「骨髄提供者に10万円」計画、移植財団は抗議も検討
朝日新聞(2006/12/28)
骨髄移植推進財団(東京)は12月28日、京都市の任意団体が骨髄移植のドナーを募り、実際に骨髄を提供した場合に10万円を支払う活動を計画しているとして、財団の骨髄バンク事業とは一切関係ないとする声明を発表した。来年1月にも厚生労働省と協議し、団体に事業内容の説明を求めたうえで、抗議なども検討するという。
この団体は、京都市の自営業者や会社員ら約10人でつくる「デラピ」。現在、NPO法人の認可を京都府に申請中だ。
団体は、骨髄移植推進財団が運営する骨髄バンクに登録するか、登録を予定する人を年会費5000円でインターネットなどで募集。実際にバンクに骨髄を提供した場合は、ドナーを経済的に支援するため、団体が10万円の一時金を支払う、としている。
財団は「公平性、公共性、広域性をうたう骨髄バンク事業の基本理念に抵触する恐れがある」として、この団体と協力関係を結ぶことはないとしている。財団は「こうした活動は、結果として臓器売買を助長する可能性もある」と話している。
京都市山科区に事務所を置く「デラピ(DLP)」という団体です。06年9月に設立され、「骨髄提供時のドナーの経済的負担を支援することにより、骨髄提供率の底上げを図り、白血病医療に寄与する」ことを目的に活動しています。現在、NPO法人の認可を京都府に申請中です。
デラビは、骨髄移植推進財団が運営する骨髄バンクに登録するか、登録を予定する人を年会費5000円でインターネットなどで募集しています。実際にバンクに骨髄を提供した場合は、ドナーを経済的に支援するため、団体が10万円の一時金を支払う、としています。
これに対して骨髄移植推進財団は、12月28日に、デラビと一切関係がないことを公表しました。更に、1月5日には、骨髄バンク事業に関係者に配付した資料によると、「説明員や地区普及広報委員を認定することはない」と、デラピと明確に一線を画すことを宣言しています。
骨髄バンクや臍帯血移植、献血なども含めて移植医療に金銭が絡むと、それ自体きな臭いにおいがしてしまいます。
デラピの活動はどのような財源で支えられているのでしょうか?「骨髄ドナーの登録者は26万人を超えました。しかしながらドナーの骨髄の提供率は3%に満たない現状です」と、デラピのHPに掲載されていますので、計算上は確実に2%以上の留保金が出る計算になります。退会時には、賛助会員の入会金は5000円は返金されるとなっていますが、そもそもインターネットからの会員登録は賛助会員の入会登録なのか、正会員への入会登録なのかHP上では一切説明されていませんでした。(正会員は毎年会費を納める義務があり、入会金も返還されません)
篤志家が身銭を切って骨髄移植への金銭的支援を行っていただけるという趣旨なのであれば、大変ありがたいことです。しかし、デラビのシステムがどのようなものか、もう少し詳細な説明があっても良いような気がします。それが不十分な現状では、骨髄移植推進財団の反応は十分理解できるものです。


NPO法人を名乗る団体の事業について
骨髄移植推進財団のプレスリリースより(2006/12/28)
NPO法人を名乗る京都府の団体が、ホームページを開設し、骨髄提供時のドナーの支援として、入会費を支払うことで会員となり、その会員が骨髄バンクのドナーとして骨髄提供した場合、「レスペクトボーナス」という一時金を支払うという事業を行っています。
骨髄移植推進財団(東京都千代田区、理事長:正岡徹)は、この団体およびレスペクトボーナスと称する事業に関しましては、一切関係ございませんので、お知らせ申し上げます。
当財団は白血病などの血液難病の患者さんを骨髄移植によって救うため、平成3年12月18日に設立されました。以来「公平性・公共性・広域性」を事業の基本理念として活動を続けています。
この団体で行なわれている事業は、当財団の事業の基本理念に抵触する恐れがあると思われますので、今後も協力関係になることは一切ございません。
12月28日 日本骨髄移植推進財団 プレスリリースについて
デラピのHPより
先日、12月28日に、日本骨髄推進財団様の、プレスリリースに当団体につきまして、発表がありました事につきまして、デラピと致しましての意見を述べさせて頂きます。
当団体は平成18年9月15日に発足致しました。「私たちに出来る事」「私たちにしか出来ない事」それをテーマに現在の骨髄移植医療に貢献したい。そんな思いで、団体を設立いたしました。
昨年9月22日、朝日新聞の記事に「骨髄ドナー、辞退相次ぐ 「適合」後に負担痛感」の見出しが躍りました。
ドナー登録はしたものの、提供に踏み切れない大きな理由の一つとして、経済的な理由があげられます。現在骨髄移植できる年齢は18歳から54歳までとなっています。この年代の方の殆どは、現在仕事をされているか、家事や育児に毎日を忙しくされている人たちです。
善意の気持ちを持って、ドナー登録された後、実際提供のチャンスが巡ってきた時、仕事や育児の手を止める事が可能な人がどれ程居られるでしょう。
骨髄提供を理由に会社を休める人がどの位いるのか。自営業の人たちはどうするのか。育児をされている方は、その間どうするのか。骨髄移植はボランティアで行われるもので、それが当然だとも思います。しかし、折角のボランティアも経済的な理由で断念するのは、非常に残念です。
我々の「レスペクトボーナス」は上記の理由により、折角の善意の志を無駄にしないように、考え出したシステムです。
レスペクトボーナスの10万円という支給額につきましては、3~5日程度の入院期間を要する事、移植までに行われる数回の検査等に掛かる全ての日数を考慮し出したものです。
我々の団体は、現在、NPO法人の申請中です。現在の活動はスタッフによる、ボランティア活動、骨髄バンク登録への啓発活動などが、主な活動となっております。財団様にはご指導を仰ぎたく、ご挨拶をさせて頂いた段階でのプレスリリースは、非常に残念ですが、志を変えることなく、これからも活動してまいります。
今後も我々は、白血病などで骨髄移植を必要とする人たちの為に、頑張ってまいります。一人でも多くの方に、デラピの活動に賛同していただけるよう邁進してまいりますので、何卒皆様のご理解賜りますよう、宜しくお願いいたします。