この「強い政治」「迷わないリーダー像」は、現在の日本政治、とりわけ高市早苗氏を中心とした自民党内の保守的な潮流と、自然と重なって見えてきます。
「強い日本」「守り抜く国家」「覚悟ある政治」。
明確で力強い言葉は、人々の不安をすくい取り、希望を与える一方で、私たち自身の思考を止めてしまう危うさも併せ持っています。


AI秀吉の最後の言葉――独裁はいつも“正論”の顔をして現れる

映画の中で、その危うさを最も鮮烈に体現しているのが、AI豊臣秀吉です。
歴史上でも「人たらし」と称された秀吉は、劇中でも卓越した発信力で世論を動かします。デジタル技術や演出を駆使し、国民の不満を一気に期待感へと塗り替えていく姿は、現代のSNS政治そのものに見えました。

そして物語の終盤、AI秀吉は、強烈な言葉を残します。

このわしの何が悪い?
わしは、この時代に来て驚いた。
この時代の者たちの愚かさ、無力さ、己のことのみ考え、利にだけは敏感で、国を守ることなど興味も持たぬ。

みんなで話し合ってでなければ、何一つ決められん。そんな馬鹿げたことがあろうか。
おぬしも、腹の底ではそう思っておる。

この国の指針を決めるのに、愚かな民ではなく、優れた武将が一人いればいい。それが、真の姿だ。
その姿にこの日本を戻さねばならぬ。

己一人では何一つ決められぬ思考の停止した民たちも、このわしが導いてやろうと言っておるのじゃ。
民たちもそう望んでおる。

政治(まつりごと)を民に任せるから、このような貧相な国になったんじゃ。
そもそも、選挙の投票率はいくつじゃ?
民に任せたとて、誰もまつりごとには興味などは無い。

能なしのお前たちは何も考えずともよい。
このわしが、お前たちのすべてを決めてやる。

だからお前たちは、そのわしの言うことに黙って従っていればいいのじゃ。
わかったか?

この台詞は、過激で乱暴な独裁者の言葉に聞こえます。
しかし同時に、この言葉が、私たちの社会に蔓延する苛立ちや諦めを、驚くほど正確に言い当てていることにも気づかされます。

話し合いは面倒。民主主義は遅い。投票率は低い。多くの人は政治に無関心。

確かに、その通りかもしれません。
しかし、だからといって「優れた誰か一人にすべてを任せればいい」という結論に飛びついた瞬間、民主主義は静かに、しかし確実に壊れていきます。

独裁は、いつも暴力ではなく、「もっともらしい正論」の顔をして現れます。
このAI秀吉の言葉は、映画の中のフィクションでありながら、現代においていつでも現れ得る思想なのだと感じました。


「もしも徳川家康が総理大臣になったら」は、高市政権へのアンチテーゼ?

一方で、徳川家康が象徴しているのは、熱狂のあとに必要となる「制度」と「抑制」です。
家康は、今この瞬間の喝采よりも、数十年先、数百年先の国家の骨格を見据えます。
秀吉が空気を動かす存在だとすれば、家康はその熱量を受け止め、社会の仕組みに落とし込もうとする存在です。

この対比は、現代政治にもそのまま当てはまります。
発信力やカリスマ性だけでは、国は長く持ちません。
同時に、制度や理屈だけでも、人々の心は動きません。
問題は、そのバランスを誰が担い、どこまで権力を委ねるのかという点にあります。

この映画が私たちに突きつけている最大の問いは、
「私たちは、本当に自分たちで決める覚悟があるのか」
という一点だと思います。

民主主義は、時間がかかり、面倒で、不格好な仕組みです。
しかし、その不器用さこそが、多様な声をすくい上げ、暴走を防ぐための唯一の装置でもあります。
それを「遅い」「無駄だ」と切り捨てた先に待っているのは、効率的ではあっても、自由のない社会です。

私はこの映画を、現在の高市自民党政治へのアンチテーゼとして受け取りました。
それは、特定の政治家を単純に否定するという意味ではありません。
「強さ」や「覚悟」に惹かれる自分自身の内面を、一度立ち止まって見つめ直すための作品だということです。

未来をつくるのは、AIで蘇った英雄ではありません。
いまを生きる私たち一人ひとりが、考え、悩み、対話を重ねることでしか、この国のかたちは決まりません。
民主主義とは完成された制度ではなく、考え続けることでしか維持できない、極めて壊れやすい営みなのだと、この映画は静かに教えてくれました。

映画「もしも徳川家康が総理大臣になったら」公式HP
https://moshi-toku.toho.co.jp/

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井手よしひろです。 茨城県の県政情報、 地元のローカルな話題を 発信しています。 6期24年にわたり 茨城県議会議員を務めました。
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