重大な健康被害を及ぼすにもかかわらず、その成分が「麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)」で禁止されていないため、あたかも違法でないかのごとく出回っていた、いわゆる“脱法ドラッグ”への規制が本格化し始めました。
東京都は、脱法ドラッグの拡大を食い止める全国初の薬物乱用防止条例を2005年4月に施行しました。6月1日からは罰則(2年以下の懲役または100万円以下の罰金)もスタートさせ、実質的な規制を開始しました。一方、厚生労働省は薬事法による取り締まり強化とともに、有識者による対策検討会で法改正も視野に入れた報告を10月までにまとめる予定です。「脱法ドラッグは『違法』」との認識を早急に浸透させ、麻薬などと同様に「ダメ。ゼッタイ。」という考え方を定着させることが必要です。
全国初の薬物乱用防止条例、知事指定薬物を指定:東京都
都の条例は、麻向法などで規制されていなくても、興奮、幻覚、陶酔などの作用があり、人体に健康被害をもたらすものを「知事指定薬物」と定めることで、実質的に脱法ドラッグの製造・販売などを禁止したものです。5月25日に、麻薬と同様な幻覚・興奮作用があり、吐き気や不眠などの健康被害が疑われる「5―MeO―MIPT」「2CⅠ」「MBDB」の3種を初の「知事指定薬物」に指定しました。
その上で、6月1~3日の3日間に、延べ130人の都薬事監視員が渋谷、新宿、池袋などの脱法ドラッグ販売店121店鋪に立ち入り調査を実施(うち32店鋪が廃業・移転、9店鋪が閉店)。その結果、「知事指定薬物」の取り扱い店鋪はなかったものの、55店鋪で何らかの薬物と疑われるものの扱いが確認されました。
今後、営業していなかった店鋪を再調査し、各店舗とも定期的な監視を行うとともに、試買調査を実施して都健康安全研究センターで薬物の成分を分析し、問題となる成分が検出されれば、「知事指定薬物」として順次、指定する方針です。
現在、麻向法で指定される麻薬は143種、向精神薬は79種。同法は、極めて有害な薬物を規制し、最高で無期懲役の厳しい罰則を科されています。その分、規制対象の指定には、その有害性や依存性に関する慎重な審査を要するため、年単位の期間がかかるのが実情です。
これに対し都の「知事指定薬物」は、特に審査に時間がかかる依存性の有無は考慮せず、健康被害を中心に検討するため、早期に指定できることに特徴があります。
薬事法上、すべて「違法」取り締まり強化を通知:厚労省
厚労省も、脱法ドラッグの抑え込みに向けた取り組みを本格化させています。
まず、麻薬指定の根拠となるデータに乏しい脱法ドラッグについて、その依存性や精神毒性に関し、独自に動物実験などの評価試験を行うための経費を2005年度予算で確保し、速やかな麻薬指定に取り組む体制を整え始めました。
また、2月に47都道府県に「脱法ドラッグへの指導取り締まり強化」を通知。具体的には、どんな使用目的を表示していても、事実上、人体への摂取を目的に販売され、その販売の方法や場所、製品の成分や形状などを総合的に見て「人体の構造や機能に影響を与えることを目的に製造・販売している」と判断できる場合は、薬事法上の「無承認無許可医薬品」に該当するとして、規制対象になるとの見解を明らかにしました。
つまり、「アロマ」「お香」「芳香剤」「ビデオクリーナー」などと表示して売られていても、脱法ドラッグと判断できれば、「無承認無許可医薬品」として規制対象にできるわけで、厚労省は「脱法ドラッグは薬事法上、すべて違法」(監視指導・麻薬対策課)と強調しています。
こうした見解に基づき、厚労省と横浜市は4月13日、「無承認無許可医薬品である脱法ドラッグを販売していた」として横浜市内の雑貨店に立ち入り検査を実施。店内にあった57製品、約3700個の脱法ドラッグを廃棄させました。
さらに、2月に設置した有識者による「脱法ドラッグ対策に関する検討会」では、より効果的な対策強化に向け、麻向法や薬事法の改正も視野に入れた検討を進めています。
茨城県でも公明党が脱法ドラック対策強化をリード
脱法ドラッグについて公明党は、麻薬や覚せい剤などへの「ゲートウェー・ドラッグ(入門薬)」にもなるとして、都議会公明党が都の規制条例の早期制定を強力に推進しました。一方、党青年局は、2005年春、脱法ドラッグを含む薬物乱用対策の強化を求める署名運動を首都圏で展開し、4月11日には約4万8000人分の署名簿を添え、尾辻厚労相に要請を行いました。また、党厚労部会内に脱法ドラッグ対策検討ワーキングチームを発足させ、厚労省との意見交換などを重ねています。
茨城県においても井手よしひろ県議が、2001年10月12日の県議会総務企画員会で、「脱法ドラッグ」の一種であるマジックマッシュルームについて、その規制の県に質すなど、先導的な役割を果たしてきました。
参考:マジックマッシュルームの規制を提案