井手よしひろ県議は、3月9日から行われる県議会保健福祉委員会で、胃がん検診にピロリ菌検査を導入することを提案します。
今、高崎市(群馬県)の胃がん対策が注目を浴びています。高崎市では、平成23年度から胃がんリスク(ABC)検診と20歳のピロリ検診を、市の事業として始めました。
胃がんリスク(ABC)検診とは
胃がんの原因のほとんどがピロリ菌の感染であることがわかってきました。また、ピロリ菌感染の期間が長いと胃がんになりやすい萎縮性胃炎になります。そこでピロリ菌感染の有無を調べる検査(血液中のピロリ抗体を測定)と萎縮性胃炎の有無を調べる検査(血液中のペプシノゲンを測定)を組み合わせて胃がんになりやすいか否かのリスク(危険度)分類をする検診が胃がんリスク(ABC)検診です。
バリウム検査や胃内視鏡検査のような、直接胃がんを見つける検診ではありませんが、血液検査で済むために、検診の負担が軽く、費用も割安なのが大きな特徴です。
高崎市では、40歳から70歳まで5歳きざみの節目検診として実施されています。
- Aタイプ:ピロリ菌検査、ペプシノゲン検査ともに陰性で健康的な胃粘膜です。胃の病気になる危険性は低いと考えられますが、皆無ではありません。5年に一度程度の胃内視鏡検査を勧めます。
- Bタイプ:ピロリ菌検査陽性ですがペプシノゲン検査陰性。消化性潰瘍などの胃疾患の危険性があります。胃がんが発生する可能性もあります。基本的には2~3年ごとの胃内視鏡検査を勧めます。また萎縮性胃炎にならないために、できる限りピロリ菌の除菌治療を受けることを勧めます。
- Cタイプ:ペプシノゲン検査陽性。萎縮性胃炎になっている胃粘膜で、胃がんなどの胃疾患になりやすい危険なタイプです。主治医をもち、定期的な内視鏡検査による経過観察が必要です。胃がんは、早期発見すれば内視鏡での治療が可能です。ピロリ菌がいる方は除菌治療を受けることを勧めます。
このABC検診を推進している「NPO法人日本胃がん予知・診断・治療 研究機構」によると、胃がんの年間発生率はA群はほぼゼロ、B群は1000人に1人、C群は400人に1人、D群は80人に1人。A群は将来的にも胃がんにはまずならないと考えられ、無症状であれば内視鏡検査を受ける必要はない。Bは3年に1度、Cは2年に1度、Dは毎年 の内視鏡検査を推奨しています。群馬県の高崎市医師会によると、2006年に成人約1万7千人に実施したABC検診で、49%がA群、27%がB群、20%がC群、4%がD群と判定され、BCD群に対する内視鏡検査で44人に胃がんが見つかりました。
発見率は受診者の0.26%で、それ以前に行っていたエックス線による発見率0.17%を上回っています。
一方、胃がん1例を見つけるのにかかった費用は、エックス線は437万円だったのに比べ、183万円と半額以下でした。
住民検診でも高崎市医師会でABC検診を主導した乾純和・乾内科クリニック院長は「ピロリ菌に感染したことのない人は無駄な検査から除外できる。エックス線検査のように、リスクのある人もない人も無差別に毎年検査をするのは妥当だろうか。20代は9割がピロリ菌に未感染だと分かったが、1割の感染者に除菌すれば、日本から胃がんがほとんどなくなる可能性もある」と期待しています(共同通信の記事より引用しました)。
20歳のピロリ検診
高崎市に居住し、新たに20歳になる新成人が対象です。自己負担なしでピロリ菌の感染が確かめられます。
ピロリ菌感染のある方はできる限り若い時期に除菌治療をうけてピロリ菌を退治すると胃がんになる可能性はかなり低くなります。採血をして新成人全員のピロリ菌感染の有無を自己負担無しで検査します。
日本中の中核都市以上でこの検診を市の事業として行っているのは高崎市だけです。高崎市医師会では、ピロリ菌感染がある方は必ず除菌治療を受けてるよう勧めています。「20歳のうちに除菌治療しておけば胃がんになる可能性はかなり低くなります」と、指摘しています。
公明の取り組み/がん対策基本法、無料受診クーポンを実現
公明党は「がん対策基本法」(06年成立)など、がん対策を一貫して推進してきた。この基本法を踏まえて2007年に策定されたのが「がん対策推進基本計画」です。
現行計画は2011年度末までのもので、現在、12年度以降の次期計画(5年間)に向けた議論が行われている。
公明党は「がんの予防が重要」と考え、女性特有のがんである乳がん・子宮頸がんの検診無料クーポンを2009年に実現させました。
一方、現状では達成が難しい検診の受診率50%以上という目標についても、引き続き積極的な取り組みを行うよう訴えています。今年、1月27日の衆院代表質問で井上義久幹事長は、緩和ケアの浸透とがん登録の法制化に加え、クーポン事業の恒久化や検診種目の拡大、「子宮頸がん予防法」の制定、小児がん対策の強化、がん教育の実施などを野田首相に迫りました。
クーポンの有効性を踏まえ、公明党は、がんによる死因の中で、肺がんに次いで2番目に多い胃がんの原因の一つとされるピロリ菌の検査の無料クーポン実施を政府に強く求めています。