11月1日、東日本大震災に関する東北3県調査の2日目。井手よしひろ県議は、岩手県宮古市の田老地区、釜石市の天神地区などを訪れ、仮設住宅の寒さ対策や仮設商店街などについて現状を視察しました。
被災地では、仮設住宅の寒さ対策の遅れが懸念されています。政府は先月、暖房器具の供給を国庫負担で行うことを決めましたが、大量の器具をどう調達するかなど、具体的な対応は全く手が付けられていません。窓の二重サッシ化など建物の断熱工事も遅れ気味で、未工事のまま正月を迎える住宅も出る懸念があります。本格的な冬の到来を前に、被災者には不安の色が滲んでいます。
宮城県では断熱工事工期、年明けにずれ込みも
井手県議が訪れた1日は、昼間は比較的暖かい一日でしたが、朝夕は冷え込みが本格化してきました。
岩手県では、窓の防寒対策=二重サッシ化はほとんど完了しているようですが、建物自体の断熱性能がもともと低い上に、暖房器具も津波で流されて十分にそろっておらず、「暖冬であることを願っています」との言葉が、入居者の本音のようです。
グリーンピア三陸みやこに建設された仮設住宅で話を伺ってみると、「もともと住んでいた田老地区は、雪が降り積もることはなかったが、わずか5キロ程度しか離れていないといっても仮説の場所は積雪がある場所。二重のサッシが入っているが、すでに結露がひどく、これからが心配です」と、語ってくれました。
一方、宮城県によると、県内の仮設住宅は全部で約2万2000戸。このうち、プレハブリース系の住宅約1万4000戸はほとんど防寒対策が施されておらず、ハウスメーカー系の約80000戸も窓が二重でないなど不備が目立つといわれます。このため県は先月、全戸対象に防寒工事を行うことを決め、10月24日から外壁への断熱材の貼り付けや窓の二重サッシ化、風除室の設置などの工事をスタートさせました。
しかし、業者不足に加え、備品調達のめども不透明なことなどから、12月20日までとしている工期は年明けまでずれ込む可能性が大。県当局は、一部住宅は未工事のまま正月を迎えるかもしれない、と説明しています。
暖房器具の国庫負担も調達などに課題
仮設住宅の寒さ対策として、断熱工事とともに欠かせないのが暖房器具の配備です。
10月7日、厚生労働省は、仮設住宅に設置される暖房器具の費用を災害救助法による国庫負担の対象とすることを被災各県に通知。これを受け、岩手、宮城、福島の東北3県も対応を急いでいます。
国庫負担の対象となる暖房器具は、石油ストーブ(ファンヒーターを含む)、ホットカーペット、電気こたつの3種類です。地元業者への発注により地域経済を活性化する狙いから、3県は設置事務を市町村に委託しています。しかし、相変わらずの“自治体丸投げ”という国の手法にとまどっている自治体は少なくありません。
「大量の暖房器具をどう調達すればいいのか。“カネだけ出します”という手法は、いいかげん、勘弁してほしい」(岩手県陸前高田市)、「国の支援方針が一向に示されない中、既に暖房器具を買った入居者もいる。この人たちにどう説明すればいいのか」(宮城県石巻市)といった声が自治体から上がっています。
ちなみに、個人で購入した暖房器具については、県も国も「事後に費用を助成するなどの対応は予定していない」といいます。
被災自治体にとって、もう一つ、頭痛の種となっているのが、県が借り上げた民間賃貸住宅や雇用促進住宅などの、いわゆる“みなし仮設”に住む被災者への対応です。岩手県生活再建課の鈴木浩之総括課長は「厚労省通知によると、災害救助法の対象となるのは、あくまで厳格な意味での仮設住宅のみ。“みなし仮設”や福祉施設向けの暖房器具については、民間団体や企業などからの支援に期待するしかない」と苦渋の表情で説明しています。
リフォームから器具提供まで活躍する民間支援団体
被災地の寒さ対策に行政が手間取る中、目覚ましい活躍をしているのが民間支援団体と企業です。仮設住宅に断熱材を施すリフォーム支援や、インターネットを通じての中古暖房器具の提供の呼び掛けなど、その活動は多岐にわたっています。「国の対策を待っていては冬が先に来てしまう」と、行政の“頭越し”に福祉施設などへの暖房器具支援をスタートさせた「難民を助ける会」(長有紀枝理事長)のような団体もあります。
岩手県によると、仮設住宅がある県内13市町村のうち10市町村の仮設住宅では、希望する全世帯に企業と民間支援団体からの暖房器具が提供済みだといわれます。
(このブログ中は公明新聞2011・11・1付け記事を参考に記載しました)
参考:認定NPO法人「難民を救う会」の東日本大震災の活動