
11月25日、斉藤鉄夫代表が提出した「非核三原則」に関する質問主意書に、政府が答弁書を示しました。回答は閣議決定を経た正式な見解であり、その重さは予算委員会の口頭答弁とは比べものになりません。
その答弁書で、政府は改めて、「非核三原則を政策上の方針として堅持している」と明言しました。これは、揺れ動く国際情勢の中で、日本の核政策が“いま変わったわけではない”という重要な確認です。
しかし、問題はその先にあります。
非核三原則の将来について問われた部分で、政府は次のように述べています。
「現段階では、政府としては非核三原則を政策上の方針として堅持しております」
この「現段階では」という言葉に、どうしても強い違和感を覚えます。
非核三原則は、半世紀以上にわたり日本の平和国家としての礎となってきた原則です。本来であれば、政府は迷いなく「今後も堅持する」と答えるべきです。ところが今回は、あえて“時間的条件”をつけるような表現になっていました。
もちろん、「現段階では」という一言に過剰反応しすぎる必要はないのかもしれません。しかし、昨今の安全保障議論の変化を見ていると、この言葉が偶然に選ばれたとは思いにくいものがあります。
核共有論、敵基地攻撃能力の拡大、憲法改正議論――こうした流れの中で、非核三原則も“見直し論”の俎上に載せようとする空気が生まれつつあることを、私たちは見逃してはならないと感じます。
だからこそ今回、斉藤代表が質問主意書という公式な形で政府の姿勢を問いただしたことには大きな意義があります。政府は明確に「堅持」と答えざるを得なかった。
これは、公明党が長年守り続けてきた“核なき日本”の理念を、国として改めて確認させたという意味を持ちます。
では、公明党の非核三原則への立場はどういうものなのか。
公明党は結党以来、非核三原則を 「平和国家の根幹」「外交上の信頼の柱」「核政策の最後の歯止め」 として、どんな時代でも揺るがせてこなかった政党です。被爆者支援や核軍縮外交に取り組んできた歴史を持ち、核兵器の悲惨さを深く認識している政党だからこそ、非核三原則は党のアイデンティティそのものと言えます。
その視点に立てば、政府の「現段階では堅持」という表現は、あまりにも弱い。
非核三原則は“今のところ維持する政策”ではありません。
世論の動きや国際情勢によって振れ動かしてよいものでもありません。
むしろ、「日本は核兵器を持たない。これは未来にわたって揺らがない国家の原則である」と明確に言い続けることこそ、日本外交の信用と地域の安定を守る道です。
その意味で、今回の質問主意書は、公明党が政府に対して“原則を守り抜く姿勢を迫った”局面だったともいえます。
政府答弁の言葉選びに含みが感じられる今だからこそ、公明党が非核三原則を守る最後の砦として存在していることは、極めて大きな意味を持ちます。
公明党の斉藤代表は、11月26日行われる高市首相との初の党首討論で、この非核三原則の問題を取り上げると語りました。
これからもこの議論を注視しながら、非核三原則を日本の未来に確実に引き継ぐための努力を、私たちも続けていかなければならないと強く感じています。
非核三原則に関する公明党斉藤代表の質問主意書
令和七年十一月十三日提出
質問第七二号
非核三原則に関する質問主意書
提出者 斉藤鉄夫
一 日本国は、今日まで「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という非核三原則を国是として堅持してきた。この非核三原則が、日本、周辺国の平和と安定に果たしてきた役割について、どのように考えているか。
二 令和六年十二月三日の衆議院本会議において、石破茂前総理大臣は、非核三原則について「政策上の方針として堅持いたしており、これを見直すような考えはございません」と答弁されているが、この方針に変更はあるのか。
三 安全保障環境の変化を踏まえ、安保三文書の改定が想定されているが、その中で、この非核三原則の方針を変更する考えはあるのか。
四 日本は唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約の締約国会合や再検討会議へのオブザーバー参加をすべきと考えるが如何か。
五 核兵器のない世界を目指すという目標において、非核三原則の堅持と核兵器禁止条約への対応という二つの方向性を、今後どのように具体的に両立させていく方針なのか。高市内閣の明確な見解を示されたい。
右質問する。
非核三原則に関する公明党斉藤代表の質問主意書に対する回答
内閣衆質二二九第七三号
令和七年十一月二十五日
衆議院議員斉藤鉄夫君提出非核三原則に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
内閣総理大臣 高市 早苗
内閣
衆議院議員斉藤鉄夫君提出非核三原則に関する質問に対する答弁書
一について
お尋ねの「非核三原則」が、日本、周辺国の平和と安定に果たしてきた役割」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、令和四年四月二十日の衆議院外務委員会において、林外務大臣が「当時が非核三原則でございますが、唯一の戦争被爆国として我が国の立場を踏まえまして、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずとの点を歴代内閣が政策として明らかにしてきたものでございます。」と答弁しているところ、いずれにせよ、我が国は戦後一貫して、平和国家として歩み、憲法の基本原則の一つである平和主義の理念の下で、我が国及び国際社会全体の平和及び安全のために最善を尽くしており、こうした立場に変わりはない。
二及び三について
高市内閣としては、令和七年十一月十一日の衆議院予算委員会において、高市内閣総理大臣が「現段階で、政府としては非核三原則を政策上の方針として堅持しております。」、「戦略三文書の見直しについては、指示をしたところでございます。これから作業が始まります。今、断言する、これはこのような書きぶりになるということを申し上げるような段階ではございません。」と答弁しているとおりである。
四について
お尋ねについては、令和七年十一月五日の衆議院本会議において、高市内閣総理大臣が「核兵器禁止条約へのオブザーバー参加につきましては、国際社会の情勢を見極めつつ、我が国の安全保障の確保と核軍縮の実質的な進展のために何が真に効果的かという観点から慎重に検討する必要があると考えます。」と答弁しているとおりである。
五について
お尋ねの「二つの方向性を、今後どのように具体的に両立させていく方針なのか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、非核三原則について並びに二及び三についてで、お尋ねの「核兵器禁止条約への対応」については四についてでそれぞれ述べたとおりである。
