若干、旧聞に属しましますが、2006年のノーベル平和賞は、バングラデシュのグラミン銀行とその創設者であり総裁のムハマド・ユヌス博士に贈られることが決定しました。グラミン銀行が受賞に値すると評価された理由は、30年にわたる活動がバングラデシュの貧困撲滅に貢献しただけではなく、貧困者への金融モデルとして世界的にも認知されてことによるものといわれています。
ユヌス博士が創造したシステムは「マイクロクレジット」と呼ばれています。マイクロクレジットは、貧困層(特に女性)向けの少額無担保融資システムです。利用者は少額の融資を元手に、家畜の飼育、竹・藤細工、野菜づくり、雑貨販売など500種を超える経済活動を行います。最近では携帯電話のレンタル業なども取り扱われています。
このシステムの特徴は、概ね以下の6つに集約されます。
①5人が1つのグループをつくり銀行の「メンバー(借り手)」となる。
②各人が融資を受け、個人の計画に従い返済する。様々な返済方法が用意されており、一般的には週払いの1年返済が多い。
③メンバーは決まった曜日・時間に集会を持つ。
④その集会にグラミン銀行の行員が出向き、返済金回収・貯蓄などの銀行業務を行いながら、さまざまな問題をメンバーと話し合い助言する。
⑤利息は年利20%程度である。
⑥メンバー(借り手)は、一人ひとりがグラミン銀行の株を1株づつ所有する株主になる。
つまり、メンバーの連帯と銀行のメンバーの支援が相まった注目すべきビジネスモデルです。
2006年9月現在、メンバー数は668万人(うち女性が645万人:96.6%)、累積融資額6800億円、返済率98.9%、貯蓄総額673億円(うちメンバーの貯蓄額は425億円:63.2%)という実績が公表されています。
グレー金利の廃止論争が一段落し、消費者金融が新たな時代を迎えようとしている日本でも、グラミン銀行の取り組みは大きな示唆を与えてくれる思われます。