
10月10日、公明党は自民党との政策協議で、自民党に求めていた「政治とカネ」を巡る問題の対応について、明確かつ具体的な回答が得られなかったため、自公連立政権はいったん白紙として、これまでの関係に区切りを付けることを決めました。マスコミ各社は公明党、連立政権から離脱との見出しを打ちましたが、私の受け止めは「区切り」という言葉にこそ、今回の判断の核心が表れているということです。関係を断ち切るための絶縁宣言ではなく、原則を明確にし、次の章へ進むために一度幕を引く――その静かな決意を感じます。
私は、公明党の県議会議員を長年務めたOBの一人として、斉藤鉄夫代表以下、執行部の判断を全面的に支持いたします。公明党は、平和主義と清潔政治を党是に歩んできました。政権にとどまるために原理原則を曖昧にすることは、党の存在意義を損なうことにつながります。今回の「区切り」は、情緒ではなく理性に基づく選択であり、政治への信頼を立て直すための出発点だと受け止めています。
一方で、26年に及ぶ自公の歩みが「数合わせ」ではなかったことも忘れてはなりません。地域の課題に共に向き合い、現場で汗を流してきた自民党の多くの議員の皆さまに、私は今も変わらぬ敬意を抱いています。長い年月で育まれた信頼や友情は、政治の枠組みがいったん白紙になっても消えるものではありません。これからも人物本位・政策本位で、必要な協力には是々非々で向き合っていくべきだと考えます。
「離脱」と「区切り」。二つの言葉の温度差は、そのままこれからの姿勢の違いを映します。対立を煽るためではなく、信頼を回復するために、私たちが優先すべきは何か。説明責任を尽くし、政治資金の透明化を進めること。暮らしを守る政策には、立場の違いを超えて現実的に関与し続けること。公明党は中道改革勢力の軸として、合意形成の要を担う覚悟を新たにしています。
10月10日は、私自身にとっても節目の日になりました。大切なものを守るために姿勢を正し、立党の原点――「大衆とともに」――へ立ち返る。政治は対立のためではなく、国民・社会のためにあります。感情に流されず、しかし意志は強く。橋を焼き切らずに道筋を示す「区切り」という選択が、やがて日本の政治をもう一段成熟させる契機になることを信じています。今日は終わりではありません。よりよい明日へ章を改めるための、静かな再スタートだと記しておきます。

党首会談で斉藤代表自民・高市総裁に伝える
自民党の高市早苗総裁と公明党の斉藤鉄夫代表は10日午後、国会内で2回目の政策協議を行いました。その後、国会内で開かれた記者会見で斉藤代表は、公明党が自民党に求めていた「政治とカネ」を巡る問題への対応について「私たちの要望に対して明確かつ具体的な協力が得られなかった」と説明。その上で「自公連立政権は、いったん白紙とし、これまでの関係に区切りを付けることとしたい」と表明しました。
一、今回、政策協議に臨むに当たり、三つの懸念事項を申し上げた。そのうち二つは高市総裁から丁寧な説明もあり、認識を共有できた。しかしながら私たちが最も重視した「政治とカネ」に関する基本姿勢について意見の相違があった。
一、自民党派閥の政治資金問題により、国民の政治全体への信頼が大きく損なわれている。国民の根強い不信が解消されず、信頼回復には、ほど遠い状況だ。わが党としても参院選後、全国を回り、多くの党員、支持者から政治改革への取り組みが強く求められた。ゆえに、自民党と改めて連立を組むなら、これまでには、なし得なかった具体的な行動がなければならないとの決意の下で政策協議に臨んだ。
一、政策協議では、新総裁に対しても政治改革の取り組みを期待し、公明党が国民民主党と共に主張している企業・団体献金の受け手を党本部と都道府県組織に絞るという規制強化の実現を求めた。しかしながら、自民党の回答は、基本的には「これから検討する」という誠に不十分なもので極めて残念だ。
一、自民党派閥の政治資金問題の全容解明やけじめが望まれる。「すでに決着済み」とする姿勢は国民の感情とかけ離れており、これでは政治への信頼回復はおぼつかないと考える。「政治とカネ」に対する取り組みは、公明党の“一丁目一番地”だ。「クリーンな政治」を党是とするわが党として、何としても断行するべきものと考える。
一、総裁からは一定の改革姿勢が見られ、決意も聞いた。しかし時間が迫る中、われわれの要望に対して明確かつ具体的な協力が得られず、改革が実現不可能であれば、とても首相指名で「高市早苗」と書くことはできないと申し上げた。
一、これまでの継続性の観点から、何でも反対の敵方になるわけではない。わが党にも責任がある。これまで準備してきた予算案や法案など政策ごとに賛成すべきものは賛成していく。
一、国政選挙における党同士の協力は、いったん白紙にする。それでも、人物本位、政策本位で応援できる地域も少なくないと思う。わが党が擁立する衆院小選挙区候補に対する自民党からの推薦は求めない。わが党から自民党候補への推薦も行わない。
一、最後に高市総裁と鈴木俊一幹事長には、これまでの自公関係に心からの感謝を申し上げ、握手し、そして「お互いに頑張りましょう」と申し上げて別れた。