9月9日、公明党は東日本大震災からの本格的な復旧・復興に向けた今年度第3次補正予算の編成などを念頭に、「震災復興および経済対策に必要な予算に関する提言」を発表し、政府に申し入れました。
そのポイントは、東日本大震災からの本格的な復旧・復興対策の約9兆5000億円と、当面の円高対策を含む総合経済対策の約4兆円が大きな柱となっています。これに併せ、今年度第1次補正予算で流用された年金財源の約2兆5000億円(基礎年金の国庫負担割合を2分の1に維持するための臨時財源)を確保するよう求めています。総合経済対策と年金財源の確保は3次補正で対応し、復旧・復興対策は3次補正のみならず、今後の予算に盛り込むべき内容を提示しました。
復興財源としては、復興の主体者である被災自治体にとって使い勝手の良い「復興一括交付金」と「復興基金」の創設を求めています。道路や鉄道、港湾、漁港などインフラ(社会資本)の復旧・復興には4兆円超を確保し、三陸沿岸道路の早期整備(1兆円)などを計上しています。住宅、生活、産業の再建支援も急務です。津波被害で居住できなくなった区域の土地の買い上げや借り上げに必要な予算の確保と、集団移転を促す「防災集団移転促進事業」の補助率かさ上げなども盛り込みました。産業再建では、早期復旧が困難な被災農地の買い上げや、農業と水産業の復興基金創設(各3000億円)などを明記しています。
福島県を中心に原発事故の万全な対応もポイントです。放射線量の高い地域の除染(想定額2.3兆円)を実施し、最終的には東電に費用を請求します。放射性がれきの処理(想定額1兆円)も同様です。耕作が不適となった農地を活用したメガソーラー・プロジェクトなど、地元の独自事業を後押しする「福島復興再生基金」の創設も盛り込みました。全国的な防災・震災対策として、学校や社会福祉施設の耐震化などを明記し、特に国公立学校の耐震化率については90%までの引き上げをめざします。
また、4兆円規模の総合経済対策を提案しています。急激な円高に対応するため、中小企業、雇用、産業空洞化の対策実施を求めています。中小企業対策は資金繰り支援策の充実(1兆5500億円)が柱。雇用対策では、各種基金の積み増しと期間延長などを求め、産業空洞化対策では、生産拠点や研究開発拠点の国内立地を推進する「新規立地補助制度」の創設を提案しています。このほか、エネルギー対策では、再生可能エネルギー導入促進策と省エネルギー対策を要請。冷蔵庫やエアコン、照明の買い替えを促す「節電エコポイント」の創設や、7月末で終了した「住宅エコポイント」の再開をあらためて明記しました。
財源の考え方については、歳出予算の徹底的な見直しや、特別会計の積立金・剰余金の活用、税外収入の確保、政府保有株などの政府資産の売却で、捻出すべきと提案しています。その上で不足分を「復興債」の発行で賄う、という考え方です。「復興債」の償還(返済)期間は経済状況を踏まえて設定する一方、経済成長による税収増を取り込めるようにし、時限的な増税が必要な場合は「増税規模をできる限り縮減」します。その際の税目は所得税や法人税を基本に考えています。
- 被災自治体支援:復興一括交付金、復興基金の創設
- インフラ:三陸沿岸道路整備、鉄道・港湾・漁港の復旧
- 住宅再建:土地の買い上げ、防災集団移転促進事業の拡充
- 生活再建:相談体制強化、被災児童・生徒の就学支援
- 産業再建:農業と水産業の各復興基金の創設
- 原発事故対応:除染の実施、福島復興再生基金の創設
【総合経済対策】……約4兆円
<円高対策>
- 中小企業資金繰り支援の大幅拡充
- 雇用各種基金の積み増し・延長
- 新規立地補助制度など産業空洞化対策
<エネルギー対策>
- 再生可能エネルギーの導入促進
- 節電エコポイントの創設
- 住宅エコポイントの再開
【年金財源の確保】……約2.5兆円