日本では現在、3人に1人が、がんで亡くなっています。将来は、2人に1人に増えると言われています。欧米では、国家戦略としてがん撲滅に取り組み、がんで亡くなる人が急速に減っているのに対して、日本ではがんで死亡する人の統計も未整備な状態です。公明党は、日本でも国家戦略として、がん対策に全力で取り組む必要があるとし、通常国会に「がん対策推進法」を提出し、成立をめざす方針です。
がん対策の中でも、今注目を浴びているのが、放射線によるがん治療です。
がん治療は、手術、抗がん剤治療、放射線治療の3本柱からなり立っています。従来日本では、がん治療は外科的切除手術が中心に行われた経緯があり、放射線治療は末期がんの治療といった誤解が生まれています。欧米ではがん患者のおよそ半数が、放射線治療を受けています。
②末期のがんを切らずに根治させる
③高齢者でも可能
④がん患者の4人に1人が受けている
10年後は2人に1人
日本人の4人に1人が放射線治療を経験
⑤末期がん患者に使うとの誤解がある
全身状態のよくない患者でも施行可能
⑥症状の緩和にも有効
(写真は、レクセル社のガンマナイフ:Model-C。脳腫瘍や脳血管障害を放射線によって治療する機器。患者は寝台に横になり、放射線が照射されるガントリーに頭部を入れて治療を受けます)
放射線治療は、放射線を使ってがん細胞をたたくもので、がん病巣の場所や深さによって放射線が使い分けられます。治療に使われる放射線は主にX線、γ線、電子線で、そのほか陽子線、重粒子線が研究段階で使われています。治療法は体の外から病巣を狙い放射線を照射する体外照射法のほか、放射線を出す小さなカプセルなどを病巣近くに埋め込んだりする密封小線源治療があります。
放射線には、がん細胞が分裂して数を増やす能力をなくしたり、がん細胞そのものを殺す力がある一方で、正常細胞にも同様の作用を及ぼします。しかし、正常細胞はがん細胞より障害の程度が軽く、放射線照射前の状態に回復することがほとんど。がん細胞にはこの回復力がありません。このため放射線治療は、一般的には20、30回に分けて行われ、正常細胞の回復を図りながら、がん細胞だけを徐々に殺していきます。
放射線治療の1回の治療にかかる時間は10分程度。そのうち照射している時間は数秒から数分で、痛みなどはまったくなく、通院で治療もできます。つまり放射線治療は、がん治療の中で副作用が少なく患者への負担も軽い療法といえます。
放射線治療では、放射線をがん病巣だけに集中できれば、がんは100%治るとされます。コンピューターの登場でCT撮影が可能となり、放射線治療医は「強力な目」を持つことになりました。CTからの情報をもとに、がんの形に合わせて放射線のビームを形づくったり、さまざまな方向から病巣にビームを集中的に当てる「定位照射」が普及しつつあります。がん病巣へミリ単位の精度で照射が可能になってきています。
放射線治療はこれまで、再発、転移したがんに照射して症状を緩和したり、手術と併用し治療効果を挙げたりすることが主な役割でした。それに加えて最近では、その効果が正しく評価されるようになり、手術に代わって放射線治療を主体にしながら治癒をめざす部位も増えています。脳腫瘍や食道がん、乳がん、子宮頸がん、前立腺がんなどが、放射線治療の効果が高い部位となっています。
がん患者の高齢化が進み手術に耐えられない患者が増えるなか、切らずに治す放射線治療が、治療の主役の一つとして注目を集めています。