3月31日、民主党の前原誠司代表は、永田寿康衆院議員の送金メール問題で混乱を招いた責任をとって、党代表を辞任する意向を表明しました。前原代表の辞任に伴って、鳩山由紀夫幹事長ら執行部も総退陣することになりました。民主党は、4月7日の両院議員総会で新代表を選出する予定です。
人心一新が必要と判断 前原代表、会見で改めて辞任表明
民主党のホームページより(ニューストピック 2006/3/31)
前原代表は、「先ほど両院議員総会において、私から代表を辞したいということを申し上げ、ご了解をいただいた」とし、「今回、『メール』問題については、永田議員が取り上げた問題だったが、私自身、党首討論等で取り上げ、また、3月一杯までこの問題を引きずるという対応になったのも、全て私の責任だと思っている」と言明。
「この問題を打開し、野党第一党としての責任を果たし、国民の信頼を本気で取り戻し、次の総選挙で政権交代ということを腹の底から訴えていくためには、人心一新が必要だと考え、自ら代表を辞し、一議員となってもう一度、しっかり一から出直し、がんばっていきたい。誰が代表になられても一生懸命支えていきたい」と語った。そして、国民の皆さま方に「ご心配をおかけし、ご迷惑をおかけしたことを、お詫び申し上げたい」と述べた。
一方、議員辞職を拒んでいた永田寿康衆院議員は、民主党の説得を受け入れ、31日午後、河野衆院議長に議員辞職願を提出しました。4月4日の衆院本会議で辞職が許可される見込みです。
また、この日、偽メール問題の調査報告書を公表しました。これによると、永田議員は野田佳彦前国対委員長と相談し、メール情報を仲介した西澤孝氏に現金1000万円の提供を検討していました。
民主党「メール」問題検証チームによる報告書
(民主党第367回常任幹事会(報告事項)2006年3月31日より抜粋)
3)2月19日(日)、西澤氏から、永田議員に対し、「『情報提供者』が情報の電磁的データを売ってもいいと言っている」との連絡があった。野田国対委員長は、『情報提供者』の存在を確認するため、瀬踏みを掛けたが、確認はできなかった。
①2月19日(日)、永田議員は、野田国対委員長に対し、「未明に西澤氏から電話連絡があった。珍しく『情報提供者』から西澤氏に電話があり、高飛びも考えているような状況なので、場合によっては『情報提供者』が持っている様々な情報が入力されているハードディスクやメールの電磁的データをコピーしたハードディスクを売ってもいいと言っている」と報告し、「西澤氏を通じて『情報提供者』と具体的な交渉に入っていいか」と相談した。
②これに対し、野田国対委員長は、金銭の話が出てきたことをいぶかしんだが、「『メール』の信憑性の立証が困難を極めるなか、それが『情報提供者』の存在を確認できる唯一の手段ならば、瀬踏みを掛けても交渉の余地は残した方がいい」と考え、永田議員に対し、「西澤氏と『情報提供者』とハードディスクを保護下に置くことが最優先」であり、「西澤氏と『情報提供者』を職員として雇用して生活を保障することも考える」、「『情報提供者』との交渉には自分が出向く」と述べた。
③また、永田議員は、野田国対委員長に対し、「自分で1,000万円程度は用意できる」と述べた。これに対し、野田国対委員長は、「必要なら、党でそれくらいは何とか用意できる」と述べた。
④永田議員は、西澤氏に対し、その条件で「情報提供者」と交渉に入りたい旨を伝えた。これに対し、永田議員によると、西澤氏は、「永田議員に経済的に迷惑をかけるわけにはいかない。民主党ならば少しは気が楽だが、それでも受けるわけにはいかない。経済的な負担は自分で賄うから心配するな」と述べた。
⑤西澤氏から金銭の話が出てきたことを受け、野田国対委員長は、原口議員に対し、改めて西澤氏の身辺を徹底的に洗うよう指示した。午後遅く、原口予算委員は、野田国対委員長に「西澤氏の評判がすこぶる悪い」と報告した。それを受け、野田国対委員長は、永田議員に対し、独自の判断と行動は慎み、西澤氏や「情報提供者」とのやりとりは逐次報告して判断を仰ぐよう指示した。
⑥その夜、野田国対委員長は、顧問弁護士から、「偽情報に金銭を支払うことになれば、相手が詐欺罪を構成するので、情報を買うようなことはすべきでない」との助言を受け、交渉を通じた「情報提供者」の存在の確認を断念した。
永田議員の議員辞職は当然としても、民主党役員の総退陣という大きな問題に至った原因は、民主党の危機管理能力の乏しさです。言い古された格言ですが、「戦いにおいて『兵力の小出し』は、負けるための最大の戦法」です。2月下旬には、前原代表は辞任を覚悟していたと語っていますので、その時点で自らの辞任と永田議員の辞職を決めていれば、民主党への国民の信頼はある程度つなぎ止められてかもしれません。自らの名聞名利のために『政治』を利用した者の末路を注目したいと思います。

(2009/1/3更新)
永田寿康・元民主党衆院議員は、北九州市のマンションから飛び降り自殺しました。マスコミ報道によると、08年11月からこのマンション近くの病院で精神疾患の治療に当たっていたということです。(合掌)
偽メール事件で辞職の永田元議員が自殺、遺書残し飛び降り
読売新聞(2009/1/3)
(2009年1月)3日午後6時25分頃、北九州市八幡西区里中3のマンション(11階建て)の駐車場で、偽メール問題で2006年に議員辞職した永田寿康・元民主党衆院議員(39)が倒れているのを住民が見つけた。
病院に搬送されたが、死亡が確認された。
福岡県警八幡西署によると、10階と11階の間の階段の踊り場でノートに書いた遺書が見つかった。同署は飛び降り自殺したとみて調べている。永田元議員は昨年11月から、マンション近くの病院に精神疾患で入院していたという。
永田元議員は2006年2月、衆院予算委員会で、当時のライブドア社長が、自民党幹部の家族への送金を指示したとする電子メールを取り上げたが、後にメールが偽造と判明し、同年4月に議員辞職した。
永田元議員は2000年6月の衆院選で、千葉2区から初当選。以後、2回当選し、民主党調査局次長などを務めた。