12月2日開催された茨城県議会保健福祉委員会では、「『子ども手当』創設に関する意見書」を発議することが決まりました。
鳩山新政権は、来春4月から「子ども手当」を導入する準備を進めています。中学卒業までの子どもに月額2万6000円(平成22年度は月額1万3000円)を支給する制度に、子育て家庭から期待する声も多いことも事実です。
しかし、民主党の衆院選マニフェスト通りに実施するためには、来年度が2兆3000億円、23年度以降毎年5兆3000億円の財源を確保しなければなりません。
経済協力開発機構(OECD)は、日本の政策課題達成に向けた提言を発表し、この「子ども手当」について、「目的と対象を再検討すべきだ」と指摘しています。就学前教育・保育や、幼児を持つ母親への支援、奨学金制度の充実などを「子ども手当」の実施よりも優先すべきだとの考えを示しています。
また、所得制限や地方負担をめぐる政府の方針も定まっていません。万が一、財源に地方の負担が求められるような事態になれば、その影響は計り知れず、茨城県議会としても看過できない重要な問題です。
さらに、「子ども手当」の財源の一部として、所得税や住民税の配偶者控除や扶養控除の廃止、特定扶養控除の縮減などの増税の議論も進められています。子どもがいない家庭や「子ども手当」の対象外の家庭にあっては、まさに大増税の議論であり、到底、県民の納得を得られるものではありません。
こうした観点から、「子ども手当」創設にあたっては、慎重な国会での議論と、国と地方との意見調整、そして何よりも国民の理解と協力が必要です。拙速な結論は国益を損ない、将来の日本の政治や行政に大きな禍根を残すものと危惧されます。
したがって、茨城県議会としては、地方自治法第99条に則り、3つの項目を鳩山政権に求めるものことが必要と判断しました。
その第1点は、「子ども手当」の導入を平成22年度実施に拘らず、制度自体の目的を明確にし、制度の綿密な設計や財源確保策などを慎重に検討すること。第2点は、財源確保策として、子どもがいない家庭や「子ども手当」の対象外の家庭に対する増税等の負担増は、納税者の理解を十分に得られる内容とすること。第3点として、「子ども手当」の財源負担に関しては、当初の計画通り地方自治体の負担を求めないこと。
また、井手よしひろ県議が要求した「子ども手当」と「児童手当」の茨城県分の負担比較が執行部より提出されました。
1,366億7000万円(初年度は683億4000万円)
※仮に児童手当並みの地方負担を求めた場合の試算
県負担分 400~450億円
市町村分負担 400~450億円
235億円
県負担分68億円
市町村負担分68億円
区分 | 国 | 県 | 市町村 | 事業主 | |
3歳未満 | 被用者 | 1/10 | 1/10 | 1/10 | 7/10 |
非被用者 | 1/3 | 1/3 | 1/3 | ||
特例給付 | 10/10 | ||||
3歳以上 小学校修了前 | 被用者 | 1/3 | 1/3 | 1/3 | |
非被用者 | 1/3 | 1/3 | 1/3 |
「子ども手当」創設に関する意見書
政府は、平成22年度より、「子ども手当」を創設する準備を進めている。中学卒業までの子どもに月額2万6,000円(平成22年度は月額1万3,000円)を支給する制度に、子育て家庭から期待する声も多い。
しかし、この制度を実施するためには、来年度が2兆3,000億円、平成23年度以降は毎年5兆3,000億円の財源を確保しなければならない。
経済協力開発機構(OECD)は、日本の政策課題達成に向けた提言を発表し、この「子ども手当」の創設よりは、就学前教育・保育や幼児を持つ母親への支援、奨学金制度の充実などを優先すべきだとの考えを示している。
また、政府内からは、所得制限や地方に財政負担を強いる発言も出ている。万が一、財源に地方の負担が求められるような事態になれば、その影響は計り知れず、地方財政が厳しい中にあって看過できない重要な問題である。
さらに、所得税の配偶者控除や扶養控除の廃止など所得税改革の議論もある。「子ども手当」の財源を確保するには、手当の創設と、公平かつ透明な税制改正による見直しの影響を考慮し、納税者である国民への説明が欠かせない。
こうした観点から、「子ども手当」創設にあたっては、手当の使われ方も含め、慎重な国会での議論と、国と地方との意見調整、そして何よりも国民の理解と協力が必要である。
よって、政府においては、以下の事項について特段の配慮がなされるよう、強く求めるものである。
記
- 「子ども手当」創設にあたっては、平成22年度実施に拘らず、制度自体の目的を明確にし、制度の綿密な設計や財源確保策などを慎重に検討すること。
- 「子ども手当」の財源確保策として、子どもがいない家庭や「子ども手当」の対象外の家庭に対する影響も考慮し、納税者の理解を十分に得られる内容とすること。
- 「子ども手当」の財源負担に関しては、当初の計画通り全額国費とし、地方自治体の負担を求めないこと以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成21年12月 日
茨城県議会議長 葉梨 衛(提出先)
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
厚生労働大臣
財務大臣