県立こころの医療センター(土井永史院長)は、昨年12月の県議会保健福祉員会で、井手よしひろ県議の質問に答え、脳の活動を測定する近赤外光脳機能計測装置(光トポグラフィ)を県内で初めて導入すると発表しました。うつ症状に対する診断はこれまで医師の問診だけだでしたが、装置による客観的な脳機能の数値評価が加わり、より正確で早期の診断が可能となり、患者負担の軽減、治療の向上が図られるとされています。
光トポグラフィは、頭部に近赤外線を当て、反射してくる光から脳血流の変化を読み取り、脳の活動状態を数値化・画像化します。これにより(1)大うつ病性障害(2)双極性障害(そううつ)(3)統合失調症-の鑑別診断がしやすくなります。
うつ症状の診断はこれまで医師の問診だけで、それぞれの鑑別は難しく、例えば、そううつの患者にうつの薬を処方して、そう状態が一層高まり、自殺のリスクが生じた事例もありました。
光トポグラフィー検査には、赤外線よりもやや波長が短い近赤外光(きんせきがいこう)と呼ばれる光線が使われます。この光を頭部に当て、反射してくる光を計測し、頭皮から3cmほど内側にある大脳皮質の血液のヘモグロビン量の変化を読み取ります。これで脳の活動状態を数値化して、その波形をリアルタイムで画像化するのです。
近赤外光は、銀行ATMなどで手のひらや指の静脈パターンを読みとる生体認証にも使われている光線で、皮膚や骨は通り抜けるものの、血液中のヘモグロビンには吸収されるという特徴があります。
患者さんは近赤外光を照射する出力部分と取り込む部分がついた特殊な帽子をかぶり、いすに腰掛け、医師の質問に答えます。
質問の内容は、最初に「あ、い、う、え、お、をくり返し言う」(1分間)、次に「ある一文字で始まる言葉を言う」(例えば、“い”で始まる言葉。始まりの一文字を変えて3通り、各20秒の間に言う=合計1分間)、最後に再び「あ、い、う、え、お、をくり返し言う」(1分間)といった内容です。検査時間は、前後の準備も含めて10~15分程度です。
最初の1分間の質問は、大脳を使っていないときの脳波を見るものです。次の質問により、大脳を使い始めたとき、血液量がどのように、どれくらいまで増加してくるのかを波形でチェックすることができます。
この血流の変化の波形には一定のパターンがあります。波形は、健常者、大うつ病性障害(うつ病)、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症で次のような典型パターンを示すことがわかっています。
もちろん、患者にとっては、全く苦痛や危険性はありません。
現在、導入する光トポグラフィの具体的選定も終わり、リース契約により導入されます。導入される機種は以下の通りです。
落札金額:55,256,040円(6年リース総額:月額約768,000円)
落札者:NTTファイナンス(株)
現在、全国では14病院で、装置を用いた診断が先進医療として認められている。茨城県では初の導入となります。装置は1月に納入予定で、翌2月から検査を開始し、検査費用は1万3千円程度を予定しています。
光トポグラフィを導入-県立こころの医療センター
常陽新聞(2013年1月6日付け)
県立こころの医療センター(土井永史院長、笠間市旭町)は、「うつ」症状の正確な鑑別診断を行う手段として、医師の問診に加え、患者の脳活動を数値と画像で客観的なデータを収集する、光トポグラフィ(近赤外線脳機能計測装置)を導入。 来月にも検査を開始し、保険診療を併用できる先進医療の早期診療を目指す考えだ。
この装置は、頭部に近赤外線を当て、反射してくる光から脳血流の状況変化を読み取り、脳の活動状況を数値化する装置で、脳機能画像検査の一つ。
「うつ」状況の診断は、これまで医師の問診だけに頼ってきたが、この装置の導入で、①大うつ病性障害②双極性障害 (そううつ)③統合失調症―の正確な鑑別診断が、両方の相乗効果で相当期待できることになる。
具体的に、例えば、双極性障害 (そううつ)の患者に、大うつ病性障害の薬を処方してしまうと、患者はさらに、「そう状態」になり、自殺のリスクなどが生じることがあるという。
そこで、問診に加え、この装置による脳機能評価を行うことで、波形を画像のデータ収集により、正確な鑑別診断が可能になるわけだ。
本県では初の導入だが、現在、全国では既に18カ所の病院で行っており、2009年4月からは精神医療分野で初めて、国の先進医療として認められた。
県病院局によると、装置導入については、県内の精神医療機関などから強い要請があったといい、加えて、装置の使用経験をもつ医師を確保できたことで、体制が整備され、こころの医療センターへの導入に踏み切ったという。装置整備は、概ね5500万円。
今後のスケジュールは、装置搬入後、来月にも検査を開始する予定で、検査費用は約1万3000円程度になる模様。
そのためにも、先進医療の認可が必要。 同センターは、検査開始後、症例実績を重ね、早期承認、認可を目指すことにしている。
光トポグラフィの導入効果について、病院局は 「精神科医療機関と連携し、検査のための紹介患者の受け入れを行い、県内のうつ病の診断、治療の向上を期待したい」としている。
(記事本文には“光ポトグラフィ”と記載されていましたが、正しくは“光トポグラフィ”ですので、この引用記事は光トポグラフィに改めました)